移設作業を中断する1か月間を有効活用し、接点を真剣に探りたい。
菅官房長官が沖縄県を訪れ、翁長雄志知事と会談した。米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る政府と県の集中協議の初会合だ。
菅氏は、「普天間飛行場の危険除去と、代替案としての県内移設が原点だ」と語り、辺野古移設に理解を求めた。
翁長氏は「普天間は強制収用されて造られたのが原点だ」と反論した。「米軍の抑止力を沖縄だけに頼るのはおかしい」とも述べ、移設反対の主張を繰り返した。
政府と県は9月9日までに、他の関係閣僚や副知事が出席する会談を含めて計5回程度の協議を予定している。建設的な対話を通じて、信頼関係を構築すべきだ。
政府は、移設の意義を丁寧に説明し、県の説得に全力を挙げねばならない。その環境作りとして、沖縄振興策や基地負担の軽減策を着実に実施することが大切だ。
政府は2016年度予算で、引き続き3000億円台の沖縄振興予算を確保する方針である。一括交付金や、那覇空港第2滑走路建設などが柱となる。
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の運営会社が検討する県北部でのテーマパーク建設も後押しすることにしている。
負担軽減策では、牧港補給地区など、日米が合意した県南部の米軍施設返還の前倒しを求めて、米側への働きかけを強める。
こうした政府の努力の積み重ねが、県内に根強い辺野古移設への反発を和らげよう。
翁長氏は会談前夜の菅氏との会食で、「沖縄と本土には気持ちの乖離がある。沖縄の『魂の飢餓感』を理解できなければ、個別の問題解決は難しい」と訴えた。
沖縄の米軍基地負担が重いことは事実だが、沖縄は特別な存在なので政府が一方的に譲歩すべきだ、という頑なな姿勢だけでは問題は解決するまい。
県内でも、政府との対立を深める翁長氏の政治手法を危ぶむ意見が出始めている。
前知事の埋め立て承認を「法的瑕疵がある」と断じた翁長氏の私的諮問機関の報告書に対し、県庁内には「埋め立て承認を取り消した場合、瑕疵を客観的に証明できるのか」といった指摘がある。
諮問機関についても、「県職員が承認手続きに手心を加えたかのような前提に立っているのは心外だ」との不満がくすぶる。
翁長氏は、こうした声にも耳を傾けるべきではないか。
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