日米首脳会談 世界平和と繁栄に役割果たせ

朝日新聞 2015年04月30日

日米首脳会談 核廃絶へ、次は行動だ

「広島、長崎の被爆70年において、核兵器使用の壊滅的で非人道的な結末を思い起こす」

オバマ米大統領と安倍首相が、核不拡散条約(NPT)再検討会議に関して、共同声明を発表した。

米国では原爆投下は正当だったという意見が根強い。そんな中、トップが核の非人道性に踏み込んだことは意義深く、核廃絶への一歩と評価したい。

被爆国の日本は、もとより核廃絶の先頭に立つべき国だ。最大の核大国である米国と連携し、果たしうる役割は大きい。

声明の背景には、NPTに基づく核不拡散体制が揺らいでいることへの危機感があった。

非核保有国の間では、米ロ中英仏など核保有国の核軍縮のスピードが遅く、「核なき世界」への展望がいっこうに開けぬことへの不満が高まっている。

日米両国はその実現に向けた努力を改めて宣言した。積極的に行動していく責任がある。

声明は「即時に採らねばならぬ措置」として、米国とロシアの交渉を通じたいっそうの核削減をかかげた。さらに、議会の抵抗で米国が批准できていない包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効も挙げた。

いずれも、当事国の米国がただちに着手すべき課題だ。

ただ、楽観はできない。

共同声明は、核軍縮はあくまで段階的に進められるべきだ、との考えを強調した。

「核兵器は非人道的。だから国際法で明確に禁止しよう」とする一部の非核保有国の動きには距離を置くものだ。

米国は核兵器を安全保障の根幹に据え、日本はその傘に依存する。にわかに非合法化に応じられないにしても、非核保有国側の失望は必至だ。

NPT再検討会議では、核の非合法化が論点となりそうだ。日米としてもっと歩み寄る道を探ってもらいたい。

一方で声明は、日米安保体制の核の傘のあり方には言及しなかった。

オバマ政権は核兵器の役割低減に力を注ぐ。核保有の目的を「相手からの核攻撃の抑止」に限り、相手より先に核を使わないと約束する政策も視野に入れる。だが日本は核実験を繰り返す北朝鮮や、中国の核の脅威を理由に、「核の傘」の維持にこだわる方針を崩さない。

核の脅しで身を守ろうとする発想を変えない限り、相手の核依存も変わるまい。

核廃絶を実現するには「核の傘」からの脱却が不可欠だ。その具体的な道筋を、日本が率先して探っていく必要がある。

読売新聞 2015年04月30日

日米首脳会談 世界平和と繁栄に役割果たせ

◆対中国で「法の支配」を広めたい◆

戦後70年の節目に、日米両国が世界の平和と繁栄の維持に向け、主導的な役割を果たす意志を明示した意義は大きい。歴史的な会談と言える。

安倍首相とオバマ米大統領がワシントンで会談し、「日米共同ビジョン声明」を発表した。声明は「かつての敵対国が不動の同盟国」となり、アジアと世界のために協働していることを「和解の力を示す模範」と評価した。

安倍政権の「積極的平和主義」と、オバマ政権のアジア重視のリバランス(再均衡)戦略を通じ、日米が連携する方針も示した。

◆「不動の同盟」発信せよ◆

日米同盟は、東西冷戦中も冷戦終焉しゅうえん後も、地域を安定させる「国際公共財」との信頼を得てきた。今後も両政府は、政治、経済両面で世界に貢献すべきだろう。

声明は、日米関係の歩みに関連し、「過去の経験は教えとすべきであるが、将来への可能性に制約を課すべきではない」と指摘した。歴史認識を巡る中韓両国の日本批判を想定したとみられる。

首相は、共同記者会見で、慰安婦問題について、「非常に心が痛む。河野談話を見直す考えはない」と強調した。

日本は戦前・戦中への反省を踏まえつつ、未来志向で国際社会に関与することが大切である。

会談では、新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)の策定で日米同盟の抑止力と対処力が一層強化されると確認した。

オバマ氏は、尖閣諸島が日米安保条約5条に基づく米国の防衛義務の対象だと改めて明言した。

◆新防衛指針の具体化を◆

新指針は、平時から有事まで、自衛隊と米軍の切れ目のない協力を可能にする。日本周辺に限定されていた日米協力も地球規模に拡大する。いずれも画期的だ。

日米の部隊運用の調整機関や共同作戦計画を具体化し、新指針の実効性を高めたい。安保関連法案は今国会で成立させるべきだ。

米軍普天間飛行場の辺野古移設について、首相は、「唯一の解決策との立場は揺るぎない」と強調した。米軍の新型輸送機オスプレイの訓練の県外移転など、沖縄の負担軽減に努める考えも示した。オバマ氏は協力を約束した。

