中国弁護士弾圧 人権問題厳しく監視せよ

読売新聞 2015年07月15日

中国弁護士拘束 習政権の強権統治を憂慮する

中国の習近平政権の強権統治が、一段とエスカレートしていることを示す動きと言えよう。

中国各地で、人権派弁護士や活動家が警察当局に相次いで拘束、連行されている。7月上旬以降、その数は100人以上に達した。

大半は、冤罪えんざいを訴える陳情者や差別待遇を受ける農村からの出稼ぎ労働者ら社会的弱者を支援する弁護士だ。国営メディアは、その中心人物らが抗議行動を扇動したとし、「社会秩序を乱す重大犯罪グループ」と位置付けた。

習政権は、弁護士らの活動が格差の拡大などに不満を強める人々と結びつくことを警戒しているのだろう。だが、国民の人権擁護に努める弁護士が一方的に弾圧される事態は、看過できない。

2011年、中東の民主化要求運動「アラブの春」を受けて、「中国版ジャスミン革命」と言われる民主化の呼びかけがインターネットで広がった際にも、多数の人権派弁護士が拘束された。

今回の規模は当時を上回る。経済成長減速に伴って社会不安が増大することに対する習政権の危機感の強さを物語るものだ。

習政権は発足以来、民主主義や人権など普遍的価値観の社会への浸透を恐れ、人権派弁護士の抑圧、言論統制を強めてきた。圧力は胡錦濤前政権以上とされる。

今年4月には、著名な女性ジャーナリストの高瑜氏も国家機密を違法に海外に提供した罪で実刑判決を言い渡されている。

共産党の一党独裁下にある中国は、法治を掲げながらも、「司法の独立」はない。法治は党の統治を徹底するための手段である。

今月、習政権は、暴動の封じ込めなどを狙った国家安全法を施行した。外国の民間活動団体(NGO)の監視などを目的とする法律の制定も進めている。

国際社会で習政権が「責任ある大国」を標榜ひょうぼうするなら、拘束している弁護士らを釈放し、活動を認めるべきではないか。強権統治を続ければ、「異質の大国」の姿が一層鮮明になるだけだ。

岸田外相が「弁護士や人権活動家を含め、すべての中国人に対し、普遍的価値が保障されることを強く求めたい」と述べたのは、当然だ。米国も懸念を表明しており、9月の習国家主席の訪米時に米中間の懸案になる可能性がある。

日米は、人権などの価値観を共有する関係国と連携し、首脳会談や外相会談など様々なレベルを通じて、人権擁護の重要性を中国に粘り強く訴えることが重要だ。

産経新聞 2015年07月14日

中国弁護士弾圧 人権問題厳しく監視せよ

中国で、人権派弁護士や活動家らを狙った過去最大規模の摘発があり、100人以上が連行されるなどしている。

人権問題に取り組む北京の著名女性弁護士、王宇氏とそのスタッフが連行されたのをはじめ、中国各地で連行、拘束が行われた。合法的に政府に異議を唱え、弱者の権利擁護に尽力した人たちへの露骨な弾圧である。摘発に正当な理由はない。速やかに解放し、活動再開を認めるべきだ。

米国務省が声明で「深い懸念」を表明し、中国政府に対し、国民の権利を尊重するよう求めた。菅義偉官房長官も「事実であれば憂慮せざるを得ない」と述べた。より強い抗議があってもいい。国際社会は中国の人権問題に監視の目を緩めてはならない。

中国では、格差拡大などの社会矛盾への不満が増大している。陳情を退けられるなどした弱者らを支援しているのが、摘発の対象となった弁護士らだ。彼らが標的とされたのは、不満が抗議活動を呼び、組織的な反体制運動に発展するのを防ぐためだろう。

ネット上での発言を問題視された人権派弁護士、浦志強氏が5月、1年以上の拘束を経て起訴されたのも記憶に新しい。

習近平政権はしきりと「法に基づく統治」を唱える一方で、「法治国家建設のためには共産党の指導の堅持が必要」とも強調している。「法治」は党の指導下にあり、独裁強化の道具にすぎないのではないか。

中国で今月1日に施行された国家安全法は、治安当局の取り締まり対象を幅広く認めており、弾圧の根拠となる懸念が内外で表明された。近く成立予定の反テロ法や外国非政府組織管理法(NGO管理法)にも同様の危惧がある。

中国は世界第2の経済大国となり、豊かさは観光客の様子からも分かるようになった。だが、習政権となって弁護士や活動家、メディアなどへの強圧的な姿勢は、より強まっているようだ。

国際社会が経済関係を重視するあまり、中国当局による人権弾圧を軽視するようなことがあってはなるまい。折あるごとに、改善を迫るべきだ。9月には習主席の米公式訪問が予定され、日中両国も現政権で3度目の首脳会談を模索している。首脳レベルで直接、人権問題の改善を突きつけることも必要だろう。

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