景気の緩やかな回復基調を、民需主導の本格的な成長につなげたい。
今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比0・6%増、年率換算で2・4%増と、2四半期連続でプラス成長になった。
個人消費が3期連続で伸びた。設備投資と住宅投資も4期ぶりに増加に転じた。民間の内需がそろって復調したのは心強い。
ただ、商品などの在庫増加が、GDPを押し上げている面もある。積み上がった在庫を円滑に解消しないと、生産の抑制につながる恐れがあろう。
輸出は3期連続で増えたが、伸び率は縮小した。中国など海外経済の減速にも警戒が必要だ。
GDPの6割を占める個人消費の先行きが、安定成長を実現できるかどうかのカギとなる。
消費は昨年4月の消費税率引き上げ後に急減し、その後の回復は依然として緩やかだ。円安で食料品などの輸入価格が上がり、消費者の負担感は増している。
家計の根強い節約志向を払拭するには、購買力の源泉である賃金や所得を、着実に増やしていくことが欠かせない。
経団連のまとめによると、今春闘の賃上げ率は2・6%と、21年ぶりの高水準だった。連合の集計では、中小企業の賃金も昨年を超える伸びとなった。
家計の多くが、春闘による収入増を実感できるのは、これからだろう。賃金上昇をテコに消費が活発化し、企業業績を一段と押し上げる「好循環」の歯車が回り始めることを期待したい。
消費と並ぶ内需の柱の設備投資も、ようやく上向いた。だが、その勢いは緩慢である。
業績は好調だが、円安や原油安など良好な事業環境がいつまで続くか見通せない。海外景気の不透明感も強まっている。そうした理由で「攻めの経営」にかじを切れない企業も多いとみられる。
だが、手をこまぬいていては、厳しい国際競争や人口減少の荒波は乗り切れまい。人手不足が事業拡大の足かせになるという、新たな課題も顕在化してきた。
生産性を高める省力化投資や、成長分野への転換を目指す新規投資の必要性は増している。
甘利経済再生相は、リスクを取って成長に挑む企業に関し、「背中をしっかり押していく。手立てを検討したい」と述べた。
新規参入を阻む規制の撤廃をはじめ、事業機会の拡大につながる具体策を急がねばならない。
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