日航機墜落30年 安全への誓いを広げたい

朝日新聞 2015年08月02日

小型機墜落 整備運航に油断ないか

東京都調布市で小型飛行機が住宅街に墜落した事故は、警視庁と国の運輸安全委員会の調べが続いている。搭乗者と住民の3人が亡くなるという、あってはならない事故だ。原因を究明し、惨事を二度と繰り返さないようにしなければならない。

既に、多くの疑問が浮かび上がっている。

事故機は調布飛行場を離陸後、通常より低空を飛びながら落ちていった。エンジンの出力が足りなかった可能性が高いようだ。この機は04年に北海道で事故を起こし、エンジンを修理して使い続けていた。検査には合格していたが、今回の事故との関連はあるのか。

事故機は都内の不動産関連会社が所有し、飛行場近くの整備会社にリースされ、操縦していたとみられるパイロットが経営する操縦士養成会社に時間貸しされていた。安全面での3者の連携は十分だったか。

このパイロットは、操縦士養成事業に必要な一部の許可を得ていなかった。事故を起こした飛行の目的について、操縦の技量を保つ「慣熟飛行」と届けていたが、調布飛行場では禁じられている「遊覧飛行」だった可能性がある。

全容解明には時間がかかりそうだが、改めて意識すべきなのは小型機特有の事情だろう。

小型機のパイロットは、飛行前の機体チェックなど、1人で何役をも担う。ふだんの整備も、航空会社が自社の整備士らで対応するのに対し、メーカーが定める整備を専門業者に委ねることが多いという。

運輸安全委員会によると、この40年余りの間に1300件余の航空事故が起きたが、小型機がその3割近くを占めている。調布飛行場では80年にも、小型機が近くの中学校に墜落し、搭乗者2人が死亡する事故があった。

「市街地の空港は閉鎖を」との声もあるだろう。ただ、空港ごとに事情は異なるが、他地域との交通に一定の役割を担い、物資の運送拠点として大切な空港も少なくない。

東京都が管理する調布飛行場には国の管制官はおらず、気象や滑走路の空き具合などの情報をパイロットに伝える業務は、元管制官を抱える一般財団法人に委託されている。

今回の事故では空港側の問題点は明らかになっていないが、現状の態勢に死角はないか、チェックが必要だ。

他の空港での小型機の整備と運航の実態はどうか。ルール違反が広がっていないか。総点検しなければならない。

読売新聞 2015年08月11日

日航機墜落30年 安全運航への誓いを新たに

日航ジャンボ機が群馬県・御巣鷹山に墜落し、乗員乗客520人が犠牲になった事故から、12日で30年を迎える。

単独機の事故としては今なお、世界の航空史上最悪の惨事だ。遺族の無念は、年月を経ても変わるまい。事故の記憶を風化させず、空の安全を改めて誓う日としたい。

ジャンボ機は墜落の7年前の1978年、着陸時に尻もち事故を起こしていた。この際の米ボーイング社による修理が不適切だったため、後部の圧力隔壁が飛行中に破断し、墜落の原因となった。

当時の航空事故調査委員会は、こう結論付け、日本航空に対しても、「点検方法に十分とはいえない点があった」と指摘した。

日航は事故後、整備システムの全面見直しなどを実施した。それにもかかわらず、2005年に整備ミスなどが相次ぎ、国土交通省から事業改善命令を受けた。

対応策として、06年に羽田空港内に設けた「安全啓発センター」は、社員教育の拠点として大きな役割を果たしている。圧力隔壁の残骸や遺品、遺書を目にすることで、社員は安全運航の大切さを再認識する。

グループ企業を含めた3万5000人の全社員が、今年3月までに研修を受けた。今では、事故後に入社した社員が9割以上を占める。事故の教訓を継承する安全教育の重要性は増している。

日航は10年の経営危機を機に、再生へ向けた経営目標の第一に「安全運航」を掲げた。その理念を忘れず、安全最優先の企業風土を築き上げてもらいたい。

日航機事故後、国内航空会社で乗客が死亡する事故はない。ただし、一歩間違えば大惨事となりかねない重大インシデントは後を絶たない。6月には那覇空港で、離陸直前の全日空機の前を自衛隊ヘリが横切るトラブルがあった。

国内空港の総着陸回数は30年前の2倍近くに増えた。格安航空会社(LCC)の参入などで、航空会社は激しい競争にさらされているが、安全運航への取り組みを怠ることは、決して許されない。

重大事故の背景には、29件の軽微な事故と300件の小さなミスがあるとする「ハインリッヒの法則」が知られる。航空業界で情報を共有し、小さなミスの段階で事故の芽を摘むことが大切だ。

国土交通省は昨年、報告義務のない小さなミスも航空会社に自発的に報告させ、周知すべき情報は公開する制度をスタートした。事故防止に役立てたい。

産経新聞 2015年08月13日

日航機墜落30年 安全への誓いを広げたい

世界の航空史上最大級の惨事となった日航ジャンボ機墜落事故から30年という歳月が過ぎた。

犠牲者520人の冥福を祈るとともに、空の安全に対する誓いを新たにしたい。

12日朝、遺族でつくる「8・12連絡会」の事務局長、美谷島邦子さん(68)らは、墜落現場の御巣鷹の尾根(群馬県上野村)に登った。

「御巣鷹の山は遺族の悲しみや怒り、悔しさをすべてのみ込み、励ましてくれる」。美谷島さんから聞いた言葉である。

この30年の間に連絡会のもとには、信楽高原鉄道事故やJR福知山線脱線事故、明石歩道橋事故などの遺族も集まり、慰霊登山に参加して活動をともにしている。「8月12日」を、多くの人が利用する交通機関の安全を誓い合う日にしていきたい。

日本の航空会社は、この日航機事故以来、乗客の死亡事故を起こしていない。事故を教訓に安全運航に対する取り組みを強めてきたものとの評価もできよう。

しかし、国内空港の総着陸回数は、航空需要の高まりに伴い、事故当時に比べて2倍近くに増えている。今年4月には、広島空港で韓国のアシアナ航空機が着陸に失敗し、乗客が負傷する事故を起こした。

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