政治資金の公開制度をないがしろにする、極めて悪質な犯行である。
小渕優子前経済産業相の元秘書2人が、政治資金規正法違反で在宅起訴された。小渕氏の四つの政治団体で、収支の改竄を繰り返したという起訴内容だ。
政治資金収支報告書への虚偽記入額は、2013年までの5年間で3億円を超える。
小渕氏本人は嫌疑不十分で不起訴になったとはいえ、政治的・道義的責任は免れない。
元秘書は、前群馬県中之条町長で、小渕氏の地元の金庫番的存在だった。もう1人は東京の事務所で政策秘書を務めていた。小渕氏の監督責任は重大であり、「知らなかった」では済まされまい。
小渕氏は経産相を辞任後、未だに自らの説明責任を果たしていない。昨年の衆院選で、政治資金疑惑を謝罪し、当選したが、みそぎが済んだわけではない。 小渕氏は弁護士らで構成する第三者委員会での調査を急ぐとのコメントを出した。なぜ、巨額の虚偽記入を見過ごしたのか。国民にしっかりと説明すべきだ。
このまま一議員で終わるか、リーダー候補に返り咲けるか。記者会見での説明の内容によって、小渕氏の将来が占えよう。
看過できないのは、一連の虚偽記入の動機が、簿外支出の隠蔽のためだったとみられることだ。
小渕氏の政治団体では、父親の小渕恵三元首相の代から、他の議員への陣中見舞いなどを簿外で支出していたという。このため、政治団体に実際に残っている資金の額と、収支報告書上の残高が合わなくなっていた。
元秘書は帳尻を合わせるため、別の政治団体に寄付したように装った。架空の寄付を受けた政治団体については、支援者向けの観劇会の収支を操作していた。
政治資金規正法は、公正な政治活動を実現するため、政治資金の収支の公開を義務づけている。
1995年の政党助成法施行により、政治資金に税金が投入されるようになった。透明性の確保が一段と求められている。
今国会では、西川公也前農相が辞任に追い込まれた。政治団体が、農水省の補助金交付団体の関連会社から寄付を受けたためだ。
日本歯科医師会の政治団体を巡る疑惑も浮上している。
政治とカネの不祥事は、国民の政治不信につながる。すべての国会議員が政治資金規正法の趣旨を踏まえ、資金の適正な処理に努めねばならない。
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