異次元緩和2年 柔軟な政策へ転換を

朝日新聞 2015年04月04日

黒田緩和2年 拡大続行よりやめ方を

黒田東彦総裁が率いる日本銀行が、かつてない規模の巨額のお金を世の中に流し込む「異次元緩和」を導入して4日で丸2年となる。

日銀は2年間で世の中に投じるお金の量を290兆円まで倍増させた。量を増やしてお金の価値を下げれば、モノやサービスの値段が上がる。そうなると「今のうちに買っておこう」と考える消費者が増えて経済が活気づくにちがいない――そんなシナリオを描いてきた。

しかし、「2年で物価上昇2%」という目標は達成できなかった。日銀は2%実現のために今後も毎年80兆円ずつ緩和額をふやすと表明している。それ以上の緩和も市場では取りざたされている。

だがこの処方箋(せん)は本当に正しいのだろうか。

株高や輸出産業の復活のような「成果」も一部にはみられる。だが、広く日本経済全体を見渡せば、効果が行き渡っているとはいいにくい。地方や中小企業、非正社員にまで恩恵が行き届いているという姿は今のところみられないからだ。

経済同友会が今春闘の方針を経営者にたずねたところ、「ベースアップしない」「物価上昇に満たない賃上げをする」という回答が半数近くにのぼった。依然として賃上げに慎重な経営者が多いようだ。増税や円安などがもたらした物価上昇に賃上げが追いつかず、実質的な生活改善に至っていないのである。

異次元緩和を支持する安倍政権は株高効果も強調している。ただこの効果は経済全体への波及がまだ乏しい。しかも、巨大な緩和マネーが演出したいわば「資産バブル」はいずれはじける可能性もある。

異次元緩和が事実上、日銀による財政ファイナンス(日銀資金で政府予算を工面する状態)となってしまっている問題もある。いまや緩和マネーが政府の新たな借金をまかなっている状態だ。安倍政権が公共事業を増やし、地方創生予算で自治体に気前よく配れるのもそのおかげだ。日銀にもたれかかって膨張した財政が持続的なものと言えるだろうか。

異次元緩和の出口政策も心配されている。緩和をやめれば、株高と超低金利に支えられている金融市場に大きなショックを与えることは避けられない。

日本経済の底流に大きなリスクが蓄積されている。国民に巨大なコストを負わせぬよう、市場のショックを和らげるよう、今から異次元緩和の終了に向けて、その方法を検討するべきである。

毎日新聞 2015年04月04日

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