スポーツ政策の司令塔としての機能を果たすことが、2020年東京五輪・パラリンピックの成功につながる。
「スポーツ庁」の新設を盛り込んだ改正文部科学省設置法が成立した。10月に約120人体制で発足する。
11年8月に施行されたスポーツ基本法の付則に、スポーツ庁設置の検討が明記された。その後、東京五輪の開催が決まり、スポーツ庁を求める機運が盛り上がったのは、自然な流れと言える。
日本のスポーツ政策は、縦割りの弊害が指摘されてきた。
五輪は文科省、パラリンピックは厚生労働省の担当だったことがその象徴だ。昨春、厚労省の障害者スポーツ部門が文科省に移管され、五輪とパラリンピックの選手強化を一体的に推進する体制は、ようやく整った。
それでも、競技場整備は国土交通省、スポーツビジネス振興は経済産業省など、依然、各省に所管がまたがる。文科省の外局としてスポーツ庁が新設されても、この状況は基本的に変わらない。
スポーツ庁に期待されるのは、効率的にスポーツ政策を推進する調整機能である。五輪メダリストら、民間人からの起用が有力視される初代長官には、話題作りよりも実務能力が求められる。
当面の最大の課題は、東京五輪・パラリンピックに向けた選手強化だ。地元開催の大舞台で日本選手が活躍すれば、スポーツ熱は一層高まるだろう。
スポーツ庁は、各競技団体に強化費を配分する際の中心的役割を担う。今年度の「競技力向上事業費」は74億円だ。
限られた予算の中で、最大の成果を上げる必要がある。各競技団体に広く薄く行き渡らせる傾向が強かった日本オリンピック委員会(JOC)主導の従来の配分方法を変えるのは妥当である。
メダル獲得が有望な種目に思い切って重点配分するなど、メリハリを利かせることが重要だ。
柔道やフェンシングなどの競技団体で、助成金の不正受給といった不祥事が相次いでいる。公金である強化費を扱う各団体のガバナンス(統治能力)の欠如は深刻だ。規律向上へ、スポーツ庁が指導力を発揮してもらいたい。
東京五輪・パラリンピック特別措置法案が近く成立すれば、政府内の総合調整にあたる五輪相が誕生する。五輪準備を円滑に進めるには、大会組織委員会と五輪相、スポーツ庁の協力態勢を築き、役割を明確にすることが肝要だ。
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