新銀行東京 税金損なった責任問え

毎日新聞 2015年05月30日

新銀行東京 税金損なった責任問え

ずさんな中小企業向け融資のために、1400億円もつぎ込まれた都民の税金は、その多くが損なわれた。なぜそんな「でたらめ」がまかり通ったのか。責任をうやむやにしたままでの幕引きは許されない。

新銀行は10年前に、当時の石原慎太郎知事の発案で、資金繰りに苦しむ中小企業を支援しようと都が1000億円出資して設立した。しかし、貸出先企業の経営内容を精査するという審査の基本を無視した融資のために焦げ付きが相次ぎ、経営が悪化した。破綻を回避するため、2008年には400億円の追加出資を余儀なくされた。

追加出資に関して新銀行は、外部の弁護士らに調査を依頼し、旧経営陣が「注意義務を怠り損失を拡大させた」と結論づけた。当時の都議会での石原知事の答弁も、責任は旧経営陣にあるという主張に終始した。

しかし、新銀行は石原都政2期目の目玉として設立され、実質的には都営の「石原銀行」だった。既に民間銀行の不良債権処理が進展し、都が新銀行をつくって中小企業を支援する必要性は乏しくなっていた。それにもかかわらず開業を強行し、結果的に、民間と差別化するための緩い審査で巨額の焦げ付きを招いた。責任の一端は石原氏や都にもあるはずだ。

新銀行は旧経営陣を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしたが、東京地裁は都が当時、銀行に不良債権問題について報告を求めていなかったことなどから「(経営者に)融資中止を取締役会に提案する義務はなかった」などとして、今年3月に請求を棄却した。経営監視できなかった都の責任を指摘された格好だ。

今回の経営統合で、遅まきながらも石原都政の失策に対する清算に乗り出したことは自然な流れだ。しかし巨額の税金を無駄にした責任を不問に付すことは都民が許さないだろう。新銀行構想を追認してきた都議会の責任も重い。議会は第三者機関を設けるなどして、こうした事態を招いた原因や責任の所在を徹底的に究明する必要がある。

都は東京TYと新銀行の株式を交換することになるが、交換比率によっては投入した税金がさらに目減りする可能性がある。都民の損失を可能な限り少なくする交渉が求められる。新銀行に経営を支えられている中小企業もある。統合後も支障が出ないように統合の条件を整えることも都の責任と言える。

読売新聞 2015年06月14日

新銀行東京 経営統合でも残る独断のツケ

巨額の税金を投入してまで銀行を新設する必要があったのだろうか。

東京都が出資する新銀行東京が来年4月にも、首都圏を地盤とする地方銀行の持ち株会社「東京TYフィナンシャルグループ」の傘下に入ることになった。

都が保有する新銀行東京株を東京TY株に交換し、都は銀行経営から事実上撤退する。既に店舗は都内の本店1店だけで、民間金融を通じた中小企業対策という当初の意義は失われている。遅すぎたとは言え、当然の選択である。

新銀行東京は、石原慎太郎・元都知事が2期目の公約の目玉として構想を打ち出し、2005年に開業した。設立の経緯から「石原銀行」とも呼ばれた。

貸し渋りに苦しむ中小企業への無担保・無保証融資をうたい、都は1000億円を出資した。

高い専門性が求められる銀行経営に自治体が乗り出すリスクをどう考えるのか。経営破綻した場合、どのように責任を取るのか――。都に対し、計画段階から多くの疑問が呈されていた。

危惧された通り、甘い融資審査で焦げ付きが相次ぎ、開業3年後に累積赤字が1000億円を超えた。都は破綻回避のために400億円を追加出資し、当初と合わせて、巨大な都庁舎の建設費に匹敵する公費をぎ込んだ。

店舗と人員の大幅なリストラにより、6年連続で税引き後利益の黒字を確保しているが、設立時に出資した1000億円の大半は、損失の穴埋めに消えた。

都は、巨額の負担を都民に強いて、問題のある銀行を延命させた事実を、忘れてはならない。

追加出資については、毀損きそんさせないことを条件として、都議会が可決した。だが、株式交換の比率や東京TYの株価によっては、追加出資分に見合った持ち分を確保できない恐れも出ている。

新銀行東京が行き詰まった原因について、石原氏らが、設立時の経営陣にあるとの説明を繰り返してきたのは看過できない。

都は、ずさんな経営が行われないよう監視する立場にある。独りよがりな構想に固執した石原氏はもちろん、巨額の出資にチェック機能を果たさなかった都議会にも責任があるのは明らかだ。

設立の目的だった中小企業支援という政策の効果はどの程度あったのか。追加出資による延命という判断は妥当だったのか。こうした点の検証と、納税者への真摯しんしな説明なしに、この問題の幕引きを図ることは許されない。

