米・キューバ 歴史的和解は着実に

朝日新聞 2015年04月14日

米国とキューバ 隣国復交へ賢明な一歩

歴史的な一歩である。世界の現代史でもまれなほど「近くて遠い」関係が今、やっと正常化に向かおうとしている。

オバマ米大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長が、中米パナマで会談した。両国の首脳としては実に59年ぶり。その決断を歓迎したい。

オバマ氏は、キューバはもはや脅威ではないとし、「冷戦は終わっているのだ」と語った。ベルリンの壁が崩れて四半世紀余り。当たり前の時代感覚を確認するまでにここまで歳月を要したことに慄然(りつぜん)とする。

遅きに失したとはいえ、このカリブ海の美しい島国と、世界最大の自由主義国の隣人同士が自由に交流できる関係を、一日も早く実現してほしい。

現実にはまだ、出発点についたに過ぎない。今後、関係を発展させるには、的確な判断と地道な努力が必要だ。

最大の関門は米国内にある。与野党の国内政争が外交の足かせになって久しい。野党共和党は、対キューバの経済制裁の解除にも反対している。

オバマ政権による米国の旧敵国との対話を野党が妨げようとする動きは、核開発をめぐるイランとの交渉も同じ構図だ。

来年の米大統領選への活動が活発化するにつれ、政治的に力をもつユダヤ系やキューバ系有権者の支持獲得を意識した政争が激化する可能性は大きい。

だが、米政界は、目先の政治ゲームのために米外交の長期展望を見失ってはならない。

中南米が米国を見る目はすでに変わり始めている。相変わらず強権を振り回しがちな米国への不信感は全体に強く、中国やロシアの進出もめだつ。

米国が西半球を「裏庭」のように扱う象徴が、小国キューバに対する意固地な敵視政策だったのである。今回の進展を反省材料とし、中南米全体との関係再構築を図るべきだ。

キューバの側も課題は多い。何より、国際社会との交流を増やすには、民主化が必要だ。キューバ共産党の一党体制のもとで反政府活動を厳しく取り締まる政治は改めねばならない。

世論調査によると、キューバ国民の間では、革命の英雄フィデル・カストロ氏と弟の評議会議長よりも、オバマ氏に対する評価の方が高い。自国の経済体制に満足する人は2割足らず。指導部は、政治経済を通じた国民の疲弊に向き合うべきだ。

キューバには、これから観光先、投資先としての潜在力があり、親日の国でもある。その未来を支えるために、日本もできる限り協力の道を探りたい。

毎日新聞 2015年04月14日

米・キューバ 歴史的和解は着実に

雪解けの温かさを確かに感じる会談だった。オバマ米大統領はキューバの体制変更は求めないと明言し、同国のカストロ国家評議会議長はオバマ大統領は正直な人だと称賛した。両国が1961年に断交してから初の首脳会談である。それだけでも歴史的だが、いわば未来志向で不一致や意見の相違を乗り越える方針を確認したことも高く評価したい。

読売新聞 2015年04月14日

米キューバ会談 相違点を抱えた両首脳の握手

政治体制や価値観の違いを抱えた中、関係改善が順調に進むのか。慎重に見守る必要がある。

オバマ米大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長がパナマ市で会談した。冷戦終結後も対立してきた両国の首脳会談は、1961年の断交以来、初めてだ。

オバマ氏は会談で、「新たな関係を築く」と強調した。「キューバは米国の脅威ではない」とも明言した。経済制裁で共産党政権を孤立化させ、体制転換を狙う従来路線を大きく転換するものだ。

カストロ氏は「あらゆることを進んで話し合う」と語り、長期の経済的苦境を脱するため、対米関係改善に期待をにじませた。

しかし、会談では、キューバに対する米国の「テロ支援国」指定の解除や、両国大使館の設置時期の合意には至らなかった。

国交正常化へのハードルの高さがうかがえる。正常化に不可欠な米国の対キューバ経済制裁の全面解除には、米議会の承認が必要だが、多数派の共和党を中心に、根強い慎重・反対論がある。

キューバの共産党独裁や、「表現の自由」への弾圧などの劣悪な人権状況を問題視している。

オバマ氏は会談で、「民主主義と人権に関する懸念を提起し続ける」と語った。

カストロ氏は「多くの相違があるのは事実。忍耐が必要だ」と応じた。経済改革は進めていても、政治体制の改革には時間を要するとの考えを示したものだ。

キューバでは、強いカリスマ性で長期独裁政権を率いたフィデル・カストロ前議長が退き、弟の現議長も83歳と高齢だ。「カストロ後」の体制の行方は見えない。

指導部には、国内の不安定化への警戒感が強い。だが、対米関係の正常化を目指すなら、政治改革を避けて通ることはできまい。

オバマ氏は首脳会談後、「米キューバ関係だけでなく、地域全体で協力が拡大する転換点になると楽観している」とも語った。

米国が伝統的に「裏庭」とみなす中南米やカリブ海で近年、中国の影響力が急速に拡大している現実を踏まえた発言だろう。

ニカラグアは中国との国交がないにもかかわらず、昨年末、約280キロの新運河の建設が中国主導で始まった。南米産の資源などを中国へより短時間で運ぶためという。建設費は約6兆円に上る。

米国にとって、キューバとの関係正常化は、この地域で健全な指導力を回復できるかどうかの重要な試金石と言えよう。

産経新聞 2015年04月13日

米・キューバ会談 歴史的転換を歓迎したい

冷戦の名残を拭う歴史的な転換点として歓迎したい。

オバマ米大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長が、半世紀以上の国交断絶をはさんで会談した。交渉を加速させ、早急に国交正常化を実現してほしい。

オバマ氏は「新たなページを開いた」と述べ、カストロ氏は「忍耐も必要だ。同意できることも、できないこともある」と率直な姿勢を示した。

両国は、昨年12月に国交正常化交渉開始で合意し、事務レベル協議を経て今月9日には外相会談が開かれた。

オバマ大統領には、シリア、ウクライナ情勢への対応など、外交上の失点をキューバとの和解で挽回したい思惑がある。中南米で影響力を強める中国を牽制(けんせい)する意図をもっているともいわれる。

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