国際金融機関にふさわしい公平性や透明性が確保できるのか。不安は募るばかりである。
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーが、57か国で確定した。67か国・地域が加盟するアジア開発銀行(ADB)に迫る陣容となった。
日米両国は、AIIBで公平・中立な運営や組織体制が実現されるかどうか疑問があるとして、参加を見送った。
訪米した麻生財務相は、ルー財務長官と会談後、「AIIBは公正なガバナンス(統治)や環境への配慮など、国際的スタンダード(基準)に基づくことが重要だという点で一致した」と述べた。
AIIBが国際金融秩序の波乱要因とならないよう、日米がクギを刺したのは、妥当である。
中国は、主要出資国から選出するAIIBの理事を、本部を置く北京に常駐させず、電子メールによる連絡などで理事会を運営する方向で検討しているという。
これでは、組織運営や融資案件の選定に関し、加盟国の意見は十分に反映できまい。中国から選ばれる見込みの総裁が、意のままに動かす組織になりかねない。
ADBは、本部に常駐する12人の理事が頻繁に会議を開き、融資案件ごとに精査している。
中国が、こうした意思決定の方法について、時間や費用がかかりすぎると批判しているのは、到底容認できない。
国際金融機関を名乗る以上、多様な参加国の意見を踏まえ、融資対象事業の性格や意義、資金返済の確実性などについて、厳密に判断するのが当然である。
中国が創設メンバーから台湾を除外したことも、AIIBを恣意的に運営しようとしている証左ではないか。台湾に政治的な圧力をかける狙いとすれば問題だ。
日本国内にも、企業の利益につながるとして、参加を前向きに検討すべきだとする意見がある。
だが、AIIBに加盟した場合の日本の財政負担は、政府の試算で最大30億ドル(約3600億円)と巨額にのぼる。
日本は米国と並ぶADBの最大出資国だが、ADBが関わったプロジェクトで、日本企業の受注率はわずか0・3%ほどだ。
中国の発言力が強いAIIBに加わって、出資に見合うメリットがあるのか疑わしい。
当面は、中国の出方と、創設メンバー国による協議の行方を見守ることが得策だろう。参加を焦る必要はない。
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