国際オリンピック委員会(IOC)が、2022年冬季五輪の開催都市を北京に決めた。
08年の夏季五輪に続く史上初の夏冬開催だ。準備に万全を期してもらいたい。
北京は、中国政府の支援を受けた安定した財源や、国際大会の豊富な運営経験などをアピールし、アルマトイ(カザフスタン)との一騎打ちを制した。
冬季五輪開催に対する中国国民の支持率は、92%に上っている。再度の五輪開催を勝ち取ることで、政権への求心力を維持し、国威発揚につなげようという習近平国家主席の意図は明白だろう。
一方で、北京の開催計画には不安が多い。そもそも、北京は降雪量が少ない。市内では主にスケート競技が行われる。スキー競技などは隣接する河北省張家口で実施する予定だが、ここでも雪質が劣る人工雪に頼らざるを得ない。
貯水池の水で大量の人工雪を作ることについて、北京の代表団は、IOC総会で「環境には、ほとんど影響がない」と強調したが、水資源への悪影響が指摘される。
大気汚染への懸念も強い。
北京は08年の五輪当時、青空を見せるために、強引な交通規制や工場の稼働停止に踏み切った。
王安順・北京市長は今回、「クリーンエネルギー型都市へ邁進している」と、IOC委員に訴えた。あと7年で汚染がどこまで改善するのだろうか。
様々な問題点を抱えながらも、オスロなどの有力都市が次々と招致レースから撤退したため、北京に開催権が転がり込んだ形だ。
冬季五輪開催に尻込みする都市が増えている最大の要因は、重い財政負担だ。14年ソチ五輪に、ロシアが5兆円と言われる巨費を投じたことが、敬遠ムードに拍車をかけたのは間違いない。
冬季五輪では、スキーのジャンプ台やボブスレーといったそり競技のコース整備などに費用がかさむ。夏季五輪の競技場に比べ、五輪後の利用者は限られるため、負の遺産になりかねない。
夏季五輪についても、24年の開催を目指していた米国のボストンが撤退した。
IOCが危機感を持ち、開催都市の負担軽減のために、既存施設の活用などを促す五輪改革に乗り出したのは、必然の流れだ。
18年冬季五輪は韓国の平昌、22年は北京と、アジアでの開催が続くことになった。26年五輪の招致には、札幌が名乗りを上げている。正式に国内候補地となれば、戦略的な招致活動が求められよう。
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