枝野行政刷新相 改革の停滞感打開を

朝日新聞 2010年02月11日

枝野氏起用 「刷新」するべきは何か

鳩山由紀夫首相が、枝野幸男・元民主党政調会長を行政刷新相に充てる人事に踏み切った。

首相は「国民のみなさんに、民主党に対する信頼を再び高めていくために、彼に陣頭指揮してもらいたい」と、その手腕に期待感を示した。

枝野氏は、昨年秋の「事業仕分け」で統括役を務め、担当閣僚だった仙谷由人国家戦略相を支えた人物だ。

この春には、独立行政法人や公益法人、特別会計を見直す事業仕分けの第2弾が控えている。仕分けでマニフェスト実現の財源を工面するのは至難の業だ。昨秋に続く二匹目のドジョウがいるとは限らない。

政策に明るく、経験も積んだ枝野氏のここでの起用は、順当といえる。

ただ、今回の人事の意味合いがそう単純でないのは言うまでもない。

枝野氏は党内で、小沢一郎幹事長と距離を置く有力政治家の一人だ。そのせいで、鳩山政権発足後、無役を余儀なくされたともささやかれてきた。小沢氏がかかわる土地取引事件については「身を引くことも含めて、けじめをつけることが必要」と主張している。

政治とカネの問題で政権への信頼は揺らぎ、内閣支持率は続落している。選挙、国会から政策にまで至る「小沢支配」「小沢依存」の見方が定着し、鳩山首相への逆風が強まる。

事件がひと区切りしたタイミングを見計らい、「非小沢」の枝野氏を起用することで、自分は小沢氏の言いなりではないと示したい。そんなねらいも、首相にあったのではないか。

肝心なのは、それが首相の「小沢離れ」を直ちに意味するわけではないということだ。

世論の多くは今、「小沢氏は幹事長を辞任すべし」としている。しかし、首相は小沢氏の続投を容認している。枝野氏の起用も、小沢氏の了解を得たうえでのことだ。

小沢氏が受け入れられる範囲内で、なんとか政権の再浮揚を探っているだけでは、と見られてもしかたない。

いま首相がなすべきなのは、小沢氏に国会の場で大方の納得のいく説明をするよう強く促すことである。不起訴は嫌疑が不十分だったからに過ぎず、潔白の証明ではない。説明責任を逃れる免罪符にはならない。

それができないのであれば、首相はいずれ幹事長更迭の決断に追い込まれることも覚悟しなければなるまい。

政権が負った傷は深い。ばんそうこうを張るだけで止血するのは難しいかもしれないが、そんなばんそうこうの役回りでは枝野氏も不本意だろう。

「刷新」するべきなのは、よどみつつある政権と民主党内の空気である。その一役を枝野氏に期待したい。もとより、その最終的な責めを負うのは首相以外にない。

毎日新聞 2010年02月11日

枝野行政刷新相 改革の停滞感打開を

政権浮揚の足がかりとなるだろうか。鳩山由紀夫首相は民主党中堅、45歳の枝野幸男元政調会長を行政刷新担当相に起用した。

首相と小沢一郎幹事長の資金管理団体を舞台とする事件が政権を直撃する中で鳩山内閣の支持率は落ち、肝心の政策調整に影響しかねない状態だ。党内で小沢氏と距離を置く勢力の代表格とも言える枝野氏の起用が、小沢氏に依存せず指導力を発揮しようとする首相の意欲の表れならば評価できる。枝野氏もおくせず、懸案の公益・独立行政法人改革に切りこむべきである。

今回の人事は、与野党からは一定の意外感をもって受け止められたはずだ。

民主党結党時から若手ホープとして「日のあたる道」を歩んできた枝野氏は、肝心の政権交代後は無役のままだった。行政刷新担当相の前任だった仙谷由人氏の引きで昨年、「事業仕分け」の仕切り役を務め脚光を浴びたが、その後内定したはずの首相補佐官への起用も、なかなか実現しなかった。枝野氏は党を仕切る小沢氏と一貫して距離を置いている。このため、首相の小沢氏への配慮がこうした処遇にも影響しているとみられていた。

それだけに、入閣は思い切った人事だ。政権のいわゆる「二重権力」問題は、首相らが過剰に小沢氏の意図を意識し、なかなか決断に踏み切れないことにむしろ問題がある。「反小沢」勢力の象徴である枝野氏が入閣し政務に忙殺されるのだから、小沢氏側にとってもあながち不利な展開ではあるまい。窮余の一策とはいえ、首相が政権運営に危機感を抱き、可能な限りの人材活用を図るのは、むしろ当然と言えよう。

枝野氏の責任の重さは言うまでもない。同氏が統括した10年度予算案の「事業仕分け」は確かに予算の透明さを増した点で、評価できる。だが実際のムダ削減効果には限界があり、財務省が運営を主導した、との批判もつきまとった。

首相は夏の参院選に向け独立行政法人や公益法人を対象とする事業仕分けを行い、政権浮揚につなげたい考えだ。両法人に官僚OBが代々天下りし、多額の国費が支出される既得権益の構造にどこまで切りこめるか。昨年の「仕分け」以上に国民から厳しく成果が吟味されることを、覚悟しなければならない。

