ウクライナ 「オレンジ革命」の遺産を守れ

毎日新聞 2010年02月15日

ウクライナ 東西の対立が心配だ

ロシアと欧米のはざまで揺れるウクライナが、ロシア側へ軸足を大きく移しそうだ。親欧米のユーシェンコ現大統領による「オレンジ革命」は力尽き、先の大統領選では親ロシアのヤヌコビッチ前首相の当選が確実になった。

現職のユーシェンコ氏は決選投票にも残れず、約5%の得票率での惨敗である。ウクライナはロシアによる輸出用天然ガスの価格引き上げなどで揺さぶられ、世界金融危機では国際通貨基金(IMF)の支援を仰ぐ事態に追い込まれた。悪化する暮らしの中、急速に「革命」の機運はしぼんでしまった。

決選投票を戦ったティモシェンコ首相は結果を不服としているが、全欧安保協力機構(ОSCE)の選挙監視団も「民主的な選挙だった」と評価している。04年の大統領選のように、選挙結果が大きく変わることはあるまい。

それに「オレンジ革命」を支持したティモシェンコ氏も近年はロシア寄りに政治姿勢を修正している。仮に同氏が権力中枢に踏みとどまっても対露関係の悪化は考えにくい。

むしろ懸念されるのは、二つの「東西」の緊張だ。ウクライナは東側が親露、西側が親欧米とほぼ二分される。ヤヌコビッチ氏がロシア語の公用語化などロシア寄りの政策を性急に推し進めれば、欧米支持勢力は強く反発するだろう。

04年の選挙では「オレンジ革命」を支持する西部と、反対する東部の間で「国家分断の危機」も取りざたされた。ヤヌコビッチ氏にはバランスのとれた政権運営を期待したい。

もう一つの緊張関係は、「ロシア・ウクライナ」と「米国・欧州」の構図だ。新体制下ではウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟方針が撤回される可能性が強い。加盟も撤回も自由とはいえ、地域大国ウクライナをめぐって米欧・ロシアのつばぜり合いが激しくならぬよう、米露の自重を求めておきたい。

冷戦終結から20年を経ても旧ソ連圏は政治的に危うい状況にある。08年にぼっ発したロシアとグルジアの交戦は、その一例だ。ウクライナが親欧米のグルジアに武器を不正輸出した疑いも浮上し、これがロシアとの対立に拍車をかけた経緯もある。

情勢安定の大きなカギは米露関係にある。気がかりなのは、今月発表されたロシアの新たな軍事ドクトリンがNATO拡大や米国のミサイル防衛(MD)を踏まえ、米欧に強い警戒感を示していることだ。だが世界が期待するのは、ロシアが米国などと軍事的に張り合うことではない。不安定な地域の平和と安定に向けた米露協力こそ新時代の課題であることを忘れてはなるまい。

読売新聞 2010年02月12日

ウクライナ 「オレンジ革命」の遺産を守れ

脱ロシア、親欧米を目指した「オレンジ革命」後の歳月は、失われた5年となるのだろうか。

ロシアと欧州連合(EU)に挟まれたウクライナで、親露派のヤヌコビッチ前首相が大統領に当選した。国民は5年前、一度は当選者とされた同氏の選挙不正を糾弾した。オレンジをシンボルカラーにしたデモや集会で再選挙を実現し、現ユシチェンコ政権を誕生させた。

その街頭行動で退けた人物を、国民は5年後、大統領の座に就けたのである。

「革命」の主役だったユシチェンコ氏は今回、第1回投票で退場し、革命時の盟友だったチモシェンコ首相は決選投票で敗れた。

ユシチェンコ政権はロシアの影響下から逃れようと、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を急いだ。だが、ウクライナ経済の生命線を握るロシアの対抗措置に苦しめられた。天然ガスの供給停止や価格引き上げである。

さらに、一昨年来の世界同時不況が追い打ちをかけた。欧米の金融機関が資金を一斉に引き揚げ、経済は破綻(はたん)寸前となった。革命の主役たちはこの間、政争に明け暮れ、有効策を打てなかった。

国民はその未熟な政治に失望した。そして、ロシアを敵に回しては立ちゆかない国の現実を認めざるを得なかったのだろう。

チモシェンコ首相は今回も、選挙に不正があったとして、選挙結果を認めない意向を示している。だが、国際監視団は適正な選挙とみており、支持者の間にも、5年前のような憤怒や熱気はない。

EUも選挙結果を「民主化の成果」と認める声明を出した。欧州諸国はエネルギー確保や安全保障の観点から、自らもロシアと良好な関係を築く必要がある。ウクライナの不安定化は望まない、とのメッセージだった。

ヤヌコビッチ氏は、NATO加盟申請の撤回、ロシア黒海艦隊の駐留期限延長、ロシア語の公用語化を進めると公言している。

しかし、かつてハプスブルク帝国に属した西部を中心に、欧州への帰属を求める住民は多い。ロシア寄りへの急旋回は、国家分裂の危機を招きかねない。新大統領には均衡ある(かじ)取りを望みたい。

旧ソ連や東欧の一部では、統制経済から市場経済への移行期に、国の富が一部の者に独占されるという(ゆが)みが生じた。ウクライナでも公平な富の分配は実現していないが、国民は「革命」で、言論の自由は獲得した。その遺産だけは守り抜いてほしい。

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