世界同時株安 市場不安の沈静化を急ぎたい

朝日新聞 2015年08月26日

世界同時株安 緩和頼み修正の試練だ

先週来の世界同時株安は、週明けになって日米欧の株式市場をさらに一周した。中国発のブラックマンデーとも言える暴落の連鎖である。

とはいえ、世界の株価は実体経済の実力以上にかさ上げされていた。日米欧が過去に例のない大規模な金融緩和で巨額のマネーを供給し、それが株式市場に流れこんでいたからだ。その調整が起きるのは避けられず、パニックに陥らぬよう冷静に対応することが肝要だ。

同時株安の原因は二つある。

ひとつは中国経済の減速がはっきりしてきたことだ。中国政府は7%成長目標の旗をおろしていないが、力強さは影をひそめつつある。経済実態をよく表すと言われる鉄道貨物輸送量は減少、電力消費も頭打ちで、輸出入は前年割れが続く。

ここ数年、世界経済の主役は中国だった。リーマン・ショックの直後に中国政府が打ち出した4兆元(当時で50兆~60兆円規模)投資はそのはじまりだ。だが皮肉なことにその巨額投資が生みだした巨大な供給力が、いま大きな需給ギャップをつくって中国経済を苦しめている。

原因の二つめは「中央銀行バブル」の終わりを市場が覚悟し始めたことだろう。7年前の経済危機を乗りきるために、先進国の中央銀行がこぞって乗り出した大規模な金融緩和である。

その膨大なマネーは世界株高を演出してきた。だがゼロ金利や量的緩和という異例の策は、金利による市場の調整機能を損ね、政府の借金依存を助長するといった副作用がある。永久に続けることはできない。

だから米国が年内にもゼロ金利を解除し、利上げに踏み切ろうとしているのは当然だろう。マネーの巻き戻しが株安につながるとしても、それはいつか通らねばならない試練である。

だとすれば、株高と円安を推進力と頼んできた「アベノミクス」の限界も明らかだろう。今後、副作用が深刻にならないうちに量的緩和の縮小など正常化の道を早く探ることが必要だ。

国内では株価急落のショックで、景気対策やいっそうの金融緩和を求める声が高まるかもしれない。だがそれは本質的な対策にならないばかりか、新たなバブルの原因を作るだけだ。

もちろん再び世界経済危機に陥ることは防がねばならない。主要7カ国やG20で金融危機を連鎖させない協調体制を築いておくことが求められる。

各国がバブルに頼ることなく経済の実力を地道につけていく。それしか世界経済を安定させる道はない。

読売新聞 2015年08月26日

世界同時株安 市場不安の沈静化を急ぎたい

中国経済への懸念を震源に、世界的な市場の動揺が続いている。

東京市場の平均株価は25日、733円安の1万7806円と大幅に下落した。これで6日続落となり、下げ幅は計2800円を超えた。外国為替市場で円高が加速したことも、株安に拍車をかけた。

中国市場に端を発した株価急落は、欧米やアジアの主要市場へと連鎖し、「世界同時株安」の様相を呈している。

警戒は怠れないが、投機的な思惑で乱高下している面もある。甘利経済再生相は「冷静な対処が必要だ」と述べた。確かに、日本や欧米の経済はおおむね堅調だ。過度な悲観は不要だろう。

肝心なのは、市場の不安を沈静化し、実体経済への波及を防ぐことである。日米欧と中国は混乱収拾へ政策協調を強めるべきだ。

株安の引き金は、中国が11日に打ち出した人民元の切り下げだった。輸出テコ入れを要するほど中国景気が悪化しているとの見方から、上海市場の株価が崩れた。

中国の経済成長率は7%を維持しているが、消費や輸出など経済指標の多くが景気減速を示している。実態はもっと深刻だとする観測は根強い。

経済成長の鈍化を容認する「新常態」政策の下、構造改革を進めて中国経済を軟着陸させられるのか。中国政府の経済運営への不信感が、不安を増幅している。

習近平政権は、中国が世界市場混乱の火種となっている現実を直視する必要がある。25日に追加金融緩和を決めたが、さらに景気安定に万全を期さねばならない。

米国が近く利上げに踏み切るかどうかも、大きな焦点である。市場の混乱が収まらないうちに利上げを強行すれば、新興国から一気に資金が流出し、通貨・金融危機を招く恐れが指摘されている。

いずれ米金融緩和の幕は引かねばならないが、出口を急いで世界経済を混乱させてはなるまい。米連邦準備制度理事会(FRB)は市場動向を注視し、慎重に利上げの時期を探ってほしい。

日本では株安を受けて、自民党などから補正予算による景気対策を求める声が出ている。だが、企業業績は過去最高の水準である。安易な財政出動は慎むべきだ。

何より大切なのは、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を着実に実行し、民需主導の本格成長を達成することだ。新ビジネスの育成を促す規制緩和など、民間活力を引き出す成長戦略をしっかり推進したい。

産経新聞 2015年08月26日

世界市場の混乱 事態収拾へG7は連携を

中国経済の悪化に対する不安心理が急速に高まり、世界の金融市場に動揺が広がっている。

株式相場の混乱は25日も収まらず、日経平均株価は乱高下を経て1万8000円を割り込んだ。安全資産とされる円の値動きも荒い。

市場の動きに過度に反応する必要はないが、混乱が長引けば世界経済を不安定にする。株高・円安で経済再生を目指す日本も警戒すべき局面だ。

菅義偉官房長官は「先進7カ国(G7)と連携し、必要なら対応策をとる」と述べた。世界経済の悪化を招かぬよう協調して政策運営に当たるのは当然である。

その際には市場の混乱が実体経済に与える影響を見極めてもらいたい。株価が急落したとはいえ、足元の企業業績が改善傾向にあるのを冷静に勘案すべきだ。

円相場も注視したい。これまでは円安が輸出企業の収益を膨らませたが、今後、円高傾向が強まるのか。円高には食料品などの輸入品価格を押し下げる面があることも忘れてはならない。

財政・金融面の対応は、これらを踏まえた上で判断すべきだ。

市場混乱でもう一つ見逃せないのが米国が模索する利上げ時期だ。利上げすれば、新興国などにあふれていた緩和マネーが米国に逆流する事態が予想される。

それをにらんで市場が神経質になっているところに中国経済の変調が重なり、投資家によるリスク回避の動きが一気に強まった。

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