親の監督責任 限界に配慮した最高裁

毎日新聞 2015年04月10日

親の監督責任 限界に配慮した最高裁

小学生が校庭でサッカーの練習中に蹴った球が道路上に転がって交通事故につながった。保護者の親は責任を負わなければならないか−−。

読売新聞 2015年04月11日

親の監督責任 最高裁が免除基準を示した

子供が通常は危険性のない行為で偶然に事故を起こしても、原則として親の監督責任は免除される――。社会通念に沿った初判断が示された。

小学校の校庭で、6年生の男児が蹴ったサッカーボールが道路に飛び出し、避けようとしたオートバイの男性が転倒した。高齢の男性は足の骨折などで入院し、1年4か月後に死亡した。

この事故で、最高裁は、男児の両親の損害賠償責任を否定する判決を言い渡した。「校庭の日常的な使用方法であり、事故を具体的に予想できる事情はない」といった理由からだ。

司法判断の流れを大きく変える考え方である。

民法は、法的な責任能力を欠く子供などが事故を起こした場合、両親ら監督義務者が賠償責任を負うと定めている。おおむね小学生以下が該当するとされる。

子供が起こした事故によって親が賠償を求められた訴訟で、裁判所はほぼ例外なく親の責任を認定してきた。被害者救済を重視する姿勢が背景にある。

今回の訴訟でも、1審の大阪地裁、2審の大阪高裁は、ともに男児の過失を認定し、両親に賠償を命じた。賠償額は2審判決で約1180万円に上った。

男児は、学校が設置したサッカーゴールを狙ってボールを蹴った。両親は、こうした状況で起きた事故までも、親に賠償責任が及ぶのなら、「常に子供を監視下に置くか、屋外での球技を禁止するほかない」と主張した。

確かに、目の届かない場所で偶発的に起きるトラブルを、親が防ぐのは難しい。最高裁が「監督義務を怠ったとは言えない」と結論付けたのは、うなずける。

留意すべきは、最高裁が、どんな場合にも親の監督義務を免除したわけではない点だ。

人混みの中を自転車で暴走するなど、子供が危険な行為によって事故を起こした際には、親が責任を問われるのは当然である。

親の免責を認める司法判断が増えれば、被害者救済の道は狭まる。被害防止に向けた取り組みが、より重要になろう。

今回、学校側の施設管理上の責任は問われなかった。だが、ゴールの設置場所を道路から離すなど、対応次第では事故を防げた可能性もあったのではないか。

ボール遊びを禁止する公園が多い中、時間や場所を限定して認めているケースもある。子供が伸び伸びと遊べるよう、大人が事故防止に知恵を絞りたい。

産経新聞 2015年04月10日

親の賠償責任 「日常感覚」に沿う判断だ

多くの人が、「それはそうだろう」と納得した判決ではないか。

11歳の児童が蹴ったサッカーボールが校庭を飛び出し、これを避けようとしてバイクで転倒、負傷した85歳の男性が、入院先の病院で誤嚥(ごえん)性肺炎のため亡くなった。

1、2審は児童の両親が監督責任を怠ったとして1千万円超の賠償を命じたが、最高裁は「通常は危険でない行為でたまたま人を死傷させた場合、親は賠償責任を負わない」などとして、原判決を破棄した。

不幸にして亡くなった男性は大変気の毒である。だが、被害救済を重視するあまり、無条件に保護者の責任を認める判断は、国民の理解を得られまい。

裁判員制度は、国民の司法参加によりその日常感覚や常識などを裁判に反映することなどを目的に導入された。損害賠償訴訟は制度の対象ではないが、すべての司法判断が国民の常識と乖離(かいり)すべきでないことは当然である。

児童は放課後、開放された校庭で友人らとゴールに向け、フリーキックの練習をしていた。

ゴールの後方10メートルには門扉があり、その外側に道路があった。1、2審判決は、ゴールの後方には道路があり、ゴールに向けて蹴らないよう指導する監督義務があったなどとして、両親に賠償金の支払いを命じていた。

ゴールに向けてボールを蹴らなくては、競技が成り立たない。ゴールと道路の位置関係に問題があるとすれば、両親の監督責任ではなく、小学校の施設管理を問うべきだったろう。

平成25年8月には名古屋地裁で、認知症の91歳男性がJR東海の電車にはねられ死亡した事故で、JR側が遺族に振り替え輸送代など損害賠償を求め、720万円の支払いが命じられた。

男性には徘徊(はいかい)の症状があり、85歳の妻らが介護していたが、目を離したわずかの間に男性は自宅を出て、線路内に立ち入った。

2審で賠償額は半分に減額されたが、大きすぎる責任と隣り合わせでは、在宅介護が立ちゆかなくなる恐れもある。今回の最高裁の判決は、認知症患者の家族の責任範囲や賠償義務など、今後の判断にも影響を与えるだろう。

子供が外で遊べない、認知症高齢者の閉じ込めといった悪習を助長するような結果を招くことは、司法の本意ではないはずだ。

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