株主総会 経営の規律高める機会に

朝日新聞 2015年06月28日

電力株主総会 先行きが心配です

電力9社の株主総会で、「脱原発依存」を求める株主提案の議案がことごとく否決された。

原発再稼働に固執する経営陣に問いたい。「本当にそれで経営は大丈夫ですか」と。

来年春から電力小売りが自由化され、電気の購入先を各家庭が選べるようになる。東京電力福島第一原発事故前と変わらぬ経営姿勢は、消費者の厳しい選別の目にさらされよう。

事故前に原発依存度が5割に達した関西電力の総会では、大株主の大阪市や京都市が脱原発を促す議案を提出した。

使用済み核燃料の処分法が決まらない限り原発を動かさない▽原発に代わるエネルギー導入を積極的に進める――。

将来にツケを残さない立場からの、もっともな提案だ。

しかし経営陣は「安全を大前提に原発の早期再稼働をめざす」と繰り返し、否決を求めた。副社長は「中長期的には原発の新増設や建て替えが必要」とまで踏み込んだ。

ほかの電力も同様だった。

中国電力は山口県の上関原発計画を推進する考えを改めて示した。九州電力は川内原発のすみやかな再稼働への決意を強調し、東京電力も原発を続けたいとの意向を鮮明にした。

過酷事故が住民を苦しめ、原発の「安全神話」が崩壊してから4年。事故の教訓を忘れたかのようなあからさまな原発回帰には、あきれるばかりだ。

各社を強気にさせているのは国だ。昨年決めたエネルギー基本計画で原発を重要なベースロード電源と位置づけた。今月には、30年度の原発比率を20~22%程度と、運転延長や新増設が前提となる案をまとめた。

日本の原発は戦後、「国策民営」で進められてきた。「国民にどう思われようが、国に従っていくだけだ」。電力各社がそう考えているなら、危ういというしかない。

原発は明らかに、先が見通せない事業になっている。

全国の43基中、16基は運転開始30年を超え、存廃の決断を迫られる時期が近づく。事故後、安全規制は強化され、延命には千億円単位の費用がかかると見込まれている。

新たな原発をつくるといっても、周辺住民や自治体の理解をどうやって得ていくつもりなのか。国ばかり見ている電力各社に、その覚悟や青写真があるとはとても思えない。

「原発と心中するという印象しか持てない」。関電の総会で、ある株主が言った。

このままでいいのか。経営陣は改めて考えたほうがいい。

読売新聞 2015年06月28日

株主総会 厳しい声を企業統治に生かせ

今年の株主総会は、社外取締役を選任する企業が大幅に増えた。

東証1部で、独立性の高い社外取締役を2人以上置く企業は46%と、前年の2倍以上になった。

その大きな要因が、今月から適用が始まった上場企業の行動指針「コーポレートガバナンス・コード」である。社外取締役の積極的な活用などで、企業統治を強化するよう求めている。

外部の目で経営を見直すことは、不祥事の防止や「攻めの経営」を促す効果が期待できる。不採算部門の撤廃など、社内役員がためらいがちな判断を下すことは、社外取締役の効用と言える。

もちろん、取引先などから「お飾り」のような社外取締役を迎えても、意味はない。さらに疑問なのは、経営には縁遠い有名人を選ぶ企業が少なくないことだ。

有意義な提案ができる見識を持つ人材を選ぶのは、経営者の重要な責務である。

今年の総会では、「物言わぬ株主」と言われた生命保険会社などが、会社提案に異を唱えるケースが増えたのも特徴だ。

機関投資家に議決権を積極的に行使するよう求める「スチュワードシップ・コード」が昨年2月に策定された影響だろう。

第一生命保険は4月から、取締役会への出席率が半分に満たない社外取締役の再任を認めない方針を決めた。日本生命保険も6月から、自己資本利益率(ROE)が一定期間、5%を下回る企業の議案を「精査する」としている。

大株主が議決権を通じて企業に緊張感のある経営を求めるのは、当然のことである。

ただし、米助言会社などの示した基準に従い、「ROEが5%未満なら議案に反対」といった、杓子しゃくし定規な対応が広がるようだと、副作用が大きい。

企業がROEを過度に重視し、短期的な利益の追求に走る懸念がある。将来の成長の土台となる先行投資や人材育成などがおろそかになっては、元も子もない。

社外の目線を取り入れた経営陣と、出資者の責任を自覚した株主による実のある対話を、企業価値向上につなげてほしい。

不祥事や経営不振で釈明に追われる企業が、相変わらず目立ったのは残念である。

不適切な会計処理に揺れる東芝や、巨額の赤字に転落したシャープの総会では、株主から経営者の退陣を求める意見が相次いだ。株主の指摘を真摯しんしに受け止め、経営再建の糧とすべきだ。

