出生率が9年ぶりに低下に転じた。少子化克服に向け、官民を挙げて取り組まねばならない。
厚生労働省が2014年の人口動態統計を公表した。昨年1年間に生まれた赤ちゃんは100万3532人で、前年より2万6284人減少し、過去最少だった。
人口の多い団塊ジュニア世代が40歳代になり、出産年齢を過ぎつつあることが主な原因だ。人口の自然減は26万9488人だった。08年をピークに総人口が減り続ける中、最大の減少幅となった。
1人の女性が生涯に産む子供の平均数を示す合計特殊出生率は1・42だった。前年の1・43から微減した。05年に1・26まで低下した後、徐々に上昇してきたが、その傾向にストップがかかった。
深刻なのは、今後、出産の中心である20~30歳代の女性数が急速に減ることだ。出生率が多少上がっても、生まれる子供の数は減少する。出生率の低迷が続けば、60年の人口は今の3分の2の8700万人まで落ち込む。
人口減は経済・社会の活力をそぎ、社会保障制度の安定を損なう。危機的状況が迫っている。
政府は、60年に人口1億人を確保する目標を掲げている。その達成には、出生率を40年までに、人口が維持できる水準の2・07に引き上げることが前提となる。
少子化対策を一段と加速させる必要がある。
政府は3月、新少子化社会対策大綱を決定し、今後5年間を集中取り組み期間と定めた。重点課題として、保育所増設など子育て支援の拡充に加え、若者の結婚・出産支援を挙げたのが特徴だ。
晩婚・晩産化は少子化の大きな要因だ。今回の統計では、女性の平均初婚年齢は29・4歳、第1子出産時の平均年齢は30・6歳で、いずれも20年前より3歳ほど上昇した。生涯未婚率も、男女とも増え続けている。
若い世代には、経済的理由から結婚や出産をためらうケースが多い。非正規労働者の処遇改善や正社員への転換支援を強化し、若者の雇用安定を図ることが大切だ。保育・教育費の負担軽減や住宅確保策も推進すべきだろう。
大綱では、仕事と子育ての両立を困難にしている長時間労働の是正など、「働き方改革」も打ち出した。企業は見直しに真摯に取り組んでもらいたい。
対策は、ほぼ出そろっている。求められるのは、迅速かつ着実な実行だ。有効策を見極め、重点的に取り組むことも重要である。
この記事へのコメントはありません。