同盟の根幹である米軍の日本駐留を持続可能なものにするため、日米双方が基地周辺住民の負担軽減に力を入れる必要がある。

辺野古移設をめぐる日米両政府と沖縄県の主張の違いは大きい。だが、普天間飛行場の固定化を避けるには、ぶれることなく移設を進めることが欠かせない。

中国について、両首脳は、南シナ海での岩礁埋め立てを念頭に、「一方的な現状変更の試みに反対する」との立場で一致した。

日米が連携し、「法の支配」に基づく自由で開かれたアジア太平洋地域を発展させ、そこに中国を取り込むことでも合意した。

オバマ氏は、中国の強引な海洋進出について「力を拡大しようとしている。そうしたやり方は間違っている」と批判した。

東シナ海における防空識別圏の設定や恒常的な領海侵入、南シナ海での飛行場建設など、中国の一方的な行動は看過できない。

軍事、経済両面で台頭し、自己主張を強める中国に、いかに独善的な行動を自制させるかは、国際社会の共通課題だ。

日米両国は、国際ルールに沿った話し合いによる問題解決を中国に働きかける必要がある。

環太平洋経済連携協定(TPP)に関し、会談では、先週の日米閣僚協議の「進展」を歓迎した。日米協議の前進が12か国の全体交渉を推進するとして、日米が早期妥結を主導する方針も確認した。

TPPは、成長が著しいアジアに高いレベルの自由貿易・投資ルールを確立し、将来的には安定的な国際経済秩序に中国を組み込むという戦略的な重要性を持つ。

◆TPP早期妥結図ろう◆

米国産米の輸入量拡大など、残された課題の克服へ、日米双方の一層の努力が求められる。

交渉の妥結には、米大統領に通商一括交渉権(TPA)を付与する法案の早期成立が不可欠である。オバマ氏には、議会の説得工作を加速させる責任がある。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)について、首相は、個別融資案件の厳重な審査など「公正なガバナンス」の必要性を指摘した。オバマ氏も、融資基準の透明性の確保が重要だと語った。

AIIBには、国際金融機関としての運営の公平性などに強い懸念がある。日米両国が参加を見合わせているのは妥当だ。今後も中国の出方を慎重に注視したい。

産経新聞 2015年04月30日

日米首脳会談 地球規模の同盟実践を TPP妥結で経済新秩序築け

「世界の中の日米同盟」への大きな歩みを記した。

安倍晋三首相とオバマ大統領の首脳会談は、両国の協力関係を地球規模へ拡大する方針を確認し、内外に強く発信した。首相は「同盟の歴史に新たな一ページを開いた」と語った。

「不動の同盟国」を支える柱は、改定された防衛協力指針(ガイドライン)に基づく関係の強化である。日本の防衛に加え、世界の平和と安定に両国が手を携えていく路線を敷いたといえる。

≪「南シナ海」が試金石に≫

併せて、両首脳は経済分野でも共に世界の秩序を維持、構築していくことを確認した。安全保障、経済のいずれにおいても、念頭には台頭する中国への対処があるが、オバマ政権は日本との連携重視の姿勢を鮮明にした。

新ガイドラインを現実に機能させるための安全保障法制の見直しや貿易交渉、それに伴う国内対応など、同盟のステージを現実に高めるための課題は多い。それらの取り組みを加速させる、両首脳の指導力が一層求められる。

会談後の会見で、大統領は日本を「地球規模のパートナー」と位置付け、歓迎式典では同盟が「未来に照準を合わせている」とも語った。首相は「同盟が世界の平和と繁栄に主導的な役割を果たす」と会談で応えた。

自由と民主主義、基本的人権、法の支配といった、同盟の根幹にある基本的価値の共有を両首脳が改めて強調した意義も大きい。

経済大国になったとはいえ、共産党支配が続く中国は、軍事力を背景に国際ルールを無視した行動を繰り返している。そうした国が国際秩序の担い手を目指すことは受け入れられないと、日米は再確認した。

