中1男女殺害 見守り社会で犯罪を防げ

朝日新聞 2015年08月24日

中1男女殺害 防ぐ手立てなかったか

夏休みのさなかに悲しく凄惨(せいさん)な事件が起きた。

大阪府寝屋川市の中学1年の女子生徒(13)が殺された事件で、同市内の男(45)が死体遺棄容疑で逮捕された。一緒にいた男子生徒(12)も遺体で発見された。

女子生徒は吹奏楽部でトロンボーンの練習に励んでいた。男子生徒は「人をたすける人になりたい」と小学校の卒業アルバムに書いていた。

将来ある最愛の子を非道に奪われた家族の心痛は、察するに余りある。なぜ2人が狙われ、どんな手口で近づいたのか。同種の事件を繰り返さないためにも、警察は事件の解明に向け全力をあげてほしい。

考えたいのは事件に巻きこまれる前に、被害に遭うのを防ぐ手立てはなかったかだ。

防犯カメラには、事件前、2人が商店街を歩く姿が映っていた。深夜とはいえ、人通りも少しはあった。まだ幼さが残る男女だ。長時間、街をうろつく姿に、帰宅を促したり警察に連絡したりする大人がいなかったのか、悔やまれる。

昔は面倒見のよい大人が地域にいた。人間関係が希薄になり、他人への干渉を避ける風潮が強まっていないだろうか。

夏休みになると子どもは開放的になり、夜間の外出や、普段とは異なる行動パターンをとることも多くなる。学校の目も届きにくい。それだけ犯罪被害に遭う危険性が高まることを、大人がしっかり認識したい。

身を守るすべを、子どもにも教えておくことが大切だ。

昨年9月に小学校1年の女児が殺害された神戸市では、市教委が夏休み前、全小中学生に防犯チェックシートを配った。

車の中から道を聞かれたら「車と距離を取る」「危険を感じたら車の進行方向と反対へ逃げる」など、具体事例ごとに家庭で話し合える内容だ。

小学生向けの防犯対策はあっても、中学生になった途端、保護者も地域も油断しがちだ。

警察庁によると、中学生の犯罪被害者数は昨年までの10年間、小学生を上回っている。最近は携帯電話を通じて犯罪に巻き込まれることも増えている。

教育委員会や学校は、繰り返し注意を呼びかけてほしい。

今回の捜査では、犯行時間の絞り込みや容疑車両の特定に、防犯カメラの映像が有力なツールとなった。一方、犯罪抑止の面では役割を果たせなかったともいえる。社会がどうカメラを使いこなすか、今後のカメラの設置のあり方を考える上でも、一つのきっかけになろう。

読売新聞 2015年08月25日

中1男女殺害 子供の深夜遊びは危険過ぎる

大阪府寝屋川市の中学1年の男女が行方不明になった事件は、2人の遺体が相次いで見つかる最悪の結末となった。

2人とも、両手を縛られ、顔には粘着テープが何重にも巻かれていた。少女には30か所以上も切り傷があった。残忍な犯行に憤りを禁じ得ない。

府警は、少女の遺体を遺棄した容疑で、寝屋川市の契約社員の男(45)を逮捕した。

男は容疑を否認している。少女を車に乗せたことは認めたが、「同乗者が女の子を殴り、死体を遺棄した。同乗者の名前は言いたくない」と話しているという。

供述に不自然さは拭えない。府警は、殺人容疑でも男を追及する方針だ。理不尽な事件の全容解明を急いでもらいたい。

男は2002年にも、中学2年の男子生徒らを車に監禁する2件の事件を起こしている。生徒らを粘着テープや手錠で拘束し、連れ回していた。

今回の被害者2人は、12日夜に自宅を出た。翌13日午前5時頃、寝屋川市駅前の商店街で一緒にいるところが確認されて以降、行方が分からなくなった。

逮捕の決め手となったのは、防犯カメラの映像だ。

2人が商店街から姿を消したのとほぼ同じ時刻に、駅近くに設置されたカメラが男の軽ワゴン車を捉えていた。少女の遺体が見つかった高槻市内の駐車場周辺のカメラにも、似た車が映っていた。

防犯カメラが、容疑者の特定に有効であることが、改めて実証されたと言える。

通学路や繁華街で防犯カメラを増設する自治体が多い。捜査に活用できるだけでなく、犯罪の抑止効果も期待できよう。

学校の目が行き届かない夏休みに、子供の安全をいかに守るかも課題である。

被害者の2人は、簡易テントを使い、駅周辺で何度か野宿をしていた。遊びのつもりだったのだろうが、子供だけの深夜の外出には危険がつきまとう。

携帯電話やスマートフォンの普及で、子供同士で容易に連絡が取れるようになった。いわゆる「普通の子」でも、深夜に出かけるケースが珍しくないという。

保護者にとっては、我が子の行動に注意を払うことが一層、重要になっている。

繁華街などでの警察による補導の強化や、地域の見守り活動も欠かせない。非行防止だけでなく、犯罪に巻き込まれる危険性を教える指導が大切である。

産経新聞 2015年08月23日

中1男女殺害 見守り社会で犯罪を防げ

夏休みが暗転したというにはあまりに惨(むご)い。

大阪府寝屋川市の中学1年の女子生徒が殺害され、一緒にいた同級生の男子生徒も遺体で発見された。ともに顔や手を粘着テープで巻かれ、女子生徒には30カ所以上の切り傷もあった。

45歳の男が死体遺棄容疑で逮捕された。鬼畜の仕業としか言いようがない。

まだ動機など犯行の詳細は判明しないが、無防備な子供たちをどうしたら守れるのか。突きつけられた課題に答えを見つけ出さなければならない。

逮捕の決め手になったのは、防犯カメラの映像だった。

女子生徒の遺体が発見された高槻市の現場周辺の防犯カメラに不審な動きをするグレーの軽ワゴン車が写っていた。大阪府警は幹線道路の防犯カメラの映像からこの車のナンバーを割り出して所有者の男を突き止め、さらによく似た男が柏原市内のコンビニで粘着テープを購入するのを確認した。

手間のかかる映像解析によって、複数の現場という「点」を「線」で結んだ。今回の事件は、防犯カメラが犯罪捜査に有効であることを実証した。

防犯カメラはターミナル、商店街、道路、コンビニなどいたるところに設置されている。しかし、行動が丸見えになることに「プライバシーの侵害」などと根強い批判がある。

本来は安全、安心をもたらしてくれるものである。そうした機能に目を向け、「監視社会」ではなく、むしろ「見守り社会」と積極的に評価したい。

もとより映像の管理と利用にはルールが必要である。また、設置場所や、防犯カメラの存在を知らせて犯罪防止に結びつける工夫も求められる。

一方、被害者の2人も防犯カメラに写っていた。それも最後に目撃されたのは、京阪寝屋川市駅近くの商店街で、未明の午前5時10分ごろだった。

夏休みとはいえ、中学生の男女がそんな時間に帰宅せずにいることを、誰も気にとめなかったのだろうか。子供を守るのは周囲の目であり、注意の声かけである。無関心であってはならない。

逮捕された男は以前にも、男子中学生を車に連れ込み、粘着テープで縛って現金や携帯電話を奪う事件を起こしていた。再犯を防げなかったのが悔やまれる。

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