産経新聞 2015年06月26日

株主総会 経営の規律高める機会に

3月期決算企業の株主総会がピークを迎えた。総会は株主の声を経営陣が直接聞く貴重な機会である。今後の経営方針を丁寧に説明して理解を求め、企業価値を高める契機としてほしい。

東京証券取引所は今月から、東証上場企業を対象にコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)の適用を始めた。これを受け、1部上場企業の9割以上が社外取締役を選任する。

企業価値を向上させるには、外部の客観的な視点を経営に生かすことが不可欠だ。その役割を担う社外取締役をお飾りに終わらせてはならない。

コーポレートガバナンスは企業統治というだけではなく、経営規律を高めることに意義がある。社外取締役はその監視役としての重責がある。

アベノミクスで過去最高益を更新する企業が相次ぐ中で、赤字が続いたり、不祥事を起こしたりした企業の総会では、株主からの厳しい批判が続出した。

液晶事業の不振で大幅な赤字を計上したシャープの総会では続投するトップに株主から批判が集中し、経営再建に向けた道筋の釈明に追われた。必要な経費を計上しないなど、不適切な会計処理で決算発表を延期した東芝の総会でも経営陣がそろって陳謝した。

株主に向き合う企業側の姿勢には変化もみえる。今年の集中日となる26日に総会を開く予定の東証上場企業は、970社程度と過去最低となる見込みだ。ピーク時に比べ半減以下の水準だ。開催日を分散して株主が参加しやすくする取り組みを歓迎する。

ガバナンス・コードの導入により、社外取締役の選任企業は昨年度より20ポイント近く増えた。取引関係がなく、独立性の高い社外取締役を導入した企業も2倍以上に増加した。企業統治の体制強化は進んでいるといえよう。

社外取締役の役割は多様だ。創業者が始めた不採算事業からの撤退など、社内役員ではできなかった決断を促すことも求められる。新規事業に対する投資など、豊富な内部留保を使って企業の稼ぐ力を高めることも重要だ。

2年連続で赤字となったソニーは、早くから社外取締役を導入しながら、いまだに苦境から脱出できていない。「経営のお目付け役」として、実効性を持たせることを忘れてはならない。

朝日新聞 2015年06月26日

企業統治指針 求む 反骨の経営者

株主総会が今週ピークを迎え多くの上場企業が企業統治改革を株主に示した。社外取締役を増やし、投資家との対話を増やす。説明責任を果たし、経営のチェック体制を強めようとすることは大切なことだ。

とはいえ、改革の狙いには、自己資本利益率(ROE)の引き上げという短期的な成果を上げることも込められている。これに偏らず、もっと広く、もっと深く、長い射程で考える経営があっていい。

企業がこぞって改革案を示したのは、東京証券取引所が今月から運用を始めた「コーポレートガバナンス・コード」とよばれる企業統治指針に沿うものだ。企業から独立した立場の社外取締役を2人以上選ぶことなどを求めている。

旗をふったのは安倍晋三首相だ。1年前の「日本再興戦略」で低すぎる日本企業のROEを高め、海外の投資家をもっと日本に呼び込もうと訴えた。

指針では、収益を上げて資本効率を高める目標を株主に明確に説明するよう経営側に求めている。また、金融庁が指針に先だって示した機関投資家向けの指針「日本版スチュワードシップ・コード」も成長戦略の一環だ。長らく「物言わぬ株主」といわれてきた生命保険会社などの機関投資家に、もっと経営に注文せよ、と促すものだ。

ただ、短期的な利益追求に走れば問題も生じやすい。粉飾経営が市場を大混乱させたエンロン事件、世界経済危機をもたらしたリーマン・ショックの記憶は新しい。破綻(はたん)企業の米経営者らが数十億円の報酬を得ていた事実は、短期利益重視の統治システムの欠陥もあらわにした。

利益至上主義の投資家行動をめぐっても、本場米国では賛否わかれて大論争が起きている。

会社はひとたび誕生したら、社会的存在となる。奉仕すべき対象は株主だけではない。社員や取引先、消費者、地域社会。多くのステークホルダー(利害関係者)の利益に沿って経営することが求められる。企業統治改革はステークホルダーにとって意味のあるものでなければならない。株主利益ばかりに走ったら、会社の長期的な発展を考える経営の視座も、技術革新に挑戦する動機も失いかねない。

少なからぬ経営者たちが本音では社外取締役をむやみに増やすことには、否定的だという。だとすれば、時の政権が旗を振れば、草木もなびくように同調する風潮はいかがなものか。「アンチ統治指針」を堂々と掲げ、信じる経営を進める反骨の経営者を見てみたい。

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