参院の「一票の格差」是正をめぐる議論が、進展を見ぬまま時間切れを迎えかねない情勢だ。
与野党代表者による検討会で、自民党は定数の「6増6減」が有力だと主張する一方、一部の選挙区を統合する「合区」にも含みを残した。
「鳥取・島根」などを想定した合区について党内の了承は得られない。だから、6増6減を推してはみたが、他党から相手にされないため合区にも言及しておく。
腰が定まらないとはこのことではないか。来年の参院選で見直しを実施するなら、時間稼ぎはもう許されない。合意作りへ、与党としての責務を果たすときだ。
自民党は昨年10月にも、6増6減のほか選挙区の定数増と比例代表の定数減、選挙区の部分的な統合など4案について、絞り込みをせずに提示した。第一党の無責任な対応に野党は反発し、議論は今年に持ち越された。
最高裁は平成25年参院選(最大格差4・77倍)について、22年の選挙に続き「違憲状態」と判断した。6増6減だけでは、最大で4・31倍の格差が残るという。他党が「是正が不十分」と指摘するのも無理はない。
同じ与党の公明党も自民党の姿勢に批判的だ。従来のブロック制案を撤回し、合区導入による決着を主張しはじめた。
自民党が合区案に踏み切れば、与野党間の議論が進む可能性はある。合区をつくる数、定数配分などの主張に開きはあるが、具体的な折衝に入れるだろう。
もとより、こうした方法は抜本改革からは遠い。合区の一部導入に明確な理念を見いだすことはできない。格差縮小を図るだけの、つぎはぎの案ともいえる。
一方、自民党が主張する都道府県単位の選挙区を維持すれば、今後も部分的な定数是正を繰り返すことになる。該当選挙区の議員、候補らは、そのつど抵抗する。個々の反対意見に右往左往し、改革案を打ち出せないのが現状だ。
憲法改正を目指している自民党は、衆参それぞれの役割を明確に打ち出すべきだ。それにふさわしい選挙制度は、参院が独自性を発揮する土台にもなろう。
二院制をどうするかの根本の議論は避け、当面の是正策さえまとめられないなら、立法府の担い手の資格、さらには参院の存在意義にも疑念を抱かれる。
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