イラン核合意 軍事転用阻止へ重要な段階だ

朝日新聞 2015年04月04日

イラン核問題 中東安定へ希望つなげ

イランの核問題は、中東情勢のみならず、核なき世界をめざす国際努力や、世界の安保・経済を占う喫緊の課題である。

国際社会が成否を凝視してきた欧米など6カ国とイランとの交渉が、大枠の合意に達した。決裂を避け、希望をつないだ双方の努力を評価したい。

これから細部を詰め、6月末までに最終合意をめざす。長年の宿敵同士だった米国とイラン双方には依然抵抗が強く、予断を許さないが、最終合意の実現に全力を注いでほしい。

近年の中東の混乱の背景には、イランと米国・イスラエルの根深い対立が影を落としてきた。1979年の革命以来、イスラム教シーア派の政教一致体制をとるイランは、スンニ派の地域大国サウジアラビアなどとも覇権を争っている。

そのイランが核武装すれば、対抗する周辺国が連鎖的に核開発に走りかねない。イスラエルは軍事行動も辞さない構えで、中東の油田地域全体を動乱に陥れる恐れがぬぐえない。

今回の合意は、イランの低濃縮ウランの量や、濃縮に使う遠心分離器を大幅に減らし、核兵器の材料を1年以内にはつくれないようにした。核施設への国際機関の立ち入りも認め、合意の履行を確認しつつ、米欧側は経済制裁を緩める。

最終合意になれば、これまで孤立してきたイランが国際社会に復帰する足がかりとなろう。イランの影響力が強いイラクやシリア、イエメンの紛争収拾の模索にも追い風となり得る。

しかし、米国では野党共和党が、そしてイランでは保守派がそれぞれ妥協に反対している。強硬姿勢を崩さないイスラエルのネタニヤフ政権や、イランへの不信感を募らすサウジの抵抗も重大な不安材料だ。

どの関係者も、中東と世界の未来を見すえた理性的な熟慮が必要である。これ以上、中東で流血と難民の悲劇を深めてはならない。危うい核のドミノを広げてはならない。小異を捨てて交渉を進め、長い目で見た安定を視野に妥結を図るべきだ。

かつて米国を「悪魔」呼ばわりしたイランでは今回、オバマ大統領の合意発表を国内にテレビで生中継する異例の措置をとった。長年の不信感が一気に氷解することはあり得ないが、この歩み寄りの歴史的な機運を逃してはなるまい。

日本も到底、無関心ではいられない。ペルシャ湾への自衛隊派遣など中東での軍事論議をする前に、主要国が挑んでいる難題の外交解決に何とか貢献する道こそ探るべきではないか。

毎日新聞 2015年04月05日

イラン核協議 これからが正念場だ

完璧な合意にはほど遠いが、確かに前進した。イランの核開発をめぐる同国と欧米など6カ国の枠組み合意である。6月末が期限の包括合意が成れば、2002年から世界の不安定要因だったイランの核問題は、ひとまず決着を見ることになる。

読売新聞 2015年04月04日

イラン核合意 軍事転用阻止へ重要な段階だ

中東における核拡散の阻止に向けた、重要な一里塚と評価できる。

2002年に発覚したイランの核開発疑惑を巡る同国と米英仏独露中の協議が、最終合意文書の「枠組み」について、ようやく合意した。

イランに平和目的のウラン濃縮の権利を一定程度認めつつ、核兵器化を防ぐため、開発能力を大幅に制限することが柱である。

最終合意から15年間、イランは濃縮度3・67%超の濃縮ウランを生産しない。遠心分離器の保有数を10年間、現有の3分の1の6104基に減らす。新たな濃縮施設は建設せず、重水炉は軍事転用を防ぐため、設計変更する。

これにより、イランが核兵器製造に着手しても、完成までの期間を現状の2~3か月から1年以上に延ばすことができるという。

国際原子力機関(IAEA)による核関連施設の査察の強化について、イランが受け入れたことも、大きな前進である。

秘密裏に核兵器開発を進めていた疑いが強いイランを、国際社会が継続的に監視する仕組みを構築する意義は小さくない。

国際社会が06年以来継続している金融、貿易面などの長期制裁に伴う経済の疲弊が、イランに歩み寄りを促した。制裁は、合意の履行に応じて、段階的に解除される見通しだ。ただ、具体的な手順は依然として、不透明である。

欧米などとイランは、6月末を期限とする最終的な包括合意を確実にまとめることが大切だ。

イランの核開発能力の低減と制裁解除、IAEAの査察など、合意を履行する行程表について、精力的に協議を進め、残された課題の細部を詰める必要がある。

注目されるのは、オバマ米大統領が「イランとの歴史的な了解」と強調した両国の接近だ。

1979年のホメイニ革命を機に両国関係は悪化し、今なお断交状態が続く。だが、中東が混乱する中で、イランは国の一体性を保ち、周辺国にも影響力を持つ。

米国にとって、過激派組織「イスラム国」の掃討だけでなく、シリアやイエメンの内戦収拾でも、イランの協力はカギを握る。

気がかりなのは、イランの役割拡大に対し、米国の同盟国が強い警戒感を示していることだ。

イスラエルのネタニヤフ首相は核合意について「イスラエルの存続を脅かす」と反発した。サウジアラビアは、イランと同等の核開発に着手するという。

米国には、バランスの取れた中東政策が求められている。

産経新聞 2015年04月05日

イラン核協議 抜け道許さぬ合意めざせ

米欧など6カ国とイランは、イランの核開発能力を制限する枠組みで合意した。

イランがウラン濃縮に使う遠心分離機を3分の1に減らし、核開発を10~15年にわたり制限するなどの内容で、6月末の最終合意を目指す。

イランによる核武装の懸念を遠ざける外交解決への、重要な一歩として歓迎したい。しかし、技術的な詳細を詰める今後の交渉はさらに困難が予想され、楽観は禁物だ。

6カ国側は、イランに抜け道を許さない包括的な合意の実現に全力を挙げてほしい。

核開発やテロ支援問題で、国際社会がイランに抱く不信感は根強い。経済制裁の全面解除を狙うイランは、核疑惑の払拭なくして国際社会への復帰はあり得ないことを、改めて自覚すべきだ。

枠組み合意で、低濃縮ウラン保有量の大幅削減や核開発の制限期間などをめぐり、イランが6カ国側の要求をおおむね受け入れた点は評価できる。

だが、合意による規制がほぼなくなる15年後に、イランが核開発を再開させる余地は残る。イスラエルのネタニヤフ首相は「イランの核開発計画を正当化するものだ」と強く反発した。米議会の共和党にも批判が強い。

米国をはじめとする6カ国側は、イスラエルなどの懸念にも配慮して慎重に交渉を進めてゆく必要がある。

核拡散防止条約(NPT)に加盟するイランは核開発はあくまで平和利用が目的と主張するが、国際原子力機関(IAEA)は、イランが過去に核兵器開発を進めていたとの疑いを捨てていない。

イランは今回、これまで拒否してきた軍事施設への査察も原則的には受け入れたものの、その範囲については合意していない。

無条件かつ全面的な査察は最終合意の信頼性確保に不可欠だ。妥協は決して許されない。

イラクにおける過激組織「イスラム国」掃討作戦では米国とイランの利害が一致し、イスラム教シーア派の地域大国イランの重要性が増している。サウジアラビアなどスンニ派の親米アラブ産油国が警戒を強めるのも当然だ。

オバマ米政権には難しい局面だ。サウジなどには核協議への理解を求めつつ、イランの核兵器開発を確実に阻止し、中東地域の安定化につなげてもらいたい。

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