菅-翁長会談 対話継続で一致点を探れ

朝日新聞 2015年04月10日

日米防衛指針 「世界の自衛隊」ですか

「米軍と自衛隊が切れ目なく行動する機会が増える。アジア太平洋、世界中で対応することがこれで可能になる」

来日したカーター米国防長官が強調したのは「世界中」という言葉だった。今月末に予定される日米防衛協力のための指針(ガイドライン)改定の意義を訴えた。

実現すれば、自衛隊が世界各地で米軍の活動を補完することになる。日米同盟の大きな質的転換と言っていい。

米国は財政難で軍事費を抑えたい。日本は対米協力を強めて抑止力の強化を図りたい――。日米の思惑が一致し、新ガイドラインは日米のグローバルな協力を打ち出す見通しだ。

旧ソ連の日本侵攻を想定したのが、1978年のガイドライン。朝鮮半島危機など周辺事態を想定したのが97年のガイドライン。今回は地理的制約を取り払い、宇宙やサイバー空間も協力対象となる。

ここまで拡大すると、もはや「防衛協力」という言葉自体が適切かどうかも疑わしい。

「脅威が世界のどの地域において発生しても我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る」(昨年7月の閣議決定)という考え方に基づくのだろうが、日本防衛を主眼としたレベルを踏み越え、世界規模で活動する米軍への「軍事協力」という意味合いが強まっている。

日米ガイドラインは両政府の「政策文書」という位置づけであり、制度上、国会承認は必要ない。しかし、実質的な意味は大きく、安全保障法制のベースでもある。本格的な国会論戦も始まっていないのに、これだけの大転換に踏み切れば、安倍政権の姿勢が問われる。

しかも、中東ホルムズ海峡での機雷除去を停戦前でも可能にするため、新ガイドラインで地理的な限定を外す方針だ。集団的自衛権行使の新要件にあてはまるかどうかで公明党と見解が割れるテーマである。与党内の議論さえ煮詰まらないまま対米公約に踏み切るようでは、国内の広い理解は得られまい。

「中東、インド洋、地球の裏側は考えられない」。周辺事態についての国会審議で当時の小渕首相は述べたが、「地球の裏側」も活動範囲となるだろう。他国軍も加わった共同訓練が増え、中東やインド洋、南シナ海などで日本の軍事的な存在感が高まることが想定される。

専守防衛を掲げる自衛隊の変質をもたらし、防衛費の拡大を伴う可能性がある。日米合意を急ぐあまり、国内の議論を置き去りにしてはならない。

毎日新聞 2015年04月09日

日米防衛協力 強化一辺倒ではなく

米国のカーター国防長官が初来日し、中谷元防衛相らと会談した。カーター氏は、日本の安保法制整備について、日米の防衛協力が世界規模に広がると位置づけて歓迎、支持する考えを示した。両氏は自衛隊と米軍の役割分担を定めた日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定作業を加速させることで一致した。

読売新聞 2015年04月09日

日米防衛相会談 同盟の抑止力高める新指針に

中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などで、日米同盟の重要性は一層増している。防衛協力を多角的に強化し、抑止力を高めたい。

カーター米国防長官が2月の就任後初めて来日し、中谷防衛相と会談した。今月下旬の新たな日米防衛協力の指針(ガイドライン)の策定に向けて、作業を急ぐ方針で合意した。

カーター氏は、新指針について「日米同盟に大きな機会を提供する」と強調した。中谷氏も「歴史的な取り組みだ」と語った。

新指針は、集団的自衛権の行使を限定容認する政府の新見解を反映させ、自衛隊と米軍の協力を拡大するものだ。平時から有事まで切れ目のない共同対処を可能にすることが肝要である。

自衛隊は、米艦防護や米軍への後方支援を拡充する。米軍も、より早い段階から日本の安全確保に関与する。双方向の協力拡大により、同盟の実効性を向上させなければならない。

会談では、中国を念頭に、東シナ海での「力による現状変更」に反対することで一致した。カーター氏は、日米安保条約に基づく米国の日本防衛の対象に尖閣諸島が含まれるとの立場を表明した。

会談後の記者会見では、中国による南シナ海の岩礁の埋め立てなどについて「軍事化には断固反対する」と述べた。

カーター氏は国防副長官当時、アジア太平洋地域を重視するオバマ政権の「リバランス(再均衡)政策」の策定に深く関わった。

中国の軍事的な台頭に対して日米両国が効果的に対応するには、閣僚同士が緊密に意思疎通する体制の構築が欠かせない。東南アジアの関係国とも連携し、中国に自制と協調を働きかけるべきだ。

会談では、米軍普天間飛行場の辺野古移設について、危険な現状の固定化を回避する「唯一の解決策」であると再確認し、着実に進める方針で一致した。

カーター氏は、辺野古移設を含む米軍再編が「同盟を継続するうえで極めて重要だ」と語った。

在日米軍の抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担を大幅に軽減するため、辺野古移設や在沖縄海兵隊のグアム移転などの計画を確実に履行することが大切だ。