「政治とカネ」をめぐり政権が揺らぐ中、首相から閣僚へのにらみが利かず、改革の目標もかすみがち、という深刻な停滞を鳩山内閣は呈しつつある。枝野氏の起用は巻き返しの端緒にはなり得るが、局面転換は容易でない。首相自らが、その先頭に立たなければならない。

読売新聞 2010年02月11日

枝野行政刷新相 政権浮揚への転機となるか

内閣支持率の低落に歯止めをかけ、政権浮揚への転機とすることができるだろうか。

鳩山首相が仙谷国家戦略相の行政刷新相兼務を解き、後任に民主党の枝野幸男元政調会長を起用した。

枝野氏は政策通のうえ、昨秋の行政刷新会議の事業仕分けで統括役を務めており、行政刷新相に適任との判断からだろう。

そもそも、藤井裕久前財務相の辞任、菅国家戦略相の財務相横滑りに伴い、仙谷氏が二つの重要閣僚ポストを兼務する体制には無理があった。仙谷氏は、新成長戦略の肉付けなど、国家戦略相の職務に専念することになる。

枝野氏は民主党内で、小沢幹事長と距離を置くグループに属する。小沢氏の資金管理団体の土地購入事件では、「身を引くことも含めてけじめを付けることが必要だ」と、小沢氏の責任に公然と言及している少数派だ。

首相とすれば、あえて「反小沢」で清新な印象のある枝野氏を登用することで、首相本人と小沢氏の「政治とカネ」の問題で傷ついた政権のイメージアップを図りたいのだろう。

小沢氏への権力集中を是正するとともに、自民党による「小沢独裁」批判をかわす狙いもあろう。反面、将来的には、小沢支持対反小沢という党内対立の火種となる恐れも否定できない。

枝野行政刷新相の当面の課題は、今春に予定される独立行政法人や公益法人を対象とする第2弾の事業仕分けである。

昨秋の事業仕分けは、政府予算の編成過程を透明化し、国民の関心を集めた。一方で、無駄な支出の節減という肝心な部分の成果は限定的にとどまった。

目先の費用対効果を重視するあまり、科学技術や一部の教育・文化の関連予算を大幅に削るよう提言したのも問題だった。国際競争力の確保など、中長期的で戦略的な視点が欠けていたためだ。

この(てつ)を踏んではなるまい。

独法や公益法人は、多数の官僚OBを受け入れ、そのパイプで割高な事業を各府省から受注する、という構図がある。役所と法人の癒着にメスを入れ、税金の無駄遣いを徹底的に排することが大切なのは言うまでもない。

だが、問答無用で官僚をたたき、予算を切るという、国民受けを狙った政治的パフォーマンスは慎むべきだ。枝野行政刷新相には、仕分け人やテーマの選定、仕分け作業の進行の仕方に、より丁寧な配慮と工夫が求められる。

産経新聞 2010年02月11日

枝野氏入閣 「行革に本腰」なら歓迎だ

鳩山政権の新たな行政刷新担当相に、民主党の枝野幸男元政調会長が就任した。

行政刷新相は、同党が政権公約の中心に据えてきた「予算の無駄削減」や「行政効率化」の先導役となる重要ポストで、もともと鳩山由紀夫首相が内閣の目玉の一つとして新設したものだ。

枝野氏は行政刷新会議の「事業仕分け」で統括役を務めた。派手なパフォーマンスが注目を浴びたが、仕分けを「恣意(しい)的に過ぎる」とした批判も寄せられた。

首相は「事業仕分けの第2弾をできるだけ早くやらなければならない」と述べており、即戦力が期待される中での枝野氏起用は当然の選択ともいえる。

また、小沢一郎幹事長と距離を置く枝野氏を入閣させたことは、鳩山首相の「小沢氏離れ」の意思表示とする見方も一部にはある。一方で「民主党に対する信頼を回復して高めていくため、彼に陣頭指揮してもらいたい」とする首相の発言も本音かもしれない。

首相としては、今夏の参院選に向け、公益・独立行政法人の事業仕分けが政権維持の大きなカギになるとみているようだ。知名度、人気度ともにある枝野氏に、日の当たるポストで働いてもらうことで内閣の改革姿勢をアピールし、政権浮揚につなげたい思惑があるのだろう。

だが、行政改革に対するこれまでの民主党の取り組みをみると、必ずしも公約通りに進んでいるとはいえない。昨年11月の約3千事業を対象とした仕分け作業の第1弾は、見かけの派手さに比べ、成果は少なかった。事業数ではわずか449にとどまり、金額的にも7千億円弱と、目標の3兆円には遠く及ばなかった。

行革の中核をなす公務員制度改革も、関連法案の国会上程はこれからだ。天下りや予算の無駄遣いの温床とされてきた公益・独立行政法人改革については、手つかず状態にあると言っていい。

しかも、公務員制度改革については仙谷由人国家戦略担当相が今後も引き続き担当するという。対象が異なるとはいえ、同じ行革関連の政策を2人の大臣が分担することで混乱は生じないのか。

枝野氏は就任後の記者会見で、「大変荷が重いがしっかりやる」と抱負を語った。求められているのはパフォーマンスではなく、成果である。覚悟をもって職務に当たってほしい。

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