中国経済への懸念を震源に、世界的な市場の動揺が続いている。
東京市場の平均株価は25日、733円安の1万7806円と大幅に下落した。これで6日続落となり、下げ幅は計2800円を超えた。外国為替市場で円高が加速したことも、株安に拍車をかけた。
中国市場に端を発した株価急落は、欧米やアジアの主要市場へと連鎖し、「世界同時株安」の様相を呈している。
警戒は怠れないが、投機的な思惑で乱高下している面もある。甘利経済再生相は「冷静な対処が必要だ」と述べた。確かに、日本や欧米の経済は概ね堅調だ。過度な悲観は不要だろう。
肝心なのは、市場の不安を沈静化し、実体経済への波及を防ぐことである。日米欧と中国は混乱収拾へ政策協調を強めるべきだ。
株安の引き金は、中国が11日に打ち出した人民元の切り下げだった。輸出テコ入れを要するほど中国景気が悪化しているとの見方から、上海市場の株価が崩れた。
中国の経済成長率は7%を維持しているが、消費や輸出など経済指標の多くが景気減速を示している。実態はもっと深刻だとする観測は根強い。
経済成長の鈍化を容認する「新常態」政策の下、構造改革を進めて中国経済を軟着陸させられるのか。中国政府の経済運営への不信感が、不安を増幅している。
習近平政権は、中国が世界市場混乱の火種となっている現実を直視する必要がある。25日に追加金融緩和を決めたが、さらに景気安定に万全を期さねばならない。
米国が近く利上げに踏み切るかどうかも、大きな焦点である。市場の混乱が収まらないうちに利上げを強行すれば、新興国から一気に資金が流出し、通貨・金融危機を招く恐れが指摘されている。
いずれ米金融緩和の幕は引かねばならないが、出口を急いで世界経済を混乱させてはなるまい。米連邦準備制度理事会(FRB)は市場動向を注視し、慎重に利上げの時期を探ってほしい。
日本では株安を受けて、自民党などから補正予算による景気対策を求める声が出ている。だが、企業業績は過去最高の水準である。安易な財政出動は慎むべきだ。
何より大切なのは、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を着実に実行し、民需主導の本格成長を達成することだ。新ビジネスの育成を促す規制緩和など、民間活力を引き出す成長戦略をしっかり推進したい。
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