経済安定への国民の期待が、苦境にあった政権党を救ったのだろう。
英国の総選挙で、キャメロン首相率いる保守党が勝利を収め、首相続投が確実となった。
保守党は定数650の下院で、330台の議席を獲得し、過半数を確保した。最大野党・労働党は、20議席以上減らし、敗北した。事前には、両党の大接戦が予想されたが、有権者は保守党を明確に信任したと言える。
政党支持率で、保守党はここ数年、労働党の後塵を拝していた。住民サービスの縮小など財政立て直し策が不評だったためだ。
保守党が逆転できたのは、英国経済の復調による面が大きい。昨年の経済成長率は2・8%と、先進7か国で最高だった。法人税減税などによる経済活性化の実績を訴えたことも奏功した。
労働党のミリバンド党首は、格差拡大を批判し、最低賃金引き上げなどを公約したが、経済運営の実行力が疑問視された。
2010年の前回総選挙で、保守党は過半数を獲得できず、中道左派・自由民主党と協力し、戦後初の連立政権を樹立した。
今回も単独政権を担える党はないとの予測から「2大政党制の終焉」がささやかれていたが、土壇場で保守党が底力を示した。
注目すべきは、スコットランド民族党(SNP)の躍進である。地元の59議席のほとんどを占め、第3党の座を確保した。
スコットランドの独立の是非を問うた昨年9月の住民投票で、SNPは独立運動を主導し、賛成が反対の10ポイント差にまで迫った。その後も、党勢を拡大している。
今後、スコットランドへの権限移譲が加速しよう。SNPの動向次第では独立問題が再燃し、英国の不安定材料になりかねない。
キャメロン氏の難問は、欧州連合(EU)との関係見直しだ。
保守党は、EU加盟継続か脱退かを問う国民投票の17年末までの実施を公約に掲げた。移民の急増などで、反EU感情が国民に強まっているためだ。
だが、仮にEUを離脱すれば、英国経済が打撃を受け、欧州も混乱しかねない。経済再建を重視するキャメロン氏には、世論がEU残留に向かうよう、指導力を発揮することが求められる。
キャメロン氏は昨年来、内政にかかりきりで、ウクライナ情勢など外交面の存在感が薄れていた。アジアインフラ投資銀行への参加を巡り、すきま風が吹いた米国との関係修復なども課題である。
この記事へのコメントはありません。