消費税論議 菅財務相がやっと腰を上げた

朝日新聞 2010年02月17日

財務相発言 消費税封印の呪縛を解け

本気で一歩を踏み出してもらいたい。菅直人副総理兼財務相が消費税を含む税制の抜本改革の議論を3月から本格化させる意向を表明した。

菅氏はこれまで、消費増税について「逆立ちしても鼻血も出ないほど完全に無駄をなくしたときに、必要なら議論する」と繰り返してきた。

安易な負担増に頼らず、予算のムダに徹底して切り込むのは当然だ。しかし、それだけで社会保障や教育に必要な財源を賄えないことは、昨年の事業仕分けでもはっきりした。

しかも、日本の財政は先進国で最悪の水準にある。新年度予算案の国債発行額は44.3兆円と過去最大で、当初予算としては戦後初めて税収を上回った。2010年度末の国と地方を合わせた長期債務残高は国内総生産(GDP)の1.8倍にのぼる見通しだ。

米国の大手格付け会社は、日本国債の格付けを引き下げる可能性を示した。日本経済そのものの信認にかかわりかねない。

鳩山政権は3党連立合意で、次の総選挙までの消費税率据え置きを決めている。しかし、議論すら先送りし続けるのでは、無責任のそしりを免れない。鳩山由紀夫首相は4年間は税率を引き上げない方針を確認しつつ、「議論は結構だ」と明言した。

少子高齢化が急速に進む日本社会では、働き手の数が減って、年金・医療・介護の受給者が増える。膨らむ社会保障の安定財源を確保するには、景気の動向に左右されにくい消費税は最も有力な手段といえる。

消費税論議を封印したままでは、年金制度の抜本改革を含め、社会保障の将来像を描く作業も進まない。鳩山政権は内需主導による景気回復を目指しているが、社会保障への不安を国民が抱えたままでは、消費の拡大にも結びつかないだろう。

鳩山政権は6月をめどに、中長期的な財政規律のあり方を含む財政運営戦略と、11~13年度の中期財政フレームをまとめる方針だ。消費税引き上げの時期や幅、低所得層に不利になる逆進性への対策など、できるだけ具体的な道筋を盛り込んでほしい。

夏に参院選を控え、民主党をはじめ与党内には、増税論議に消極的な意見も少なくなかろう。

しかし、社会保障を充実させていくためなら、ある程度の負担増は引き受けざるを得ないと、多くの国民は気づいている。

「増税を掲げて選挙は戦えない」という呪縛から、与野党ともに脱する時である。民主党の財政政策を無責任と批判してきた自民党にも、参院選までに対案を打ち出してもらいたい。

必要と信じる政策と、そのための財源を堂々と国民に訴えることこそ政治の責任ではなかろうか。

毎日新聞 2010年02月16日

消費税議論 説明してから始めよう

菅直人財務相が、消費税引き上げを含む税制改正の本格的な議論を3月から始める意向を示した。菅氏が会長を務める政府税制調査会で、所得税、法人税に加え、消費税や環境税についても議論に入るという。

これまでの菅氏の主張は、まず歳出面での無駄削減を徹底させ、消費税の議論は2011年以降に始める、というものだった。次期総選挙前の引き上げはない、との方針は従来通りのようだが、議論の開始に関する限り、大幅な前倒しといえる。

日本の財政が危機的状況にあることは今さら繰り返すまでもない。国債の大量発行を受け、市場ではすでに返済不能の危険度を示す数値が上昇している。米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは、先月下旬に日本国債の格付け見通しを「引き下げ方向」に変更した。ギリシャの財政危機を契機に、市場の関心は今や国家の債務返済能力に集中しつつある。

そんな中で、消費税の引き上げも含めた税の抜本見直しを議論することは当然といえよう。菅氏によれば、鳩山由紀夫首相も「議論は大いにいいんじゃないの」と支持しているそうだ。

しかし、まず聞きたいのは鳩山首相の説明だ。民主党は昨夏の選挙戦で、特別会計を含む予算の組み替えと無駄遣いの根絶により、増税しなくとも恒久的な財源を捻出(ねんしゅつ)できる、としてきた。あの約束はどうなるのか。歳出見直し最優先の路線に変更はあるのか、ないのか。「議論は大いにいい」というが、議論だけすれば4年間は消費税を上げなくても本当に大丈夫なのか。

もし、方針が変わったのだとすれば、理由の明確な説明が要る。「景気悪化で税収が予想以上に落ち込んだ」では、納得できない。

次に聞きたいのは、誰をトップに、どのような体制で議論していくつもりか、という点だ。中長期的視点から、年金を含む社会保障制度全体とセットで検討すべきテーマであり、税調の域を超えている。無駄削減の努力も税の議論と並行し当然、続けなければならない。環境税の導入も議論するというのであれば、より総合的な体制、戦略が必要になってくる。

