学校はなぜ、生徒のSOSを受け止められなかったのか。
岩手県内で、中学2年の男子生徒(13)が電車に飛び込んで死亡した。警察は自殺とみている。
「ずっと暴力、ずっとずっとずっと悪口」「なぐられたり、けられたり、首しめられたり」。生徒が担任の教師とやりとりしていた「生活記録ノート」には、他の生徒からいじめを受けていたことを示唆する記述が残されていた。
「もう市(死)ぬ場所はきまってるんですけどね」などと、自殺をほのめかす言葉も書かれていた。文面からは、次第に追いつめられていく状況がうかがえる。
地元の教育委員会は、いじめを苦にした自殺の可能性があるとみて、第三者による調査委員会を設置する。事実関係を調査し、学校の対応に問題がなかったかどうか、徹底検証してもらいたい。
生徒たちが日常の様子を書きとめる生活記録ノートは、いじめやトラブルを教師が早期に発見するためのものだ。今回、特段の注意を払うべき記述があったにもかかわらず、最悪の事態を防げなかったのは、極めて残念である。
問題なのは、生徒が担任の教師に窮状を訴えていたことを、校長らが把握していなかった点だ。
いじめの対応では、兆候を見つけた教師が一人で抱え込まず、他の教師と情報を共有することが大切だ。役割分担しながら、被害者や加害者と面談を重ね、適切な解決策を探る必要がある。
そうした基本的対応が、学校全体で徹底されていなかったと言わざるを得ない。
一昨年9月にいじめ防止対策推進法が施行された。各学校に対し、対策の基本方針の策定や、複数の教職員やスクールカウンセラーらで構成する対策組織の設置のほか、いじめに関する定期的なアンケートを義務づけている。
この中学校も基本方針を作り、組織を常設していた。法律に基づき、必要な態勢を整えても、実際の問題解決のために機能しなければ、意味がない。定期アンケートも実施していたが、集計がまとまる前に、悲劇が起きた。
文部科学省によると、推進法施行後の半年間で、被害者が生命を脅かされたり、不登校になったりする悪質ないじめが、全国の小中高校などで180件を超えた。
児童・生徒の行動にきめ細かく目を配り、いじめの芽を素早くつみ取る。子供の命を守る重い責任を負っていることを、すべての教師は再認識してほしい。
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