長年、国民に広く定着している都道府県単位の選挙区を見直す、大きな制度変更である。
自民党は、人口の少ない県と隣接県を1選挙区に統合する「合区」の導入を柱とする参院選挙制度改革案を決めた。今国会に公職選挙法改正案を提出し、成立を図る。来夏の参院選からの適用を目指す。
改革案は、維新の党など野党4党が主張していたもので、鳥取と島根、徳島と高知を「合区」とする。選挙区定数の配分も変更し、全体では「10増10減」となる。定数242は維持する。
これにより、「1票の格差」は2013年参院選の最大4・77倍から2・97倍に縮まるという。
選挙区選と全国比例選を組み合わせた現行制度の骨格を維持したままでの格差是正には、限界がある。最高裁が認定した「違憲状態」の解消には、限定的に合区を導入することはやむを得まい。
13年に始まった参院各会派の制度改革論議は、迷走が続いた。最大会派の自民党が、一貫して抜本改革に消極的だったためだ。
野党は強く反発した。与党の公明党さえ民主党と20県を10選挙区に統合する合区案で合意した。
孤立した自民党が党内に不満を抱えながらも合区を容認したのは、こうした各党の圧力に抗し切れなかったからだろう。
いったん合区で格差を是正すると、今後の改革も合区の拡大になる可能性が大きい。西岡武夫・元参院議長が提唱したブロック比例案やブロック大選挙区案の議論に後戻りできなくなりかねない。
注意すべきは、合区には弊害が少なくないことだ。
人口の少ない方の県から参院に代表を出せなくなる恐れがある。自民党や民主党は、隣接する両県から交互に候補者を擁立したり、もう一方を比例選で処遇したりするなどの調整が欠かせない。
合区により、固有の歴史や文化を持つ各都道府県の行政単位が揺らげば、選挙区選出議員の地域代表としての側面が弱まろう。
都市部と地方の人口格差が広がる中、投票価値の平等に固執し過ぎると、地方の声が国政に反映しにくくなるという懸念がある。
選挙制度改革では、長期的な視点に立った議論も進めたい。
衆院と差別化を図るため、憲法改正を前提に、専門的知識・経験を持つ人材を選挙を経ずに、推薦・任命する制度の導入なども検討に値するのではないか。
参院に求められる役割・機能についても論議を深めるべきだ。
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