極めて異例の大幅延長だが、安全保障関連法案の確実な成立を期すには妥当な措置である。
衆院本会議は、24日までの通常国会の会期を95日間延長することを与党などの賛成多数で議決した。
安倍首相は、過去最長の延長幅について「(安保法案の)十分な審議時間を取って、徹底的に議論していきたい」と強調した。
9月27日まで国会が延長されたことで、首相らの外交・政治日程や来年度予算の概算要求、各府省の人事への影響も懸念される。
だが、日本の安全保障環境の悪化を踏まえれば、様々な危機に備え、抑止力を向上させることは急務だ。安保法案の成立を最優先する首相の判断は評価できる。
与党は、衆院採決の目安として80~90時間の法案審議を想定するが、今は約54時間にとどまる。
野党側の強硬な抵抗戦術に加え、自民党推薦の憲法学者が「法案は違憲」と指摘するなど、政府・与党側の不手際の影響で、審議が順調に進んでいないためだ。
衆院通過が7月にずれ込むのが確実な中、政府・与党は、衆院通過60日後の衆院再可決・成立の選択肢も視野に入れている。
大切なのは、単に審議時間を長く確保するのでなく、複雑な法案の内容と必要性を丁寧に説明し、国民の理解を広げることだ。
野党にも、建設的な論戦を挑むことが求められる。多様な事態への切れ目のない対処をいかに可能にするのか、という観点の議論を深めてもらいたい。
維新の党は、対案を検討している。集団的自衛権の行使要件を厳格化し、グレーゾーン事態での自衛隊の権限を拡大する内容だ。
松野代表は与党との修正協議に慎重だが、対案を正式決定すれば、その実現を目指し、与党との接点を探るべきではないか。
地域農協の経営の自由度を高める農協法改正案など、安倍政権の経済政策「アベノミクス」に資する法案の成立も急ぎたい。
自民党などは、統合型リゾート推進法案を衆院に提出している。だが、ギャンブル依存症の人の増加など、カジノ解禁の弊害は大きい。国会の大幅延長に乗じて成立を図ることは慎むべきだ。
参院選の「1票の格差」の是正も、今国会で結論を出さねばならない。自民党を除く主要各党の主張は、人口の少ない県と隣接県を1選挙区に統合する「合区」を含む案に収れんしつつある。
是正案の合意へ、自民党も党内調整を急ぐ必要がある。
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