菅氏と仙谷由人国家戦略担当相、枝野幸男行政刷新担当相、長妻昭厚生労働相らが議論の中心になると見られるが、連携は大丈夫か。国家戦略室を活用するのであれば、菅氏と仙谷氏の責任分担はどうなるのか。不協和音が露呈するようだと、市場にはマイナス効果だ。何よりも首相の指導力が問われる。

意見調整できず、小沢一郎・民主党幹事長の「一声」にすがる、の繰り返しは見たくない。

読売新聞 2010年02月16日

消費税論議 菅財務相がやっと腰を上げた

菅財務相が、消費税を含む税制の抜本改正について、本格的な議論を始める方針を表明した。

来年度予算案の衆院通過後に、政府税制調査会に設けた有識者の委員会などで検討を進める。

「歳出削減を優先し、消費税は2011年度から本格議論する」という従来の方針を転換した。

年に1兆円ずつ増える社会保障負担を賄いつつ、危機的な財政を立て直すには、消費税率の引き上げは避けて通れない。現在の景気情勢ではただちに増税するのは難しいが、これを機に議論が進むなら意義ある決断といえよう。

国と地方が抱える長期債務の残高は、10年度末には862兆円に達する見通しだ。国内総生産(GDP)に対する債務残高の割合は181%と、先進国で最悪の水準になるという。

政府は6月をめどに財政再建に向けた中期目標を策定する方針である。だが、歳入面からそれを裏付ける税制の議論が手つかずのままでは、新たな目標は、絵に描いたモチになってしまう。

カナダで今月開かれた先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、ギリシャの財政危機が議題となり、各国が財政健全化に取り組む重要性が指摘された。

このままでは、日本経済への信認が揺らぎかねない――。G7に出席した菅財務相は、こんな危機感を抱いたのではないか。日本の深刻な財政状況がようやく骨身にしみたということだろう。

だが、その一方で財務相は、「今後4年間消費税を上げないことが、内閣の基本方針だ」と述べ、引き上げ時期や幅の明示にも、消極的な姿勢を見せている。

最初から結論を先送りするような姿勢では、議論を前倒しする意味はない。中期財政目標の策定にあわせ、できるだけ具体的な道筋を国民に示せるように、踏み込んだ検討が必要だ。

国民の理解を得るため、税収の全額を社会保障給付にあてる目的税化など、給付と負担の関係を明確にすることも欠かせない。

食料品など生活必需品の税率を低くする軽減税率や、低所得者層が支払った消費税額相当分を、国が給付金として還付する「給付つき消費税額控除」制度の導入なども検討課題になろう。

徴税と社会保障給付を適正に進めるには、すべての国民の所得を正確に把握しなければならず、それには納税者番号制度の採用が不可欠である。こちらも検討を急いでほしい。

産経新聞 2010年02月17日

消費税発言 参院選前に工程表を示せ

消費税をめぐり鳩山由紀夫政権内で食い違いが出ている。菅直人財務相が3月にも議論に入るとした発言に、すかさず首相が任期の4年間は引き上げないと否定した。これでは何が政権の方針か国民には分かるまい。

財務相の発言は「(消費税の議論は)歳出の無駄を徹底的に削ってから」としていた従来の考えを軌道修正したものといえる。その理由として財務相は税収の大幅な落ち込みを挙げており、消費税の議論抜きには財政運営が困難と判断したのだろう。

すでに国の予算は今年度で新規の国債発行額が税収を上回る異常構造となり、それが長期化する見通しだ。財務省の試算では平成25年度も税収は41兆円弱にとどまり、今年度を上回る国債に頼らざるを得ない。政権公約を完全実施すると、借金はもっと膨らむ。

その意味で財務相発言は当然すぎるほど当然なのだが、首相は消費税の4年間封印という政権公約を繰り返す。与党内にも今夏の参院選に悪影響を与えるとして財務相発言に反発が広がっている。

こうした中で消費税の議論が具体的スケジュールに乗るかどうかは極めて疑わしい。財務相発言自体もよく聞くと、税率を引き上げる場合は次期衆院選で民意を問うと言っているのであり、参院選には触れていない。実質的には首相発言と大差はない。

鳩山政権は学者・エコノミストで構成するチームが参院選前の6月に策定する「中期財政フレーム」と「財政運営戦略」で、新しい財政健全化目標などを示すとしている。それには消費税引き上げ工程の明示が不可欠だが、これでは目標にも期待はもてない。

鳩山政権はこれまで、勝手にばらばらな意見を発信しては国民を混乱させたうえで、巧妙な言い訳を重ねて非現実的な政権公約とその修正を正当化してきた。国債の発行額、揮発油税の暫定税率問題しかりである。

今回の消費税や子ども手当の完全実施をめぐる食い違いをみても、同じ手法を取ろうとしているのではないか。だが、すでに国民の多くはそれがごまかしだと気付いている。

民主党は前回の参院選勝利を民意の結果と喧伝(けんでん)した経緯がある。本気で消費税に取り組むつもりなら、その引き上げ工程と財政健全化目標を示し、夏の参院選で民意を問うべきなのである。

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