安倍・翁長会談 危険性除去へ責任果たせ

朝日新聞 2015年04月18日

安倍・翁長会談 まだ「対話」とは言えぬ

「私は絶対に辺野古新基地は造らせない」

安倍首相との会談をようやく実現させた沖縄県の翁長知事は、一段と強い言葉で米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する意思を示した。

「沖縄の方々の理解を得る努力」を何度も口にしながら、翁長氏の要請を4カ月も拒んできた安倍首相は、先に会談した菅官房長官と同様、「辺野古への移転が唯一の解決策と考えている」と繰り返した。対話はまた平行線をたどった。

安倍首相は26日から訪米を予定している。戦後70年の節目に日米同盟の深化を世界に示す狙いがある。沖縄県知事と会談することで、政権が普天間問題に積極的に取り組んでいる姿勢を米側に伝えられる、という目算も働いたのだろう。

だが今回の会談を、政権の「対話姿勢」を米国に印象づけるための演出に終わらせてはいけない。

安倍政権と沖縄県との対立は険しさを増すばかりだ。首相は打開の糸口を見いだせない現状を直視し、翁長知事が求めた通り、オバマ米大統領に「沖縄県知事と県民は、辺野古移設計画に明確に反対している」と伝えるべきだ。

「粛々」と移設作業を続けている政権が「対話」姿勢をみせる背景には、国内で沖縄問題への関心が広がっている面もあるだろう。米国でも「移設は順調に進むのか」という懸念が一部でささやかれているという。

沖縄県は4月からワシントン駐在員を置いた。5月にも翁長知事自身が訪米して直接、移設反対を訴える。

翁長知事は今回も「沖縄は自ら基地を提供したことはない」と、米軍による土地の強制接収や戦争の歴史に言及した。この言葉が含む史実の重さを、首相はどう感じただろうか。

菅官房長官との会談で出た翁長知事の言葉は、小手先の経済振興策による解決を拒絶した歴史的メッセージだと、県民の評価は高い。

そのメッセージはまた、昨年の名護市長選、県知事選、総選挙で移設反対の民意が繰り返し示されながら、無視し続けてきた政権への怒りを、米軍統治下の自治権獲得闘争と重ねてみせた。それは地域のことは自ら決めよう、という自己決定権の主張でもある。

政権が本気で「粛々」路線から「対話」路線へとかじを切るというのなら、ボーリング調査をまず中断すべきだ。そうでなければ対話にならない。

読売新聞 2015年04月18日

首相VS沖縄知事 建設的対話重ねて接点を探れ

政府と沖縄県の立場の隔たりは大きいが、建設的な対話を重ねる中で、接点を探るべきだ。

安倍首相が沖縄県の翁長雄志知事と会談した。米軍普天間飛行場の辺野古移設について「唯一の解決策だ」と述べ、理解を求めた。

首相は、「一日も早い危険性の除去では、我々も沖縄も思いは同じだと思う」とも強調した。

翁長知事は、「唯一の解決策というかたくなな固定観念」に縛られるべきではないと反論し、移設作業の中止を求めた。今月下旬の首相の訪米にも言及し、「知事と県民が明確に反対している」ことを米側に伝えるよう要請した。

対立点を確認しただけだが、2人が初めて率直に意見交換した意味は小さくない。政府と県は、対話を継続し、まずは一定の信頼関係を築くことが大切である。

翁長知事は今月5日の菅官房長官との会談で、辺野古移設を巡る政府の対応を「上から目線」「政治の堕落」などと非難した。

だが、相手を批判するだけでは、沖縄の米軍基地負担の軽減という共通の目標は進展しない。

翁長知事が3月下旬、県漁業調整規則に基づき、移設作業の停止を防衛省に指示したのに対し、関連法を所管する林農相が指示の執行停止を決定した。

防衛省は、移設作業に伴い辺野古沖に投入したコンクリート製ブロックについて「サンゴ礁などの生態系に大きな影響は与えていない」との見解を公表している。

翁長知事は法廷闘争も辞さない構えだが、移設作業を停止させる見通しは立っていない。政府との対立を一方的に深めるだけでは、県民全体の利益になるまい。

沖縄周辺では、中国が軍事活動を活発化させている。2014年度の自衛隊の中国機に対する緊急発進(スクランブル)は、過去最多の464回に上った。中国公船の領海侵入も常態化している。

在沖縄米軍の重要性は一段と増した。抑止力の維持と住民の負担軽減を両立する辺野古移設は、現実的かつ最良の選択肢だ。

安倍首相は会談で、米軍基地の返還に加え、那覇空港第2滑走路建設などの地域振興策を着実に推進する考えを改めて示した。

沖縄では28年度までに、計1048ヘクタールにも上る県南部の米軍施設が順次返還される予定だ。仮に辺野古移設が停滞すれば、この計画も大幅に遅れかねない。

政府は、辺野古移設の意義と重要性を地元関係者に粘り強く説明し、理解を広げねばならない。

産経新聞 2015年04月18日

安倍・翁長会談 危険性除去へ責任果たせ

米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と移設に反対する翁長(おなが)雄志(たけし)沖縄県知事との初会談が行われた。

主張は平行線をたどったものの、国と沖縄県のトップ2人が直接、意見を交わした意義は小さくない。話し合いを継続する意向を双方が示したのもよかった。

日本と沖縄の安全保障がかかる移設実現への道のりは、なお険しいが、双方の意思疎通を保ちながら、粘り強く協議を重ねていく必要がある。

首相は会談で、辺野古移設を「唯一の解決策だ」と伝え、「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」と語った。これに対し、翁長氏は「絶対に辺野古に新基地は造らせない」とし、「固定観念に縛られず、移設作業を中止してほしい」と要求した。

世界一危険とされる普天間の危険性を除去し、沖縄の基地負担軽減を進める。さらに日米同盟の抑止力を保ちながら安全保障を確かなものにする。この3点が課題であることは変わりようもない。

首相と翁長氏の間でも、この問題意識が共有されなければ、協議の進展は難しい。3点を実現できる案として、政府が苦慮した末に見いだしたのが、辺野古移設なのである。

翁長氏は辺野古移設反対をオバマ米大統領にも伝えてほしいと主張し、代替案を示すべきではないかとの疑問が生じることについては「こんな理不尽なことはない」と語った。

それでは普天間の住民の安全を確保できない。抑止力を維持する観点からも大いに疑問である。

沖縄の基地負担は、日本やアジア太平洋地域をはじめとする世界の平和に役立っている。政府や国民が、そのことを十分認識し、負担軽減に努めるのは当然だ。

同時に、移設後に辺野古に残る米海兵隊は、台頭する中国の軍事的横暴は許さないという日米両国の意志を示す存在であることも考えておく必要がある。

会談は30分強で、安全保障を論じるには時間が足りなかった。首相をはじめ政府与党は、今後もさまざまな機会を通じ、翁長氏や沖縄関係者に、辺野古移設がなぜ唯一の解決策かを説くべきだ。

中国が奪取をねらう尖閣諸島のある県の首長として、翁長氏には基地負担を通じ、平和に貢献している意識も持ってほしい。

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