カーター氏はこの後、韓国を訪問する。核・弾道ミサイル開発を続ける北朝鮮の軍事的挑発を抑止するには、日米韓3か国の結束が不可欠である。日韓両国は、慰安婦問題などの懸案を乗り越え、安全保障協力を深めるべきだ。

産経新聞 2015年04月06日

菅-翁長会談 対話継続で一致点を探れ

パイプが途絶えていた菅義偉官房長官と沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事の会談がようやく実現した。

焦点である米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐる主張はすれ違いに終わった。それでも、遠く離れて批判しあうのではなく、顔を見ながら言葉を交わした意味は小さくないはずである。

会談で菅氏は、「日米同盟の抑止力の維持や(普天間の)危険性除去を考えたとき、辺野古移設が唯一の解決策だ」と述べ、移設工事を進めていく方針を伝えた。

翁長氏は、「危険除去のために(沖縄に)負担しろという話をすること自体が政治の堕落だ」と語り、辺野古を含む県内移設に反対した。

立場の開きは大きいが、両氏はともに話し合いを続ける考えは示した。対話を重ね、打開の道を探る政治家としての務めを果たしてもらいたい。

翁長氏は昨年11月の知事当選以降、上京を重ねていたが、安倍晋三首相や菅氏との会談は実現せず、それが、政府と沖縄の意思疎通の欠如を印象付けてきた。

今回は、米軍基地の一部返還に伴う行事への菅氏の出席を契機に会談が設定された。政府首脳が沖縄に足を運び、初会談が実現したのは良かったのではないか。

双方の主張が直ちに変わることはないだろう。特に、移設阻止を掲げて当選した翁長氏にとって、方針転換は難しい。しかし、対話を通じて一致点を見いだす努力をあきらめるべきでない。

翁長氏が要望した安倍首相との面会も、できるだけ早く実現する必要がある。重要なのは、普天間の危険性がこのまま放置して良いのかについて、腹を割って話し合えるかだ。

米側も「世界一危険な基地」と認める普天間の早期返還の実現には、国にも沖縄にも責任がある。代案を示さないまま辺野古移設を阻めば、普天間の危険性が固定化される。翁長氏には、その点をどう考えるのか、さらに詳しく語ってもらいたい。

会談では、抑止力における沖縄の地政学的な意味合いも議論された。抑止力の度合いを左右する辺野古移設の行方を、尖閣諸島をねらう中国が注視していることを忘れてはなるまい。

辺野古問題と併せ、基地負担の軽減策や経済振興策を円滑に話し合える環境の構築も急がれる。

朝日新聞 2015年04月09日

日米防衛会談 もっと沖縄を語れ

沖縄の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、政府と沖縄の対立が先鋭化している。そのなかで日米防衛相会談が何事もなかったかのように進められたのは、一体どういうことなのか。

来日中のカーター米国防長官と中谷元・防衛相による会談がきのう防衛省で開かれた。

今月末に予定される日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定に向け、詰めの協議を進めていくことで一致。日米協力と安保法制について比較的長めに話し、政府と沖縄の意見の違いについて詳しいやりとりはなかったという。

菅義偉官房長官が沖縄を訪問し、翁長雄志県知事と会談したばかり。日米安保と負担の問題を、両国間で議論する絶好の機会だったはずだ。なぜ、もっと沖縄の現状を語らないのか。

中谷氏は共同会見で「辺野古への移設については普天間の固定化は避けなければならない。これが大前提であり、政府と地元の共通認識だ」と述べたが、誤解を招く表現だ。

翁長氏が菅氏に伝えたのは「辺野古の新基地は絶対に建設することが出来ない」ということだった。「辺野古が出来なければ本当に普天間は固定化されるのか」とも問いかけた。世界一危険な基地だと認識しながら、それを放置できるのか、という疑問である。これだけ考え方に差があるのに、共通認識だと説明するのは無理がある。

翁長氏が当選した昨年11月の県知事選が分水嶺(ぶんすいれい)だった。政府はまず、そのことを認識しなければならない。もはや地元の移設拒否の民意は逆戻りできないところに来ている。

政府は反対の強さを見誤っているのではないか。かつて沖縄県知事や名護市長が条件付きで辺野古移設を認めたことがあるが、そのときから局面は大きく転換している。埋め立て工事を強行すれば、県民の心に決定的な傷痕を残すだろう。

これだけ米軍基地が集中している沖縄で、「ヤマト(本土)対沖縄」の構図が鮮明になり、さらに反米感情が高まれば、危機管理の観点からも大きな問題になる。そもそも、それを避けるための普天間返還ではなかったか。県民の声に背を向け、米国ばかりに目を向ける姿勢は問題の解決につながらない。

安全保障は民意の支えなしに成り立たない。新ガイドラインも安保法制も、しかりである。特に沖縄はその試金石となる。日本政府は沖縄の現実を正面から受け止め、米政府と実現可能な対応策を協議すべきだ。

毎日新聞 2015年04月07日

菅・翁長会談 沖縄が示した強い意思

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐって、菅義偉官房長官と翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事が初めて会談した。知事就任から4カ月もかかったのは残念だが、この会談を第一歩として対話を重ね、相互理解を深めてほしい。

