軍事的挑発で緊張を高めつつ、対話で譲歩を引き出すことを狙う――。北朝鮮は、危険な瀬戸際戦術を自制すべきだ。
韓国と北朝鮮の軍事的緊張の高まりを受けて、南北高官協議が板門店で開催された。
韓国は金寛鎮大統領府国家安保室長らが、北朝鮮は金正恩第1書記の側近の黄炳瑞・朝鮮人民軍総政治局長らが出席した。異例の高いレベルの対話は3日連続で行われたが、難航している。
軍事衝突という最悪の事態を避けるため、双方は、積極的に歩み寄り、緊張緩和の具体的な措置を探ることが求められる。
緊張の発端は、4日に軍事境界線付近で、北朝鮮が設置したとみられる地雷が爆発し、韓国軍兵士2人が重傷を負ったことだ。
韓国側は、休戦協定違反だと北朝鮮を非難した。対抗措置として、北朝鮮体制を批判する拡声機の宣伝放送を11年ぶりに再開した。
北朝鮮は、放送中止を要求し、韓国内に砲撃した。さらなる軍事行動を予告したうえ、韓国側に協議を申し入れた。北朝鮮に応戦した韓国の朴槿恵政権に対する硬軟両様の揺さぶりである。
この背景には、北朝鮮の国際的な孤立が指摘される。核実験の強行などにより、最大の友好国、中国との関係が冷え込み、首脳級交流は途絶えている。
中国の抗日戦勝記念行事への朴大統領出席が発表された直後に北朝鮮が砲撃したのは、中韓接近を牽制する狙いだろうか。
前線部隊に「準戦時状態」を発令したのは、金正恩第1書記だ。国内体制が不安定な中、指導者の経験に乏しい金第1書記が、一触即発の状況に適切な対処ができるのか。不安は拭えない。
一方、朴氏は「挑発には断固として対応する」と公言する。政権支持率は低迷し、韓国メディアは北朝鮮に対する強硬な姿勢を主張している。朴氏も、容易に妥協できない国内事情を抱える。
だが、南北双方は、軍事衝突のリスクを直視し、冷静に対応することが肝要である。
北朝鮮指導部は、韓国の“脅威”を強調することで、軍や朝鮮労働党など国内の引き締めを図っているとされる。10月10日の党創建70周年に合わせて、国威発揚の目的で、中長距離弾道ミサイルを発射するとの観測もある。
日米韓3か国は、緊密に連携し、北朝鮮情勢の情報共有を強化する必要がある。新たな軍事的挑発を封じ込めるため、抑止に万全を期すことも大切だ。
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