露首相の択捉訪問 領土交渉の環境を壊した

朝日新聞 2015年08月25日

択捉島訪問 ロシアの無益な挑発

ロシアのメドベージェフ首相が、北方領土の択捉島を訪問した。領土問題で日本に譲歩する考えはないとし、今後も訪問を続けると発言している。

隣国同士で係争中の領土がある場合、あくまで対話を通じて平和的な着地点を探る。それが責任ある国家のとるべき態度である。ことさらに実効支配を誇示するような挑発的な動きは、厳に慎むべきだ。

こうした行為は、両国の対話の努力に水を差すものであり、日本政府が即座に抗議したのは当然である。岸田外相の訪ロやプーチン大統領の年内訪日の見直しもやむをえまい。

メドベージェフ氏の北方領土訪問は3度目だ。大統領だった2010年、ソ連・ロシアの最高指導者として初めて国後島を訪れた。首相就任後の12年に択捉島訪問を計画したが、悪天候のため再び国後島を訪れた。

ウクライナ危機をめぐり、米欧は対ロ圧力を増しているのに比べ、日本は対話をつなぐ姿勢をとってきた。だが、そのパイプをロシア側が細めた形だ。

国際社会で孤立し、強まる制裁下で経済的にも苦しいプーチン政権は、国内批判をかわそうと国民のナショナリズムをあおっている側面もありそうだ。

だとしても、隣国への思慮を欠く振る舞いは、歴史的な日ロ間の対立の溝を広げるだけで、誰の利益にもならない。

ただ、ロシアの対外政策は、巧妙に硬軟緩急を絡ませるのが常だ。領土問題で日本を突き放す姿勢と並行して、ロシア国内での開発投資に秋波も送る。

プーチン氏の真意はどこにあるのか依然見えないし、それが彼らの外交戦術でもあろう。いまの国際情勢の中で、日本との間でどんな関係を描いているのか、慎重に探るほかない。

安倍首相はきのうの参院予算委員会で、択捉島訪問について「極めて遺憾」としたうえで、プーチン氏との対話を通じて交渉を続ける意向を示した。

戦後70年たっても、いまだに平和条約が結べないのが、日ロ間の現実である。膨張する中国との向き合い方や、エネルギー問題を含め、北東アジアの安定秩序づくりを探るうえで、日ロの関係を長期的に強化してゆくことは欠かせない。

対話の環境づくりのためにも安倍政権はロシアに対し、国際社会との協調を強く求めねばならない。領土問題の交渉に当面の成果を急ぐより、国際秩序へのロシアの復帰を促すことが、長い目で見れば日本の北方領土をめぐる立場を強めることにつながるはずだ。

読売新聞 2015年08月23日

露首相択捉訪問 領土交渉に背向ける軽挙妄動

日露関係の改善と領土問題の解決の機運を大幅に後退させる動きだ。断じて容認できない。

ロシアのメドベージェフ首相が北方領土の択捉島を訪問した。港湾施設や空港などの整備状況を視察した後、若者向けの政治集会で、択捉島と国後島を「優先発展地域」に指定する方針を表明した。

ソ連の占領開始から今月で70年となるのに合わせ、実効支配の固定化を印象づける狙いだろう。

訪問は日本の中止要請を無視したもので、重大な主権侵害である。岸田外相が駐日露大使に、「日本国民の感情を傷つける。極めて遺憾だ」と抗議したのは当然だ。

ロシアは最近、対日強硬姿勢が目に余る。6月末、排他的経済水域(EEZ)内で、日本漁船も従事するサケ・マス流し網漁の来年からの禁止を決めた。日本漁業への打撃が心配される。

7月以降、保健相と副首相が相次いで北方領土を訪れた。千島列島全体の社会基盤整備などに、10年間で約1200億円を投じる「発展計画」も発表した。

安倍政権を揺さぶり、ウクライナ問題で対露制裁を発動中の米欧との連携を乱す意図が見える。

日本は、中国の軍事的台頭を牽制けんせいし、ロシアとの「反日」共闘の構築を避けるため、日露間の対話を重視してきた。

安倍首相とプーチン大統領の個人的な関係をテコに領土交渉を進展させようと、プーチン氏の年内来日も探っている。首相の戦略の方向性は理解できる。

だが、最近のロシアの動きは、プーチン政権が領土問題を本気で前進させる意向がないことを如実に示しているのではないか。

仮に来日が実現しても、中身のある対話や目に見える成果は期待できまい。岸田氏は当面、訪露の調整を凍結するという。日本側の戦略は行き詰まりつつある。

プーチン氏が米国を特に敵視し、露国民の愛国心をあおって政権の求心力としている現実が背景にある。プーチン氏は核兵器使用の可能性にも言及し、米欧に対する威嚇発言を繰り返してきた。

軍備を急速に増強し、米欧への軍事的挑発も続けている。クリミア半島編入という力による現状変更は、到底許されない。

国際ルールを守り、建設的な役割を担うことこそがロシアの利益になる――。日本は米国と連携し、今秋の国連総会やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などを通じて、この点をプーチン氏に説き続ける必要がある。

産経新聞 2015年08月23日

露首相の択捉訪問 領土交渉の環境を壊した

まともな北方領土交渉など、望めない状況にある証左ではないか。

ロシアのメドベージェフ首相が、日本側の強い制止を無視し、択捉島への訪問を強行した。

北方領土は日本固有の領土であり、ロシアが不法占拠している状態が続いている。

メドベージェフ氏はプーチン大統領の最側近の一人だ。その要人が、大統領時代を含めて3回、北方領土を訪れた。さらに実効支配を強めようとする目的は明らかだろう。

外務省はロシアの在京大使に抗議したが、極めて不十分だ。岸田文雄外相は、近く予定していた訪露中止を直ちに表明すべきだ。駐露大使を帰国させるなど、明確な形で抗議の意思を示すことが重要である。

安倍晋三政権としてもプーチン氏の年内訪日計画を白紙に戻し、対露外交の立て直しを図ることが急務だ。

メドベージェフ氏の択捉訪問計画に対し、菅義偉官房長官は「絶対に受け入れられない」と牽制(けんせい)していたが、効果はなかった。

ロシア側は抗議を受け止めるどころか、「根拠のない要求を流布する日本は、第二次世界大戦の結果を公然と無視している」といった見解を示してきた。公然と歴史を歪曲(わいきょく)し、それを公式に表明しているのだ。

メドベージェフ氏は択捉島で、中国、韓国のほか日本に対しても、北方領土を含むクリール諸島開発への投資を呼びかけた。日本が応じられるわけはない。第三国を巻き込んで実効支配を強化しようとするロシアの意図がある。

プーチン氏は来月3日、北京で行われる「抗日戦争勝利記念式典」に参加する予定だ。中国の習近平国家主席と歴史認識で対日共闘を再確認する可能性が強い。

中露は日本海で合同軍事演習を実施している。北方領土や尖閣諸島(沖縄県石垣市)を念頭に、日本などを威嚇したいのだろう。

また、プーチン氏は最近、一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島をメドベージェフ氏らと訪れた。「力による現状変更」の結果を固定化し、批判には耳を貸さず、国際秩序への挑戦を続ける姿勢の表れだ。

首脳間の個人的な信頼関係で、事態を打開できる状況なのか。現実を見据えた対露外交、領土交渉が必要である。

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