読売新聞 2015年04月07日

菅・翁長会談 批判にも相手への配慮が要る

政府を批判するだけでは、問題は解決しない。現状を改善する具体策を探る努力と、建設的な議論が欠かせない。

菅官房長官が那覇市で沖縄県の翁長雄志知事と初めて会談した。米軍普天間飛行場の辺野古移設について「唯一の解決策だ」と述べるとともに、沖縄振興予算の確保や基地負担軽減への努力を約束し、理解を求めた。

翁長知事は「新基地は絶対に建設できない」と反対する考えを強調した。会談は平行線だったが、対話の継続で一致したことは意味がある。時間はかかっても、意思疎通を重ね、信頼関係を築く中で接点を模索することが大切だ。

疑問なのは、翁長知事が激しい政府批判に終始したことだ。

普天間飛行場について、「(強制接収で土地を)自ら奪っておいて、(辺野古移設以外の)代替案を持っているのか、という話をすること自体、日本の政治の堕落だ」などと非難した。

米国が沖縄で民有地を軍用地として強制接収したのは事実だが、普天間飛行場の返還は1996年の日米合意以来、一貫して県内移設が前提だった。翁長知事も県議や那覇市長時代には長年、辺野古移設を容認していた。

移設が実現しない限り、普天間飛行場の危険な現状が継続する。沖縄県内にも一定の容認論がある辺野古移設を追求することこそが「政治」の役割ではないか。

翁長知事は、「移設を粛々と進める」との菅氏の発言を「上から目線」と批判し、「『粛々』という言葉を使えば使うほど、県民の怒りは増幅する」とも語った。

菅氏は翌日、「不快な思いを与えたのであれば」と述べ、「粛々と進める」という表現は使わないと明言した。「粛々」が「上から目線」かどうかは見方が分かれようが、相手に対する配慮は建設的な協議に不可欠である。

翁長知事も、「普天間飛行場の早期返還」の実現を目指すなら、挑発的な言葉を避けて、冷静に議論してもらいたい。

住宅密集地にある普天間飛行場の辺野古沿岸部への移設は、騒音の影響や重大事故の危険性を大幅に軽減する。埋め立て面積は現飛行場の3分の1にとどまる。

辺野古移設は、県南部の米軍施設の約7割を返還する計画の中核だ。中国の活発な海洋進出で在沖縄米軍の重要性が高まる中、最も現実的な問題解決策でもある。

政府は、関係者の理解を広げながら、辺野古移設の作業を計画通り進めることが重要である。

朝日新聞 2015年04月06日

菅・翁長会談 「粛々と」ではすまない

積もり積もったものをはき出さずにはいられない。これまでの政府の対応を「政治の堕落」とまで言い切った翁長雄志沖縄県知事には、そんな強い思いがあったのだろう。

菅義偉官房長官との初の会談に臨んだ翁長氏の言葉を、国民全体で受け止めたい。

米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐる両者の主張の隔たりは大きい。会談で菅氏は「今工事を粛々と進めている」と言い、翁長氏は「辺野古の新基地は絶対に建設できません」と、平行線のままだった。歩み寄りの難しさを改めて浮かび上がらせた。

菅氏は「日米同盟の抑止力維持、(普天間の)危険除去を考えたときに辺野古移設は唯一の解決策」「辺野古移設を断念することは、普天間の固定化につながる」と繰り返した。

翁長氏は米軍の「銃剣とブルドーザー」による強制的な基地建設の歴史を振り返り、「県民に対して大変な苦しみを今日まで与えて、普天間の危険性除去のために沖縄が負担しろと。それは日本の国の政治の堕落ではないか」と追及した。

戦後70年間、沖縄の米軍基地撤去のために、政府がどれほどの努力をしてきたのか。日本の安全保障政策は常に基地負担にあえぐ沖縄の犠牲の上で成り立ってきた現実を、今こそ国民に見つめてほしい。翁長氏の指摘は、そんな重い問いかけだととらえるべきだ。

会談は、菅氏が米軍キャンプ瑞慶覧(ずけらん)の西普天間住宅地区の返還式典に出席するタイミングで設定された。政権には基地負担軽減に取り組む姿勢をアピールする狙いがあった。自民党内からも丁寧な対応を求める批判が出始め、統一地方選を前に政権のイメージ悪化を食い止めたいという思惑も働いたのだろう。

だが沖縄県内では「安倍首相の訪米を控え、沖縄側の意見は聞いたというアリバイにしようとしているのでは」と、今回の会談自体に懐疑的な声が出ている。信頼関係が壊れているなかで、県民の意思に誠実に向き合えたのだろうか。

菅氏は「これから国と沖縄県が話し合いを進めていく第一歩になった」と語った。翁長氏も応じる意向だ。これまで「聞く耳持たぬ」という対応を続けてきた政府は、沖縄からの苦言にとことん耳を傾けるところからやり直すべきだろう。

そのためにまず、辺野古で進める作業を中止すること。それが話し合いに臨む最低限のルールではないか。もはや「粛々と」ではすまない。

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