政府と沖縄県の立場の隔たりは大きいが、建設的な対話を重ねる中で、接点を探るべきだ。
安倍首相が沖縄県の翁長雄志知事と会談した。米軍普天間飛行場の辺野古移設について「唯一の解決策だ」と述べ、理解を求めた。
首相は、「一日も早い危険性の除去では、我々も沖縄も思いは同じだと思う」とも強調した。
翁長知事は、「唯一の解決策という頑なな固定観念」に縛られるべきではないと反論し、移設作業の中止を求めた。今月下旬の首相の訪米にも言及し、「知事と県民が明確に反対している」ことを米側に伝えるよう要請した。
対立点を確認しただけだが、2人が初めて率直に意見交換した意味は小さくない。政府と県は、対話を継続し、まずは一定の信頼関係を築くことが大切である。
翁長知事は今月5日の菅官房長官との会談で、辺野古移設を巡る政府の対応を「上から目線」「政治の堕落」などと非難した。
だが、相手を批判するだけでは、沖縄の米軍基地負担の軽減という共通の目標は進展しない。
翁長知事が3月下旬、県漁業調整規則に基づき、移設作業の停止を防衛省に指示したのに対し、関連法を所管する林農相が指示の執行停止を決定した。
防衛省は、移設作業に伴い辺野古沖に投入したコンクリート製ブロックについて「サンゴ礁などの生態系に大きな影響は与えていない」との見解を公表している。
翁長知事は法廷闘争も辞さない構えだが、移設作業を停止させる見通しは立っていない。政府との対立を一方的に深めるだけでは、県民全体の利益になるまい。
沖縄周辺では、中国が軍事活動を活発化させている。2014年度の自衛隊の中国機に対する緊急発進(スクランブル)は、過去最多の464回に上った。中国公船の領海侵入も常態化している。
在沖縄米軍の重要性は一段と増した。抑止力の維持と住民の負担軽減を両立する辺野古移設は、現実的かつ最良の選択肢だ。
安倍首相は会談で、米軍基地の返還に加え、那覇空港第2滑走路建設などの地域振興策を着実に推進する考えを改めて示した。
沖縄では28年度までに、計1048ヘクタールにも上る県南部の米軍施設が順次返還される予定だ。仮に辺野古移設が停滞すれば、この計画も大幅に遅れかねない。
政府は、辺野古移設の意義と重要性を地元関係者に粘り強く説明し、理解を広げねばならない。
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