発表された共同ビジョン声明は、中国による南シナ海進出やロシアのクリミア併合を念頭に「力や強制による現状変更」を認めないと強調した。

具体的な大きな課題として、南シナ海で岩礁の埋め立てを進める中国をどう押さえ込んでいくかが浮上している。両首脳はこの問題でも、中国の一方的な現状変更の試みに反対することを確認した。他の同盟国、友好国を巻き込み、それを阻む方策を打ち出せるかは新たな日米関係にとっての試金石となろう。

大統領が、昨年4月の日本訪問時に続き、日米安保条約に基づき、尖閣諸島への米国の防衛義務に言及した点も評価したい。

ウクライナ情勢に関し、首相がロシアからの5月の対独戦勝記念式典への招待を断ったことを伝え、先進7カ国(G7)の連携を重視する立場を明確にしたのも、妥当なことだ。

≪新投資銀でも連携保て≫

今の世界経済は、膨張する中国の経済力を踏まえ、新たなルールと秩序を形成すべき転換期にある。その中で同盟がいかに対応していくかも日米間の課題として極めて重みを増している。

だからこそ、日米は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の妥結を急がねばならない。

両首脳は、農業などの関税分野で対立する日米協議に「大きな進展があった」との認識を共有したとしているが、首脳会談の成果というにはまったく物足りない。  米議会が大統領に通商交渉の権限を委ねる、法案の審議が見通せない事情もあるのだろうが、交渉停滞を避けるため、具体的な合意時期のメドを示すべきだった。他の参加国にも妥結を働きかける具体的な行動を求めたい。

最近のオバマ大統領は「世界経済のルールを作るのは中国のような国ではない」と繰り返し、中国の恣意(しい)的な経済運営への牽制(けんせい)を強めている。安倍首相が会見で、「TPPは中国にも模範となるような経済圏」だと説明したのも、同じ問題意識からだろう。

米国はアジアに重点を戻すリバランス政策を掲げているが、中でも経済面では「米中」シフトよりも、日米両国が主導すべきTPPに軸を置く姿勢をとっている。なおさら両首脳には世界経済の秩序作りへの役割が求められる。

中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に関し、両首脳は公正な組織運営の確保が重要との認識で一致した。結束の維持が肝要だ。アジアや欧州の参加国にも、中国の覇権主義への警戒心はある。日米の出方を注視していることを忘れてはならない。

朝日新聞 2015年04月30日

日米首脳会談 「和解の力」を礎にして

戦後70年の日米首脳会談である。訪米した安倍首相とオバマ大統領がホワイトハウスで会談し、安全保障、経済の両面で、強い連携をうたいあげた。

両首脳の共同声明では、こんな認識が示されている。

「かつての敵対国が不動の同盟国となり、アジアや世界において共通の利益や普遍的な価値を促進するために協働しており、和解の力を示す模範となっている」

70年前、米国を中心とする連合国との戦争に敗れ、占領された日本。そこから民主主義国として再出発し、憲法9条と日米安保条約を基盤に平和国家を築いてきた。

その延長線上に、日米とアジアの未来を描けるか。まさに、和解の力が針路を定める原点でなければならない。

両首脳が意識しているのは、大国化した中国の存在である。日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の18年ぶりの改定は対中戦略の一環だ。

両首脳が合意への決意を示した環太平洋経済連携協定(TPP)も、米国中心の国際秩序にいかに中国を組み込むか、という発想が根底にある。

日米にとって中国は明確な敵ではない。経済の関係を深め、安全保障上の危機を回避するため、知恵を絞って向き合うべき相手である。必要なのは、やはり和解の力に違いない。

今回の訪米で、米側が安倍首相の歴史認識に注目しているのも、そのためだ。米国や中国、韓国と共有できる歴史認識に立って、粘り強く地域の安定をめざすことが日本のリーダーには求められる。

共同会見でオバマ氏は「日本の軍事力の展開にすぐに大きな変化があるとは思わない」と述べた。日米同盟の強化とあわせて「中国との軍同士の協力も強化したい」とも語った。

同盟の目的は、地域の安定であり、中国と敵対することではない。そんな考えが鮮明に表れている。

気がかりなのは、沖縄の普天間問題だ。辺野古以外の選択肢を模索しない両政府の姿勢は、日米安保の効果的な運用を妨げる可能性がある。

首脳会談の開かれた28日は、沖縄にとって「屈辱の日」とされる。52年にサンフランシスコ講和条約で日本が主権を取り戻す一方、沖縄などが米国統治下に残された。首脳会談は沖縄を再び置き去りにする内容だったと言うほかない。

この断絶を放置して同盟強化をうたってもむなしい。ここでも、和解の力が試される。

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