インターネット上の仮想通貨ビットコインの取引サイト「マウントゴックス」で、多額のコインや現金が消失した問題が刑事事件に発展した。
サイトを運営するマウントゴックス社のマルク・カルプレス社長が、警視庁に逮捕された。社内システムを操作して自分名義の口座の残高を水増しした容疑だ。社長は否認している。
現在の相場で200億円超のコインと現金約28億円が失われ、マウント社は昨年2月、経営破綻した。被害者は世界で12万7000人に上る。警視庁は事件の全容解明を急いでもらいたい。
コインなどの消失について社長は、ハッカーによるサイバー攻撃で盗まれたと説明していた。
しかし、警視庁の解析では、サイバー攻撃によるコインの消失はごくわずかで、原因の大半がシステムの不正操作だったという。
顧客の預かり金約11億円が同社の関連会社などに送金されており、横領の疑いも出ている。
システムの操作権限を社長が独占していた。管理体制の不備が被害拡大を招いたと言えよう。
今回の事件は、仮想通貨の取引が、透明性や安全性の点で多くの問題を抱えていることを、改めて浮き彫りにした。
ビットコインは、安い手数料で世界中に多額の送金ができ、今も活発に取引されている。しかし、匿名性が高いことから、テロ資金の提供や犯罪がらみの資金洗浄に悪用される懸念は強い。
日本を含む34か国・地域で作る資金洗浄対策の作業部会は6月、本人確認や記録保存、疑わしい取引の届け出などを促す指針をまとめた。既に欧米を中心に多くの国が、仮想通貨を規制対象とし、監督体制の整備を進めている。
だが、日本には仮想通貨に対する規制はなく、主管官庁も決まっていない。ビットコインなどが資金決済に使われている実情を踏まえ、金融庁の有識者会議が今後、規制のあり方について本格的な議論を始める段階だ。
マウントゴックスのような取引サイトを免許・登録制とすることも視野に入れているという。
仮想通貨が犯罪者を利する恐れのある現状を、放置してはならない。金融庁や警察庁など関係省庁が連携し、取引の監視体制を強化する必要がある。
ビットコインは本物の通貨や預金と違い、公的な信用の裏付けや保護の枠組みはない。利用者は、こうしたリスクを十分に理解した上で使うことが重要だ。
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