ギリシャ問題 危機の端緒にするな

朝日新聞 2015年07月01日

ギリシャ不安 ユーロ分断避ける道を

財政破綻(はたん)の瀬戸際にあるギリシャの問題が欧州連合(EU)と世界経済を揺さぶっている。世界の金融市場では投資家らの不安心理が広がって株価急落の連鎖が地球を1周した。グローバル経済のもとで、一つの国、一つの企業の破綻がまたたく間に世界の金融危機を引き起こしかねない時代である。ギリシャ問題もまた、そういう火だねとして警戒しなければならない。

不安の芽をつむため、ギリシャとEUは一刻も早く、支援交渉を再開すべきだ。日米も含めた主要国は連携して危機の拡散を防ぐことに努めてほしい。

不安を広げたのはギリシャのチプラス政権の対応だった。先週末、EUとの交渉を突然打ち切り、緊縮策の是非について国民投票にかけると表明した。破綻回避のため支援交渉を続けていたEUや国際通貨基金(IMF)の努力を台無しにしてしまった。

チプラス政権はEUの緊縮策への反対を掲げて今年1月に発足した。5日の国民投票は事実上、その信任投票となろう。緊縮策反対が多数なら、ユーロ離脱の可能性が高まってくる。

ただ、ギリシャ国民の7割はEU残留を望んでいるという世論調査結果もある。賛成が多数になれば、ギリシャ政府は年金削減や増税という厳しい改革案の受け入れも辞さず、ただちにEUと再協議に入るべきだ。

EU側も、ギリシャとの協議を通じて、妥協の道を探る努力が必要だろう。

この問題をどう処理するのかは統合深化をめざすEUにとって大切な試金石だ。万が一ギリシャがユーロ離脱に追いこまれれば圏内で次に財政が弱い国が標的となるからだ。実際、週明けの海外市場では、イタリアやスペイン、ポルトガルでの株価急落が目立った。それが高じれば、市場のエネルギーがユーロ分断へと一気に高まっていきかねない怖さがある。

EUにとって悩ましいのは、ギリシャに過度に柔軟さを示すと、改革努力を続ける他の加盟国に悪影響を与えかねないことだ。年内にはポルトガルやスペインで総選挙が予定されており、改革に批判的な政治勢力を勢いづけることは避けたいところだ。

ギリシャなど弱い経済の国々をユーロ圏にとどまらせつつ、債務危機を防ぐ。そのためにはユーロが抱える構造的欠陥の修正にいずれ手をつけざるをえない。域内の豊かな国、貧しい国の間の再分配を強化する、といった制度的な改革にも段階的に取り組んでいく必要がある。

読売新聞 2015年06月30日

ギリシャ危機 混乱の拡大防ぐ最善の努力を

欧州発の経済混乱を回避するため、関係する各国・機関は、事態打開へ全力を挙げるべきだ。

ギリシャ支援を巡る欧州連合(EU)などとギリシャとの協議が決裂した。

EU側は、年金減額や増税といった構造改革案の受け入れを条件に、6月末の支援期限を11月末まで延長する妥協案を示した。

だが、ギリシャは突如、EU案の是非を問う国民投票を7月5日に行う方針を表明した。これに猛反発したEU側は、期限通りに支援を打ち切ることを決めた。

交渉決裂を受けた週明け、東京市場の平均株価が600円近く下落するなど、世界の市場に混乱が波及している。

菅官房長官は記者会見で、「日本も問題の情勢分析、対応に遺漏がないようにする」と述べた。

日米をはじめ各国の金融当局は、EUや国際通貨基金(IMF)と緊密に連携し、危機拡大を食い止める必要がある。

ギリシャは30日、IMFに対する約15億ユーロの債務の返済期限を迎える。資金不足で債務不履行(デフォルト)に陥る恐れが強い。

EUが支援打ち切りを決めたのは、貸し手の大半が各国政府や中央銀行で、ギリシャがデフォルトになっても、市場への悪影響が限られると判断したのだろう。

しかし、様々な思惑が錯綜さくそうする市場では、ギリシャ問題が想定外の打撃をもたらす懸念は拭えない。過小評価は禁物である。

無論、事態の沈静化を図る最善の道は、ギリシャがEU側の改革案を受け入れ、支援延長を実現することだ。

チプラス政権が国民投票を唐突に打ち出したのは、「民意」を盾にEUへ譲歩を迫る狙いがある。投票の結果、EU案を受け入れるのなら、反緊縮路線を変更する名分が立つとの計算もあろう。

