前支局長帰国 重ねて起訴撤回を求める

読売新聞 2015年04月15日

産経前支局長 出国禁止措置の解除は当然だ

韓国政府が、産経新聞前ソウル支局長に対する出国禁止措置を8か月ぶりに解除した。

移動の自由という基本的人権を侵害する、ゆゆしき事態が続いていた。出国禁止の解除は、当然の措置であり、あまりに遅すぎた。前支局長は14日夜、帰国した。

前支局長は、昨年10月に起訴された。昨年4月のセウォル号沈没事故の当日、朴槿恵大統領が男性と会っていたとのうわさを取り上げた記事を産経新聞のサイトに掲載し、朴氏の名誉を毀損きそんしたという理由からだ。

前支局長の公判は、ソウル中央地裁で続いている。

前支局長は、捜査段階から検察当局の聴取に応じ、必要な資料を提出した。一時帰国しても、今後の公判には出廷すると誓約し、逃亡や証拠隠滅はしないとも表明していた。産経新聞は、これらを保証していた。

それにもかかわらず、韓国政府は出国禁止措置を科し、8回にもわたって延長してきた。公権力の不当な行使と言うほかない。

検察当局は、出国禁止を解除した理由として、公判で重要な争点の審理が終了したことなどを挙げている。しかし、審理は前支局長が公判の都度、日本から出廷すれば可能だったろう。

公判で、前支局長側は、朴氏に処罰を求める意思があるかどうかの確認を求めている。

韓国では、被害者が加害者に対する処罰を求めないとの意思を示せば、名誉毀損罪は成立しない。朴氏は態度を明確にしていない。今後の対応が焦点となる。

この問題は、日韓間の外交にも影響を及ぼしている。日本側は外相会談などで再三、出国禁止解除を要請していた。

安倍首相は昨年1月の施政方針演説で、韓国について、「基本的な価値や利益を共有する、最も重要な隣国」と表現した。

だが、今年2月の施政方針演説では「価値観の共有」について、あえて言及しなかった。韓国では、民主主義の柱である「法の支配」が確立していないとの疑義が生じているためだという。

前支局長の問題が、一因になっていることは間違いない。

李明博前大統領の竹島訪問で日韓関係が悪化して以来、朴氏の度重なる反日的言動などで、韓国に対する日本国民の不信感は一段と強まっている。

今回の解除は、こじれた日韓関係を改善させるための方策としては不十分ではないか。

産経新聞 2015年04月15日

前支局長帰国 重ねて起訴撤回を求める

産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が帰国した。韓国法務省が前支局長に対する出国禁止措置を解除したことを受けたものだ。出国禁止は期限の延長を繰り返して8カ月を超え、15日に新たな期限が迫っていた。

措置の解除は遅きに失したが、ようやく当然の判断が行われたことになる。前支局長に出国を禁じられる理由はなかった。重ねて韓国の検察当局に求めたい。前支局長への起訴も撤回すべきである。

前支局長は、朴槿恵大統領に関するコラムをめぐり、名誉毀損(きそん)で在宅起訴され、公判中だ。帰国後もソウル中央地裁で行われている公判に出廷する。

これまでの公判でも前支局長は誠実に対応してきた。争点はコラムの公益性の有無にあり、隠蔽(いんぺい)すべき証拠はなく、逃亡の恐れはなかった。8カ月を超える出国禁止は、不当な措置だった。

そもそも報道に対し、公権力の行使で対処する起訴に正当性はあったのか。言論の自由を憲法で保障している民主国家としては極めて異様な判断だったといえる。

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