韓国と北朝鮮が互いに軍事力を増強し、緊迫した中で続いていた高官会談はきのうの未明、やっと合意にこぎつけた。
北朝鮮の地雷爆発という挑発に端を発した軍事衝突の危機はいったん避けられた。南北は今回の合意をきっかけに、民族の和解に向けた対話を誠実に続けていくべきだ。
南北が発表した合意文によると、地雷爆発について北朝鮮が遺憾を表明。韓国側は軍事境界線付近での大音量の宣伝放送を中断することが盛り込まれた。
また、各分野の対話を南北間で続けていくことになった。
金正恩(キムジョンウン)・第1書記は今回、「準戦時状態」を宣言し、砲兵部隊を増強させるなど緊迫感をあおった揚げ句、韓国に高官会談を持ちかけた。いつも繰り返してきた瀬戸際戦術である。
ただ、合意文をみる限り、北朝鮮が具体的に得たのは、地雷爆発がなければ止まったままだった宣伝放送の中断だけだ。
北朝鮮の実際の目的はむしろ南北対話を軌道に乗せることにあったとみるべきだろう。
韓国との関係を前進させ、いずれは米国との関係改善を図る狙いとみられるが、地雷爆発によって2人の韓国軍下士官は足を切断する大けがを負った。
危機を背景にした、非人道的な戦術を続けていては、対話が再開されたとしても、韓国側に深い憎悪と不信感が募るだけだということを悟るべきだ。
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は、地雷爆発に対する北朝鮮の謝罪と再発防止の確約が必要だと主張していたが、責任の所在があいまいな遺憾表明にとどまった。
それでもこれまで朴政権を相手にしてこなかった北朝鮮の態度を考えると、一定の成果と言えるだろう。会談に臨んだ韓国側代表は「一貫した原則」が譲歩を引き出したと自賛した。
だが、ここまで南北関係が悪化した原因は、北朝鮮側だけにあるわけではない。
北朝鮮に多くの問題があるのは事実だが、朴政権も自身の掲げた原則が受け入れられない限り、対話に応じないという姿勢では突破口は開けない。対日政策にも共通する問題である。
きのうで5年任期を折り返した朴政権の成否は、前半に著しく欠いた、しなやかさを持てるかどうかにかかっている。
南北間で合意した対話の継続は、ともに実績の乏しい両政権にとって大きな意味を持つ。
軍事的な挑発のみならず、言葉の非難の応酬も自制し、ねばり強く対話を積み重ねるべきだ。冷戦の残滓(ざんし)を一日も早く取り除く責任は南北双方にある。
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