G7外相会合 海洋秩序維持へ連携を強めよ

毎日新聞 2015年04月17日

海洋安保宣言 紛争を生む「砂の長城」

ドイツで開かれた主要7カ国(G7)外相会合で、国際法に基づく領有権紛争の平和的解決を促す「海洋安全保障に関するG7外相宣言」が初めて発表された。名指しこそ避けたが、海洋進出を強め、領有権紛争がある南シナ海の南沙(英語名・スプラトリー)諸島で実効支配強化を進める中国に自制を求めるものだ。

読売新聞 2015年04月17日

G7外相会合 海洋秩序維持へ連携を強めよ

海洋秩序を維持するため、中国による一方的な開発や挑発は認めない。日米欧の主要国が一致して強いメッセージを発信した意義は大きい。

先進7か国(G7)外相会合がドイツで開かれ、共同声明とは別に、「海洋安全保障に関する外相宣言」を発表した。

中国との名指しを避けつつ、東・南シナ海での大規模埋め立てなど、一方的な現状変更の行動に対する懸念を明記した。威嚇や強制への強い反対も盛り込んだ。

中国は、尖閣諸島周辺で公船の領海侵入を常態化させた。南シナ海の係争海域でも、岩礁を埋め立てて、施設建設を進めている。

日米だけでなく、欧州各国がこうしたアジアの現状への危機意識を共有したことは重要だ。

海洋の安全は、自由な経済活動に欠かせない。海洋権益は、国際ルールに基づき、各国が協調して開発・利用すべきである。

G7は、東南アジア各国と協力し、中国に独善的行動の自制と国際法の順守を働きかける必要がある。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加の判断は分かれたが、安保分野で足並みを乱してはなるまい。

G7外相の共同声明は、ウクライナ情勢について、ロシアのクリミア編入を改めて非難した。ウクライナ東部の戦闘に関する2月の停戦合意をロシアが完全に履行しない限り、対露制裁を解除しない方針も明示した。

ウクライナ政府軍と親露派武装集団の衝突は再び激化している。重火器撤去も進んでいない。

停戦の実現には、ロシアが武装集団に影響力を行使することが不可欠だ。制裁で圧力をかけつつ、対話によってロシアの譲歩を引き出す。G7には、戦略的な取り組みが求められる。

ウクライナの経済再建の支援策を具体化させることも急務だ。

6月のG7首脳会議でも、対中・露政策は主要議題となろう。

東アジアとウクライナで、力による現状変更を許さず、地域の安定をどう確保するのか。「法の支配」を重視する立場から、実効性ある対策を打ち出す必要がある。来年の議長国を務める日本も、積極的に役割を果たしたい。

共同声明は、過激派組織「イスラム国」による残虐行為や人権侵害、文化財の破壊を非難した。

国際テロの封じ込めは、中東のみならず、国際社会共通の課題だ。G7は、テロ資金の規制強化や、戦闘員の移動阻止などを主導する責任がある。

産経新聞 2015年04月17日

G7と海洋安保 結束して対中圧力強めよ

先進7カ国(G7)外相会合がドイツで開かれ、海洋進出を強める中国を念頭に、国際ルールの順守を求める海洋安全保障に関する外相宣言を採択した。

東シナ海、南シナ海での「威嚇や力による権利主張に強く反対する」と明記し、特に「(南シナ海での)大規模な埋め立てを含め現状を変更し緊張を高める一方的な行動を懸念する」と強調した。

G7が海洋安保に関して独立した文書を出すのは初めてのことであり、名指しこそ避けたものの、厳しい表現で中国を非難した。G7による危機意識の共有を歓迎したい。

英仏独伊4カ国が中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決めたことでG7の足並みの乱れも指摘されたが、そうした時期に、力を背景とした強引な海洋進出を続ける中国に対して、G7が結束を示したことには大きな意味がある。

中国の力による現状変更の試みは、アジア太平洋の平和と安全への脅威であるだけでなく、国際秩序への挑戦である。6月のG7首脳会議では、この宣言を土台として、さらに中国を牽制(けんせい)する強いメッセージを発信してほしい。

中国は、東シナ海の尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で領海侵犯を繰り返し、尖閣を含む防空識別圏を一方的に設定した。周辺国と支配を争う南シナ海では岩礁を埋め立て、飛行場を建設するなど、なりふりかまわず軍事基地化を進めている。

「中国は砂の万里の長城を築いている」(米太平洋艦隊司令官)などと批判の声が上がるのは当然だ。フィリピン外務省はサンゴ礁の損失などに伴う沿岸諸国の損失は年間1億ドル(約120億円)に上ると非難している。

宣言は、南シナ海での紛争回避のため、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国による法的拘束力のある「行動規範」の策定作業の加速化も求めた。中国は協議の進展に消極的だが、その姿勢を改めるべきだ。

外相会合の議長声明は、「民主主義、法の支配、人権尊重の原則に則し、自由と平和、領土の一体性を守り、テロなどの脅威に連携して行動する」とうたった。G7の結束は、こうした価値観の共有がよりどころであることを再確認したい。

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