産経新聞 2015年06月01日

新銀行東京 将来に資する統合を図れ

東京都が税金を投じて設立した新銀行東京が、首都圏の地方銀行グループ「東京TYフィナンシャルグループ」の傘下に入る協議をしている。

来年4月の経営統合を目指し近く基本合意する見通しだ。これにより都は、銀行経営から事実上撤退する方向という。

新銀行東京は、ずさんな融資で経営難に陥り再建中である。もはや官業の銀行として存続させる意義は乏しく、都が手を引くのは当然の流れといえよう。

肝心なのは、こうした事態を招いた責任を都が強く認識し、地域経済の活性化に資する新たな経営体制に移行させることだ。都民の税金がこれ以上無駄にならぬよう統合効果を高めねばならない。

新銀行東京は平成17年、資金繰りに苦しむ中小企業への貸し渋り対策という、当時の石原慎太郎知事の肝いりで開業した。都は資本金1000億円を出資したが、融資審査の甘さや不十分な企業統治が響き、早くも20年に1000億円超の累積損失を抱えて行き詰まった。この際に都は400億円を追加出資している。

東京TYとの統合を検討するのは、6年連続で黒字を確保し、経営再建に一定のメドがついたためである。ただ、これは、都民の税金である出資金を損失の穴埋めに使った上での再建だということを忘れてはならない。

すでに新銀行東京は業務を縮小し、店舗は新宿区の本店だけである。地域金融機関の貸し出し競争が激しさを増し、地銀再編も進む中、新銀行東京の経営をいつまでも放置するわけにはいくまい。

東京TYは昨年、東京都民銀行と八千代銀行の経営統合で設立した持ち株会社だ。新銀行東京との統合では、都が保有する新銀行東京の株式と、東京TYの株式を交換する案が有力である。都は東京TYの主要株主となるが、経営への関与は避ける方向だという。

都にはまず、追加出資した400億円の税金の扱いについて明確に説明する責務がある。再びこれが毀損(きそん)されるような事態が許されないことは言うまでもない。

回収できるかどうかは、東京TYの株価次第ともなる。

東京TY側の責任も重い。統合を通じて企業価値を高めることはもちろん、新銀行東京が融資してきた中小企業との取引に支障を来すことのないよう、万全の対応を求めたい。

毎日新聞 2015年05月29日

新銀行東京 税金損なった責任問え

ずさんな中小企業向け融資のために、1400億円もつぎ込まれた都民の税金は、その多くが損なわれた。なぜそんな「でたらめ」がまかり通ったのか。責任をうやむやにしたままでの幕引きは許されない。

新銀行は10年前に、当時の石原慎太郎知事の発案で、資金繰りに苦しむ中小企業を支援しようと都が1000億円出資して設立した。しかし、貸出先企業の経営内容を精査するという審査の基本を無視した融資のために焦げ付きが相次ぎ、経営が悪化した。破綻を回避するため、2008年には400億円の追加出資を余儀なくされた。

追加出資に関して新銀行は、外部の弁護士らに調査を依頼し、旧経営陣が「注意義務を怠り損失を拡大させた」と結論づけた。当時の都議会での石原知事の答弁も、責任は旧経営陣にあるという主張に終始した。

しかし、新銀行は石原都政2期目の目玉として設立され、実質的には都営の「石原銀行」だった。既に民間銀行の不良債権処理が進展し、都が新銀行をつくって中小企業を支援する必要性は乏しくなっていた。それにもかかわらず開業を強行し、結果的に、民間と差別化するための緩い審査で巨額の焦げ付きを招いた。責任の一端は石原氏や都にもあるはずだ。

新銀行は旧経営陣を相手取って損害賠償請求訴訟を起こしたが、東京地裁は都が当時、銀行に不良債権問題について報告を求めていなかったことなどから「(経営者に)融資中止を取締役会に提案する義務はなかった」などとして、今年3月に請求を棄却した。経営監視できなかった都の責任を指摘された格好だ。

今回の経営統合で、遅まきながらも石原都政の失策に対する清算に乗り出したことは自然な流れだ。しかし巨額の税金を無駄にした責任を不問に付すことは都民が許さないだろう。新銀行構想を追認してきた都議会の責任も重い。議会は第三者機関を設けるなどして、こうした事態を招いた原因や責任の所在を徹底的に究明する必要がある。

都は東京TYと新銀行の株式を交換することになるが、交換比率によっては投入した税金がさらに目減りする可能性がある。都民の損失を可能な限り少なくする交渉が求められる。新銀行に経営を支えられている中小企業もある。統合後も支障が出ないように統合の条件を整えることも都の責任と言える。

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