親日的な太平洋の島嶼国と、戦略的な協力関係を着実に拡大したい。国際社会における日本の発言力も高まろう。
日本と、パプアニューギニアなど14島嶼国の首脳らが、太平洋・島サミットを福島県いわき市で開いた。3年に1度の会議で、7回目である。
安倍首相は演説で、防災や地球温暖化対策などに3年間で550億円以上の支援を行う方針を表明した。約4000人の防災専門家らを育成する考えも示した。
島嶼国は台風や津波の被害を受けやすい。日本は従来、地震計や潮位計、災害警報網の整備、砂浜の再生などを、政府開発援助(ODA)で手がけてきた。
日本の高い技術力を生かし、きめ細かい支援を重ねるべきだ。
東日本大震災で大きな被害を受けた福島での開催は意義深い。首脳には、地元産食材を使った料理がふるまわれた。復興のアピールに加え、風評被害の払拭につながることを期待したい。
日本にとって、島嶼国は資源の宝庫だ。天然ガスなどエネルギーや、鉱物の貴重な輸入元になっている。周辺海域はマグロ、カツオの好漁場でもある。
採択した首脳宣言は「武力による威嚇、武力の行使に訴えることなく、国際紛争を平和的に解決する重要性」を強調した。名指しを避けつつ、この地域で影響力を拡大する中国を牽制したものだ。
中国は、14か国中8か国と国交を持ち、港湾などインフラ整備を支援する。中国企業もリゾート開発に乗り出している。巨大な経済圏を目指す「21世紀海上シルクロード」構想の一環とみられる。
特に、昨年9月の民政復帰まで約8年間軍政が続いたフィジーとの関係強化に力を入れている。
フィジーは今回、9年ぶりに島サミットに参加した。安倍首相はフィジー首相との会談で、9億円の資金協力を伝えた。同国の民主化を後押ししつつ、連携を強化することが重要である。
首脳宣言は、日本が目指す国連安全保障理事会の改革について、交渉プロセスに「建設的に関与する」と明記した。改革実現には、国連加盟国の3分の2の賛成が必要である。島嶼国を有力な支持基盤として大切にしたい。
太平洋地域は先の大戦で激戦地となった。今年4月には天皇、皇后両陛下が戦没者の慰霊のためパラオを訪問された。首脳宣言が掲げた「戦没者遺骨の収容」を加速するには、各国との実務的な協力が欠かせない。
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