ギリシャ国民は、EUとの交渉経過やデフォルトがもたらす影響を十分に知らされていない。政権が国民に最終判断を丸投げするのは、あまりに無責任だ。

ギリシャ政府は、銀行の休業や預金引き出し制限などの資本規制に踏み切った。現金自動預け払い機(ATM)に長い列ができるなど国民に不安が広がっている。

こうした規制は一時しのぎに過ぎない。ユーロ圏からの離脱が現実味を帯びれば、ギリシャ経済が深刻な苦境に陥るのは必至だ。

国民をこれ以上苦しめないためにも、ギリシャ政府は譲歩の必要性を国民に真摯しんしに説明し、EU側に歩み寄らねばならない。

産経新聞 2015年06月30日

ギリシャ危機 国民投票への逃げ許すな

国の命運にかかわる重大な判断を、唐突に国民に丸投げしたのには唖然(あぜん)とした。

ギリシャ支援問題で欧州連合(EU)が求める財政再建策について、同国が、その賛否を問う国民投票を7月5日に行うことを決めた。

再建策の受け入れを拒むチプラス首相が民意を盾に突破を狙う瀬戸際戦術だが、あまりに危険な賭けといえよう。同国がデフォルト(債務不履行)に陥る懸念が一気に高まりユーロ圏離脱も現実味を増している。

ギリシャ危機の再燃で欧州経済が動揺すれば、世界経済のリスクとなりかねない。チプラス政権は国民投票に逃げ込まず、最後までEU側と歩み寄りへの知恵を絞るべきである。

日本も米国や欧州と連携して金融市場の混乱への監視を強め、危機が拡散しないよう万全を尽くさねばならない。

ギリシャへの金融支援は6月末で期限が切れる。だが、チプラス首相が国民投票を表明したため継続交渉が打ち切られた。このままでは国際通貨基金(IMF)などへの返済が滞る。

支援国側は年金支給額の削減などを求め、合意すれば支援を11月末まで延長する考えだった。チプラス首相が拒んだのは「反緊縮」の政権基盤が揺らぐためだ。

ただ、その判断を国民に委ねるのは無責任すぎる。国民の間で緊縮策への不満が大きいのは確かだが、ユーロ圏残留を望む声も多い。交渉決裂から1週間程度では議論の深めようもなかろう。

チプラス政権は預金流出が加速して金融不安が広がらぬよう、銀行営業を停止する資本規制をせざるを得なくなった。さらにEU側に対して支援を延長するよう改めて求めているという。だが、その前に国民投票を再考するなど、政権の責任で財政破綻を回避する手立てを講じるのが筋だ。

欧州では、債務危機への反省から、金融危機の拡大を防ぐための仕組みが整備された。このためギリシャがデフォルトに陥ったとしても、その影響は限定的だという見方が一般的だ。

だからといって、市場の混乱が広がらないとの楽観はできない。29日の東京株式市場では日経平均株価の終値が今年最大の下落幅となった。世界的な金の流れはわずかなきっかけで大きく変化する。十分な留意が必要だ。

朝日新聞 2015年06月29日

ギリシャ問題 危機の端緒にするな

ギリシャ債務危機がふたたび世界経済の火だねとなりそうだ。金融支援をめぐってギリシャと欧州連合(EU)はぎりぎりの交渉を続けてきたが、年金削減などEU側が求める厳しい改革案をギリシャが拒否。その賛否を問う国民投票を7月5日に実施するとしている。これに強く反発したEUは現行の支援を今月で打ち切ると表明した。

ギリシャは国際通貨基金(IMF)への約2千億円の借金返済が期限のあすまでにできず、債務不履行(デフォルト)になる恐れが強まっている。

心配なのは、週明けの金融市場への影響である。これが引き金となって世界経済危機に発展するようなことは絶対避けなければならない。主要国の金融当局は警戒を怠らず、必要なら連携して対応にあたってほしい。

今回、EUが最終的に支援拒否やむなしと判断した背景には、ギリシャがデフォルトとなっても影響は限定的とみていることがある。ギリシャ向け債権の多くをすでに民間金融機関から切り離し、EUやIMFが引き受けている。公的管理によって、リスクをなんとか制御できると考えているのだろう。

ただ、そんな筋書きどおりにいかないのが過去の経済危機の教訓である。日本に長期停滞をもたらす要因となった1997年秋の金融危機は、最初の三洋証券のデフォルトを当局も市場も過小評価していた。だが破綻(はたん)の連鎖は、すぐに北海道拓殖銀行や山一証券など大手へと広がり、とりかえしのつかない事態になった。

2008年の米金融大手リーマン・ブラザーズの破綻でもそうだった。未曽有の世界経済危機につながると予測できていたら、米政府はあのようなリーマン処理を選択しなかったろう。

市場にはさまざまな思惑があり、どんな経路から危機につながってしまうのか予測しにくい。ギリシャ危機にしても、想定外のリスクが十分にありうると覚悟していたほうがいい。

ギリシャ経済を大混乱に陥らせないために、少なくとも欧州中央銀行(ECB)によるギリシャの銀行への資金繰り支援は当面ある程度、続けざるをえないのではないか。

欧州統合の理念からいえば望ましくはないが、ギリシャのユーロ離脱の可能性も視野に入れる必要が出てきた。EUが対応を誤れば、この問題は財政が比較的悪いとみなされているスペインやイタリア、ポルトガルにも連鎖しかねない。経済危機の火だねを、ていねいに消していく細心さが求められている。

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