冬季五輪開幕 楽しみな美と技の競演

朝日新聞 2010年02月12日

五輪開幕へ 温暖化対策にも声援を

山々が間近に迫るカナダの港湾都市バンクーバーで日本時間の明日、五輪が幕を開ける。参加する国と地域は冬季五輪史上最多の82で、華やかな大会になるだろう。しかし、競技にだけ目を奪われているわけにはいかない。

モーグルなどの会場となるバンクーバー郊外のサイプレスマウンテンでは、雪不足のため干し草を敷き詰めたり、山頂付近から雪を下ろしたりする作業に追われた。ジャンプなどの会場となるウィスラーでは、氷河の一部が解け始めている。

バンクーバーがあるブリティッシュコロンビア州には大森林が広がる。林業は一大産業だ。しかし、寒さで死滅するはずの松食い虫がここ数年、生き延びて森林を食い荒らし、緑の山に茶色い帯が走る。

今年のバンクーバーは記録的な暖冬だ。それが地球温暖化に対する主催者側の危機感を一層高めている。

冬季五輪は自然の恩恵がなければ開けない。だから環境の変化に直撃される。元バンクーバー市長でもあるブリティッシュコロンビア州のキャンベル首相は、こう強調してきた。

「温暖化が進むと、あと100年ほどで冬の五輪は開催できなくなるかも知れない。今回は環境管理の象徴となるような五輪にしなければならない」

国際オリンピック委員会のロゲ会長も、温暖化対策を「将来に向け、常に考えねばならない課題」と話す。

開幕へ向けて、五輪組織委やバンクーバー市が力を入れてきたのは、まさにこの点だ。

選手村がある地域には、汚水の熱を再利用して暖房や温水を供給するシステムを完備した。古い油などから造ったバイオディーゼル燃料を使うバスも走らせる。様々な取り組みを重ね、徹底した炭素排出量の削減を目指した。

五輪期間中に排出が予想される温室効果ガスは約30万トン。削減努力で補えない量は企業の協賛を募り、環境事業に投資してオフセット(相殺)を目指す。過去、温室効果ガスの排出量ゼロをうたった五輪はあったが、環境コンサルタント会社と公式に契約を結ぶなど、環境問題に本腰を入れたのはバンクーバーが初めてと言えるだろう。問題意識の高さを評価したい。

今回の試みを12年のロンドン五輪組織委なども参考にしようとしている。「バンクーバー方式」を成功させ、五輪の将来像をぜひ示してほしい。

フィギュアスケートの華麗な演技、ジャンプやアルペンスキーの豪快さ、スピードスケートが発する緊迫感。冬の五輪のだいご味を、いつまでも楽しむには、いま何をすればいいのか。

五輪を未来へつないでいくことは、私たちの地球の将来を切り開く作業でもある。選手たちがしのぎを削る姿に拍手を送りつつ、考えたい。

毎日新聞 2010年02月12日

冬季五輪開幕 楽しみな美と技の競演

荒川静香選手の金メダルに沸いたトリノ五輪から4年。氷と雪のスポーツの祭典、第21回冬季五輪が12日(日本時間13日)、太平洋に面したカナダ第3の都市、バンクーバーで開幕する。

冬季五輪史上最多の82の国と地域から5000人を超す選手・役員の参加が見込まれ、新たに採用される男女のスキークロスを含め7競技86種目で17日間にわたる力と技と美の競演を繰り広げる。

日本からはアイスホッケーを除く6競技に94人の選手が参加する。トリノ五輪の112人から大幅に絞り込んだ少数精鋭の布陣だが、各競技にメダル有望選手が少なくない。

トリノ五輪は2カ月違いで年齢制限に引っかかり出場できなかったフィギュアスケートの浅田真央選手は同じ19歳のライバル、金妍児(キムヨナ)選手(韓国)と最高の舞台で対決する。今大会の最大の見どころだ。

