家庭や企業は、これからもずっと高い電気代を払い続けなくてはならないのか。経済産業省が示した2030(平成42)年の電源構成案には、そんな危惧を持つ。
この案では、原発の電源比率を20~22%に設定し、太陽光などの再生可能エネルギーを22~24%に拡大する。
試算では、原発利用によるコストの減少を再生エネのコスト増が相殺し、15年後の全体の電力コストは、現在とあまり変わらない水準が続くという。
電気代を引き下げて国民負担を軽減するには再生エネのコスト削減が急務で、政府は固定価格買い取り制度を抜本的に見直す必要がある。安全性を確認した原発を現実に再稼働させる取り組みを強めたうえで、電気代の値下げに向けた目標を示すべきだ。
電源構成案によると、原発は今後も一定規模を活用するとした。資源小国・日本にとって妥当な選択だ。そのためには原則40年とする原発の運転期間の延長が不可欠だ。新増設を含めた、長期的な原発政策を打ち出してほしい。
一方で、水力や太陽光などの再生エネの導入を拡大し、現在の2倍に高めるとしている。環境負荷が小さい再生エネは地域経済の振興策としても期待が高いが、問題はコストだ。
経産省の試算によると、30年段階では原発の活用で火力向け燃料費は現在よりも4割ほど減少するが、再生エネの拡大に伴い、固定価格買い取り費用が今の3倍以上の4兆円規模に増えるという。
東京電力福島第1原発事故を機に全国の原発が全て稼働を停止しており、日本の電気代は東日本大震災前に比べて家庭用で2割、産業用は3割も値上がりしている。高い料金水準が将来も続く事態は、国民の理解を得られまい。
政府は、温室効果ガスの30年の排出量を13年比で26%削減する目標を掲げた。原発活用と再生エネ拡大などがその根拠だ。
だが、再生エネの急拡大には買い取り費用の増加に加え、既存の送電網の設備増強なども必要だ。参入が集中する太陽光については入札制度で事業者を競わせるなど、実情に合わせた買い取り制度の改革も欠かせない。
政府は電源構成を3年後に見直すとしているが、電気代を安くするためには3年を待たず、不断の改革に取り組むべきだ。
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