本当に実現可能な数字なのだろうか。
地球温暖化防止のために二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を、日本は2030年までに26%削減するという政府の目標案が示された。
あまりにも高く、極めて疑問だ。京都議定書の下で、6%の削減を引き受けた日本は、その達成に苦しみ続けたではないか。
京都議定書の体制には、二酸化炭素の半分近くを排出する中国と米国が参加しておらず、効果は焼け石に水に等しくなっていた。
20年からは、途上国を含む全世界が参加して温室効果ガスの排出削減に取り組む新たな制度がスタートしようとしている。
数年来の討議を経て、今年末にパリで開かれる国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の場で、本決まりとなる見通しだ。
米国は25年までに26~28%、欧州連合(EU)は、30年までに少なくても40%という削減目標を日本に先んじて掲げている。
政府は26%を「国際的に遜色のない数字」と自賛しているが、排出削減の数値で肩を並べようとする発想が不適切なのだ。
日本は京都議定書の前から省エネに取り組んでいる。米国などに比べると削減余地が小さい。
二酸化炭素を排出しない原子力発電が健在だった時期においても6%の達成が困難を極めた主因は、そこにある。
26%削減の内訳は、再生可能エネルギーと省エネに頼む部分が大きい。そこに不安の種を宿す。
高コストの太陽光発電など、再生可能エネルギーが、原発の発電量をしのぐ電源構成では、中小企業や一般家庭に経済負担が長期に重くのしかかる。
政府は国際交渉の場で、日本のこれまでの真摯(しんし)な取り組みと原発の活用が思うに任せない現状をしっかり主張すべきである。
だが、二酸化炭素の削減に背を向けるのではない。気候変動や海洋酸性化の進行防止、化石燃料温存のためにも排出減は当然だ。
各国の削減量の単純比較を超えた実効ある施策を進めたい。日本が着手した途上国への削減技術支援策・二国間クレジット制度(JCM)の輪を広げるべきだ。
地球を守る理念は美しい。しかし、その裏面には各国の国益をめぐっての冷徹な計算が存在している。これを忘れると国が傾く。
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