日米TPP交渉 両首脳が合意へ決断せよ

読売新聞 2015年04月22日

日米TPP協議 最終決着を「逃げ水」にするな

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を主導する日米が2国間協議を決着させ、全体の合意につなげることが重要だ。

甘利TPP相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表による半年ぶりの日米閣僚会談が開かれた。甘利氏は会談後、「2国間の距離は相当狭まってきたが、依然として課題は残っている」と述べた。

事務レベルでの協議を着実に重ね、最終合意を目指したい。

焦点となった米国産米の輸入量拡大について、5万トンにとどめたい日本に対し、米国は約20万トンを求めている。日本製自動車部品の関税も、日本は即時撤廃、米国は先送りを主張し、調整が続く。

双方とも国内への配慮から安易に妥協できない事情はあるが、日米が決裂し、交渉全体が漂流する事態は避けねばならない。

TPPは、貿易・投資ルールの共通化や関税の撤廃により、アジア太平洋地域に高いレベルの自由貿易圏を構築する構想である。実現には、経済規模の大きい日米両国の歩み寄りが欠かせない。

来週の日米首脳会談では、安倍首相とオバマ大統領がリーダーシップを発揮し、大詰めの段階で足踏みが続く交渉の打開を図るべきだ。最終決着を「逃げ水」にしてはならない。

TPPには、成長が期待されるアジアを中心とした域内に、透明で公正なルールに基づく経済秩序を確立する意義がある。

気がかりなのは、TPP交渉が停滞する間に、中国がアジア経済の「盟主」の地位を固めるべく、着々と手を打っていることだ。

中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーは57か国に上った。だが、組織運営や融資審査が公正に行われるかどうかは不透明である。

オバマ氏が、「中国のような国ではなく、我々が世界経済のルールを書いていることをはっきりさせなければならない」と述べたのは、もっともだ。

交渉全体の決着には、米大統領に通商一括交渉権(TPA)を与える法案の成立が欠かせない。政府間で合意しても、TPAがなければ、米議会の反対で反故ほごにされる恐れがある。

TPA法案が先週、ようやく米議会に提出されたのは前進だが、審議の行方は予断を許さない。

来年秋の大統領選などをにらみ、労働組合や業界団体など、TPP反対派による議会への働きかけも強まろう。オバマ政権は議会対策を急がねばならない。

産経新聞 2015年04月22日

日米TPP交渉 両首脳が合意へ決断せよ

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉で最大のヤマ場とされた日米の閣僚協議は、双方が距離を縮めつつも溝を埋めきれずに終わった。

現状について、安倍晋三首相は「山登りでも最後の1合がきつい」と話している。ならば、問われるのは協議を決着に導くための日米両首脳の覚悟と決断であろう。

来週行われるオバマ大統領との首脳会談について、菅義偉官房長官は「早期妥結に協力していくことを確認する」と述べた。だが、もはや日米協調の演出を図っている局面ではあるまい。

両首脳には今度こそ合意を確実にする指導力を求めたい。TPPを主導するはずの日米の対立が、参加12カ国全体の交渉を停滞させている現状を打開すべきだ。

閣僚協議は日本のコメや米国の自動車部品の関税の扱いでもつれたようだ。互いに譲れぬ国内事情があるだけに、双方とも重い政治判断と、それに伴う国内での丁寧な説明が求められる。

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