国際社会が協力し、生存者の救出や保護を急がねばならない。
ネパール中部でマグニチュード7・8の地震が発生した。インドやバングラデシュ、中国なども強い揺れに見舞われ、4か国の死者は3900人を超えた。
被害が甚大なのは、震源に近いネパールの首都カトマンズだ。多くの住宅やビルが倒壊し、生き埋めになる住民が相次いだ。道路をふさいだがれきが、救助活動を阻む。重機も足りない。
余震を恐れ、多くの人が屋外で避難生活を続ける。水や食糧、医薬品などが不足している。
交通や通信網が寸断され、被害の全容ははっきりしない。犠牲者はさらに増えるとみられる。ヒマラヤ山系では地震に伴う雪崩も発生し、登山で訪れていた日本人男性1人が亡くなった。多くの登山客が下山できずにいる。
地震発生から72時間が過ぎると、生き埋めになった人の生存率は大きく下がるという。28日午後が救助作業の一つの目安だ。一人でも多くの被災者を助けたい。
中国、インド、米国など各国が捜索・救援隊などを送り込んだ。日本政府は、2500万円相当の支援物資の提供を決め、70人の国際緊急援助隊も派遣した。他国チームとの連携が不可欠である。
ネパール周辺は、二つのプレート(岩板)がぶつかる世界有数の地震多発地帯だ。1934年には1万人以上が死亡した。
地震対策は著しく遅れている。観光以外に主要産業がなく、財政基盤が脆弱なため、ネパール政府は防災にまで手が回らない。
今回、倒壊したのは、レンガを積んでモルタルで固めただけの建造物がほとんどだ。
地盤が軟弱なカトマンズ周辺の特性を踏まえ、建造物の耐震化などの減災対策を進めることが重要である。各国には、救助活動の後も、復旧・復興へ向けた息の長い支援が求められる。
3月に仙台市で開かれた国連防災世界会議で「仙台防災枠組み」が採択された。災害への備えができていない途上国に対し、国際社会が財政面や技術移転、人材育成などの支援を進める内容だ。
その実効性が問われよう。
大地震の発生が懸念されていたネパールでは、日本の大学の研究者や国際協力機構(JICA)が、被害予測や防災体制の調査に携わってきた。
日本には、幾度もの震災を乗り越えた経験がある。その知見をネパールのために活用したい。
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