FIFA幹部起訴 日本が正常化の牽引役に

朝日新聞 2015年05月29日

FIFA汚職 これはレッドカードだ

地球で随一の人気スポーツとされるサッカーのファンはもちろん、世界中からレッドカードが乱れ飛ぶような醜聞である。

国際サッカー連盟(FIFA)が汚職疑惑で大揺れだ。大会の放送権をめぐる贈収賄などの疑いで、副会長ら14人が米司法省に起訴された。

この20年余のFIFA幹部らの汚職の規模は、1億5千万ドル(185億円)を超す疑いがあるというから、嘆かわしい。

FIFAは司法当局に全面協力し、当局に委ねるだけでなく自ら腐敗を解明すべきだ。

降ってわいた話ではない。2018年ロシア、22年カタールが決まったワールドカップ(W杯)招致に絡んだ買収疑惑では複数の理事が活動停止に。このときの理事24人のうち、3分の1近くの7人が汚職で辞任、もしくは退任に追い込まれた。

権力闘争も激しく、前回の会長選挙ではカタール出身の理事が集票工作の金を25人に渡し、追放になった。

FIFAは、世界的な有料衛星放送の普及とともに収入が急増し、商業主義が深まった。W杯の開催を望む国も多い。

W杯の絶大な人気ゆえ、FIFAへのチェック機能が働きづらい。サッカーそのものの魅力がまぶしすぎるから、汚職があっても、スポンサーのなり手はいくらでもいる。ファンが団結して、協賛企業の不買運動を起こすとも考えにくい。

だが、同じような構図をもつ国際オリンピック委員会(IOC)は、不祥事を機に自己改革をしている。1999年、五輪招致での贈収賄事件を受けて組織の風通しを良くした。選手代表らを委員に加え、定年を80歳から原則70歳に下げた。会長の在任期間は最長で12年にした。

しかし、FIFAは批判に聞く耳を持たなかった。会長職には定年も多選を禁じる規定もない。前任のアベランジェ会長が82歳までの24年間務め、後任のブラッター会長は79歳で18年目を迎え、強権ぶりが目につく。高額な年収も公開しない。

今回の事件の進展がどうであれ、FIFAは徹底的な改革が必要だ。組織運営全般の透明性を高めなくてはならない。

29日、現会長が5選をめざす会長選挙が予定されている。この事件の最中に強行したら暴挙だ。もはや現会長に改革は期待できない。新しいリーダーの下、刷新を図るべきだ。

日本サッカー協会は、再びW杯を日本で開く夢を描く。新たにFIFA理事に就く田嶋幸三・日本協会副会長は、不正撲滅と組織の浄化を訴えるべきだ。

読売新聞 2015年05月31日

FIFA汚職 根深い強欲体質にあきれる

国際サッカー連盟(FIFA)の闇が暴かれつつある。

FIFAの副会長らが国際試合の放送権やスポンサー権などの便宜を図った見返りに、賄賂を受け取っていたとして、米司法省が関連業者5人を含む計14人を起訴した。

起訴事実は、組織的な不当利得や資金洗浄などの罪だ。副会長らが1991年から受け取っていた賄賂やリベートの総額は、180億円を上回るという。

米司法省は「被告らは、信用度の高い自らの地位を乱用し、世界中のファンらを深く傷つけた」と批判した。「捜査は、これが最終章ではない」とも強調した。

不正の全容解明を求めたい。

スイス当局も、ワールドカップ(W杯)の2018年大会と22年大会の開催地選定などを巡る不正疑惑の捜査に乗り出した。

開催地は、それぞれロシアと、酷暑が懸念されたカタールに決まった。22年大会の招致には、日本も名乗りを上げていた。

W杯は夏季に開かれてきたが、FIFAは、カタール大会の時期については11~12月とする異例の決定をした。カタール開催に固執したことがうかがえる。

五輪と並ぶ巨大なスポーツイベントであるW杯は、FIFAの最大の収入源だ。11~14年の総収入7100億円のうち、W杯関連の放送権料やスポンサー料が7割を占めている。

世界で延べ300億人以上がW杯をテレビ観戦するとされる。テレビ局にとっては、魅力的な大会だ。スポンサー企業はイメージアップを期待できる。経済効果を見越し、開催を求める国は多い。

W杯などに絡む利権を買い取り、テレビ局や企業に転売しようと、専門業者がFIFA幹部を抱き込んだのが、一連の事件の構図だ。重要事項の決定権限が二十数人の理事に集中するFIFAの閉鎖的な組織運営が背景にある。

FIFAでは、ゼップ・ブラッター氏が会長に就いた98年以降、金銭に絡む様々なトラブル、疑惑が取りざたされてきた。

FIFAが事件の最中に総会を開き、ブラッター氏の5選を決めたことは、理解に苦しむ。多数の幹部が起訴されれば、通常ならトップも監督責任を免れまい。

日本サッカー協会の大仁邦弥会長が、ブラッター氏支持の意向を示していたのも釈然としない。

総会では、日本協会副会長の田嶋幸三氏がFIFA理事に任命された。FIFAの改革に、日本も積極的に関与していくべきだ。

産経新聞 2015年05月29日

FIFA幹部起訴 日本が正常化の牽引役に

米司法省が国際サッカー連盟(FIFA)の副会長ら9人を含む計14人を、贈収賄などの罪で起訴した。世界最大の人気スポーツ、サッカーの総本山は大揺れである。

サッカー界は立ち直らなくてはならない。この際、不正のうみを自ら出し切り、公正な組織として出直すべきだ。日本のサッカー界には、正常化の先頭に立つことを期待したい。

米国のリンチ司法長官は「世界のサッカー界にはびこる不正を根絶する」と宣言し、捜査幹部は今回の起訴を「端緒にすぎず、最終章ではない」と語った。

FIFA本部のあるスイスの検察当局も、2018年、22年のワールドカップ(W杯)開催地選定をめぐり不正があったとして、本格捜査に入った。混乱は容易に収まらないだろう。

悲しいかな、本来、最も公正であるべき世界のスポーツ界が、長く金銭スキャンダルにまみれ続けてきたのは事実である。

今回起訴された幹部らにも、過去に公表された疑惑、噂される不正は多々あった。捜査のメスが入るまで、半ば放置されてきたこと自体、恥じ入るべきである。

FIFAが不正の温床となった要因は、サッカーという巨大市場の方向性を、ごく少数の理事らが決定してきた仕組みにある。理事や各大陸連盟、各国協会トップの多くを王族、貴族、財閥総帥、独裁者の親族らが占めてきた。

02年W杯開催地を日本が目指していたころ、海外の記者に日本協会幹部の構成を聞かれたことがある。「東京五輪代表の監督が会長で、コーチとセンターフォワードが副会長だ」と答えた。

長沼健、岡野俊一郎、川淵三郎各氏のことである。この記者は「政治力も経済的基盤もなければ、FIFAのスタイルとはいえない」と一笑に付した。

だが欧州連盟の会長をミシェル・プラティニ氏が務め、FIFA会長選にルイス・フィーゴ氏が名乗りを上げるなど、世界のサッカー界は変わりつつある。

FIFA理事を務めた前任の小倉純二氏は「清廉」の評価を受けてきた。新任理事に当選したばかりの田嶋幸三氏は元日本代表選手でもある。サッカー界が自ら競技を牽引(けんいん)してきた日本の経験を、堂々と改革に生かしてほしい。

組織が汚濁にまみれた今こそ、青臭い理想論を語るときだ。

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