初出場だった長野五輪の7位から五輪のたびに順位を上げてきたフリースタイルスキー・モーグルの上村愛子選手は4度目の五輪で悲願のメダルに挑む。トリノ五輪で7大会ぶりにメダルゼロに終わったスピードスケート陣も今回は複数メダル獲得で雪辱を期している。

アルベールビル、リレハンメル両大会で五輪連覇を達成したノルディック複合団体はメンバーを一新し、昨年の世界選手権で優勝、かつての「お家芸」復活を目指す。

ベテランから新鋭まで幅広く楽しみな顔ぶれがそろったのも今回の特徴だ。

最年長は45歳、スケルトンの越和宏選手。ジャンプの葛西紀明選手は6大会連続、スピードスケートの岡崎朋美選手も5度目の五輪だ。日本選手団長を務める橋本聖子さんの冬・夏7度には及ばないが、すっかり冬季五輪の「顔」となった。

新鋭にも期待がかかる。スピードスケートでは15歳の中学生、高木美帆選手が堂々五輪切符を手にした。ダンスやサッカーでも非凡な才能を見せるスポーツ万能少女には大舞台で思う存分力を発揮してほしい。

バンクーバーと日本の時差は17時間。多くの競技が日本の早朝から昼にかけて行われる。競技によっては寝不足を強いられるきつい時間帯だが、精いっぱい声援を送りたい。

今回は一昨年秋のリーマン・ショック以降、初めて開かれる五輪だ。経済危機の影響が心配されたが、大会組織委員会は既存施設の活用や多くのボランティアの参加などで経費節減に努め、環境面でも工夫を重ねて開幕にこぎ着けた。関係者の汗と努力の結晶として大会が世界中に多くの感動を呼び、人々の記憶に刻まれる大会となることを祈りたい。

読売新聞 2010年02月13日

冬季五輪開幕 雪と氷のドラマを堪能したい

今回のオリンピックでは、どのようなドラマが見られるのだろうか。

第21回冬季五輪バンクーバー大会が、日本時間の13日に開幕する。約2週間にわたり繰り広げられる冬のスポーツの祭典を堪能したい。

参加する国・地域は、史上最多の82に上る。1972年の札幌五輪は35、98年の長野五輪では72か国・地域だったことを考えれば、冬季競技が確実に広まっていることがうかがえる。

4年に1度の大舞台だけに、各国の選手には、磨き上げた技を存分に発揮してもらいたい。

気がかりなのは、現地は記録的な暖冬だということだ。フリースタイルスキーの会場では、雪不足のため、近くの山から雪を運んでコースの設営にこぎ着けた。

冬季競技が天候の影響を受けるのは避けられない。そうであっても、選手たちが、可能な限り良好なコンディションで競い合えるように、大会関係者は、コース整備や競技日程の調整などに万全を期してほしい。

日本からは94人の選手が参加する。2006年のトリノ五輪の112人よりも大幅に少ない少数精鋭の布陣といえる。

日本の冬季五輪でのメダル数は長野五輪で10個を獲得して以降、低迷している。02年のソルトレークシティー五輪は2個、トリノ五輪は1個だった。

長野五輪の成績に少しでも近づくよう奮起を期待したい。

読売新聞の世論調査では、メダルを期待する種目として、最も多かったのがフィギュアスケートだ。確かに、浅田真央選手をはじめ、男女とも実力のある選手がそろっており、金メダルも狙える競技といえるだろう。

ベテランも健在だ。ジャンプの葛西紀明選手は6大会連続、スピードスケートの岡崎朋美選手は5大会連続の出場となる。そのスピードスケートでは、15歳の高木美帆選手が代表入りするなど、若い力も台頭している。

厳しい経済状況の中、遠征資金などの確保に苦労してきた選手もいる。五輪への思いは、選手によって様々だろうが、悔いのない戦いをしてほしい。

残念だったのは、現地入りしたスノーボードの男子選手が、服装が乱れているとして注意を受けたことだ。五輪選手は国の代表、という自覚を欠いていると言わざるを得ない。

選手たちのさわやかなプレーを見て、元気をもらいたい。それが多くの国民の思いだろう。

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