14年度の決算の確定がずれ込んでいるため、有価証券報告書の提出が今月末の期限に間に合わず、株主総会での決算の報告も6月末から9月に延期した。
昨年秋に公表していた14年度の業績見通しも「未定」に改め、3月末時点の株主への配当を無配にした。
日本を代表する名門企業の東芝が、不適切な会計処理から異例の事態に陥っている。
工事の進行に応じて売り上げと費用を計上していくルールに照らして問題がある。在庫の評価や部品取引に関する会計処理も検証する必要があると判断した……。事業部門ごとに焦点は異なるが、企業経営の基本と言える会計ルールはどうなっていたのかとの疑問を禁じ得ない。
東芝が電力システムなど3部門で問題があると公表したのは4月初め。当初は社内出身の会長を責任者に有識者を加えた委員会で解明を進めていたが、5月中旬から元検事を含む弁護士や公認会計士からなる第三者委員会の手に委ねた。
その後、テレビや半導体、パソコン部門を調査対象に加えることになった。東芝が手がける事業の大半が含まれる。当初の認識が甘かったと言わざるをえない。
まずは第三者委のもとで実態と原因を明らかにすることだ。
東芝は、学者や官僚OBら社外取締役をそろえ、役員の指名と報酬の決定、監査についてそれぞれ委員会を設ける「委員会設置会社」だ。海外での企業統治にならった仕組みで、経営へのチェックがしっかり働くとされる。
にもかかわらず、なぜ不適切な会計を許したのか。制度の根本に立ち返った問題点の洗い出しが不可欠だ。また、外部の視点から実務を点検しているはずの監査法人は機能していたのか。解明すべき論点は多い。
東芝は2年前の社長交代時、当時の会長と社長の対立があらわになり、社長が副会長に回った経緯がある。そうした経営陣のあつれきが今回の問題に影響したのかどうかについても説明が求められよう。
今月から企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の適用が始まり、企業から独立した社外取締役を複数置くことが求められるなど、経営への監視が強化された。
しかし、いくら体裁を整えても、会計をはじめ企業経営の基本がおろそかになっているようでは意味がない。
東芝のケースから、どんな教訓を引き出せるのか。第三者委と東芝の責任は重い。
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