辺野古作業中断 事態打開へ知事も頭冷やそう

読売新聞 2015年08月13日

辺野古集中協議 政府は沖縄への説得を尽くせ

移設作業を中断する1か月間を有効活用し、接点を真剣に探りたい。

菅官房長官が沖縄県を訪れ、翁長雄志知事と会談した。米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る政府と県の集中協議の初会合だ。

菅氏は、「普天間飛行場の危険除去と、代替案としての県内移設が原点だ」と語り、辺野古移設に理解を求めた。

翁長氏は「普天間は強制収用されて造られたのが原点だ」と反論した。「米軍の抑止力を沖縄だけに頼るのはおかしい」とも述べ、移設反対の主張を繰り返した。

政府と県は9月9日までに、他の関係閣僚や副知事が出席する会談を含めて計5回程度の協議を予定している。建設的な対話を通じて、信頼関係を構築すべきだ。

政府は、移設の意義を丁寧に説明し、県の説得に全力を挙げねばならない。その環境作りとして、沖縄振興策や基地負担の軽減策を着実に実施することが大切だ。

政府は2016年度予算で、引き続き3000億円台の沖縄振興予算を確保する方針である。一括交付金や、那覇空港第2滑走路建設などが柱となる。

「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の運営会社が検討する県北部でのテーマパーク建設も後押しすることにしている。

負担軽減策では、牧港補給地区など、日米が合意した県南部の米軍施設返還の前倒しを求めて、米側への働きかけを強める。

こうした政府の努力の積み重ねが、県内に根強い辺野古移設への反発を和らげよう。

翁長氏は会談前夜の菅氏との会食で、「沖縄と本土には気持ちの乖離かいりがある。沖縄の『魂の飢餓感』を理解できなければ、個別の問題解決は難しい」と訴えた。

沖縄の米軍基地負担が重いことは事実だが、沖縄は特別な存在なので政府が一方的に譲歩すべきだ、というかたくなな姿勢だけでは問題は解決するまい。

県内でも、政府との対立を深める翁長氏の政治手法を危ぶむ意見が出始めている。

前知事の埋め立て承認を「法的瑕疵かしがある」と断じた翁長氏の私的諮問機関の報告書に対し、県庁内には「埋め立て承認を取り消した場合、瑕疵を客観的に証明できるのか」といった指摘がある。

諮問機関についても、「県職員が承認手続きに手心を加えたかのような前提に立っているのは心外だ」との不満がくすぶる。

翁長氏は、こうした声にも耳を傾けるべきではないか。

産経新聞 2015年08月09日

沖縄との集中協議 現実見据え打開策を探れ

米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、政府は1カ月間、沖縄県の考え方を聞くため海底ボーリング調査などの移設工事を中断し、県との集中協議を行う。

協議は政府から持ちかけたという。翁長雄志(おなが・たけし)知事は前知事が承認した埋め立て承認について、取り消す考えだったとされる。政府が埋め立て方針を堅持するのは当然だが、法的措置で対抗すれば泥沼状態に陥る。その前に協議の場を設けたこと自体は評価したい。

日本周辺の安全保障環境が厳しさを増している実態を踏まえ、国民の平和と安全をどう確保するのか。もとより協議は、国益にかなった観点から行われなくてはなるまい。

政府は県側と意思疎通を図り、理解を促さなくてはならない。安倍晋三首相が「できるだけ議論を深めてもらいたい」と述べたのはもっともだ。

翁長氏は移設反対を唱える一方、来年度予算編成で、今年度並みの振興予算を確保するよう、政府・与党に要請しており、政府側も容認することになりそうだ。

沖縄の振興と負担軽減は必要だが、移設を進めることと併せて行われるべきだ。翁長氏が移設反対の姿勢をとったままでは、協議で実りある結論は望めまい。

読売新聞 2015年08月05日

辺野古作業中断 事態打開へ知事も頭冷やそう

政府は沖縄県との協議で、辺野古移設の基本方針は堅持しつつ、積極的に接点を探るべきだ。

菅官房長官が、米軍普天間飛行場の辺野古移設の作業を今月10日から1か月間中断する、と発表した。

菅氏はこの間、移設に反対する翁長雄志知事と集中的に協議し、移設への理解を重ねて求める。他の米軍基地の負担軽減に前向きに取り組む姿勢も説明する。

県が求めていた、移設先の立ち入り禁止水域でのサンゴ礁などの潜水調査も実現する見通しだ。

県に対する一連の配慮を通じ、県との対立状況の打開を目指す菅氏の判断を支持したい。

政府の海底ボーリング調査などに対し、県は反発を強めていた。知事の私的諮問機関は7月、前知事の埋め立て承認に「法的な瑕疵かしがある」との報告書をまとめた。翁長氏は、8月中にも承認を取り消す可能性を示唆している。

菅氏には、安全保障関連法案への対応などで内閣支持率が低下する中、県との関係の決定的悪化を避けるとともに、冷却期間を設ける狙いもあるのだろう。

翁長氏は、政府方針を歓迎した。移設作業の中断中は、埋め立て承認取り消しを見送る考えを示し、「話し合いで解決の糸口を探る努力は惜しまない」と語った。

ただ、協議では「辺野古移設は不可能と改めて申し上げたい」とも強調した。協議が不調に終わった場合は、承認取り消しに踏み切る構えを崩していない。

政府と県は協議でまず、市街地に位置する普天間飛行場の危険性の早期除去が最優先課題であることを確認せねばならない。

辺野古移設は、その目的を実現するための最も現実的な解決策である。辺野古以外に有力な移設先は存在しない。翁長氏が反対に固執すれば、普天間飛行場の危険な現状が長期化する。他の基地負担軽減策の遅滞も招くだろう。

日米両政府は、約1000ヘクタールに及ぶ県南部の米軍施設返還で合意している。辺野古移設が進展し、米軍との信頼関係が強まれば、他の施設返還の前倒しを図ることも不可能ではあるまい。

翁長氏は、菅氏との集中協議を機に歩み寄り、より現実的な対応を冷静に検討してはどうか。

埋め立ては、前知事が正当な行政手続きで承認した。翁長氏が取り消しても、政府には行政不服審査などの法的な対抗手段がある。移設作業の中止は簡単でない。

不毛な対立を回避する対話の機会を逸してはなるまい。

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