統一地方選 地域の将来が問われる

朝日新聞 2015年03月26日

統一地方選 「消滅危機」をはね返せ

きょう、全国10の道県知事選が告示され、統一地方選が始まる。4月12日と26日の2回にわけて、全国で1千近くの選挙が行われる。

知事選では、北海道と大分で自・公の与党と民主党など野党が推す候補らによる対決となる。1月の佐賀知事選の農協改革のように、安倍政権の政策が争点となった知事選で敗北が続いた与党が踏ん張るか、先の衆院選で振るわなかった民主党が巻き返すかが注目される。

一方、自治体の半数が「消滅可能性都市」になるとの民間研究組織の報告が発表され、首相が地方にも知恵を出すよう求める「地方創生」を打ち出してから初めての統一選だ。

この状況をどう受け止め、未来にどう生かしていくのか。まさに自治の真価が問われる選挙となる。

統一選は回を追うごとに低調になっている。昭和30年代までは80%前後だった各選挙の投票率は右肩下がりで、4年前の前回は50%前後に落ちた。

無投票も目立つ。前回の無投票当選者の割合は市長17%、町村長47・9%、道府県議17・6%、町村議20・2%。町村部での高さが目立つ。候補者が定数よりわずかに多い議員選挙も含めれば、無風状態はさらに広がっていると見られる。

自治体のかじ取りをできる人材が少ない、意欲はあっても職を捨てて立候補するリスクはとりにくい――。長らく指摘されてきた問題である。

住民との垣根を低くするため、夜間議会や報告会を開くといった取り組みも増えてきた。だが、議会を通じて住民が自治にもっと参加していくには、抜本的な改革が必要だ。

例えば、1人の有権者が複数票を投じる「制限連記制」を導入するなど、女性や若者でも当選しやすい選挙制度にする。夜間や休日を定例会にしてサラリーマンでも議員になりやすくする。住民が議会で直接発言できる機会を増やす。有識者からはこんな提案が出ている。

要は議会を一部の「プロ」だけに独占させないことだ。そうすれば、政務活動費を特権のように浪費することもできなくなるはずだ。

もちろん、一挙に進まない現実がある。だが、「消滅可能性」の深刻な危機は、政府の振り付けのもと役所主導で進められてきた「おまかせ自治」を改めるチャンスではないか。

そんな志をもった候補者は、あなたの地元にはいないだろうか。短い選挙期間だが、じっくりと見極めてみたい。

毎日新聞 2015年03月26日

統一地方選 地域の将来が問われる

統一地方選が26日スタートする。同日告示される10道県知事選など全国約980の選挙が対象で、4月12、26両日に投票が行われる。

読売新聞 2015年03月27日

統一地方選 地域再生の処方箋を論じたい

地方の人口減少にどう歯止めをかけ、いかに活性化させるのか。その処方箋を具体的に論じ、考える機会としたい。

北海道、神奈川など10道県の知事選が告示され、4年に1度の統一地方選が始まった。

41道府県議選なども順次、告示され、4月12日に投開票される。後半戦は、市区町村長・議員選で、26日が投票日となる。

全国の半数の自治体が将来的に「消滅」する恐れがあるとの民間推計を踏まえ、安倍政権は昨年末、「地方創生」の総合戦略をまとめた。各自治体も、それぞれの戦略を15年度中に策定する。

若者が地方にとどまり、安心して子育てをするには、雇用の確保や育児支援の充実が欠かせない。医療や教育、産業振興、防災なども自治体の重要な役割だ。

地域の実情を踏まえ、優先すべき政策は何か。各候補者は積極的に論戦を展開すべきである。

地方自治は、首長と議員の「二元代表制」だ。だが、議会は、審議が形骸化し、「首長の追認機関」と揶揄やゆされることも多い。

昨年は、政務活動費の不自然な使途を問われて号泣した兵庫県議や、セクハラのヤジを飛ばした東京都議らが強く批判された。

議員選では、候補の能力や資質が厳しく問われる。自らの名前を連呼したり、抽象的に「改革」を唱えたりするだけでは困る。有権者の眼力も試される。

統一地方選の投票率は低下傾向が続く。前回11年の道府県議選では初めて5割を下回った。

無投票も増えている。昨年の地方選では、首長選の約4割、議員選の約1割が無投票だった。

いずれも深刻な状況である。

地方自治は住民の暮らしに密接に関係する。女性や若者を含め、より多くの人が身近な政治に関心を持ち、担い手に名乗りを上げる。有権者も積極的に選挙権を行使する。そのことが地方政治に活力と緊張感を与えよう。

主要政党には、来夏の参院選への基盤固めの戦いとなる。

ただ、知事選で政党の影は薄い。自民、民主両党系候補の対決は北海道と大分県だけだ。各党の安易な相乗りが、有権者の選択肢を狭めたことは否めない。

自民党は、道府県議選に前回を上回る候補者を擁立し、議席増を目指している。

民主党は、岡田代表の地元の三重県知事選で候補を擁立できず、道府県議選の公認候補も現時点で前回より約4割少ない。地方組織の立て直しへの道は険しい。

産経新聞 2015年03月27日

統一地方選 「消滅」への危機打開競え

北海道や神奈川など10道県知事選の告示を皮切りに、統一地方選がスタートした。その最大の特徴は、日本が本格的な人口減少社会に突入した中で行われることだ。

ほとんどの自治体が将来的な住民減少への対応を迫られ、半数は「消滅」の危機さえ指摘されている。

地域社会を維持していくには、地元住民が自ら地域の特性や強みを考え、将来構想を描いて取り組んでいくほかない。そのリーダーを決める地方選を「わが町」の将来像を考える好機として、どれだけ生かせるかが問われている。

人口減少時代においては、政治リーダーの才覚や手腕が今まで以上に求められる。どの候補者が先見性のあるアイデアを持っているか、地方議会で建設的な議論をリードし得るのか。ふるさとの生き残りをも左右する一票を投じる先を十分、吟味したい。

安倍晋三政権は「地方創生」を掲げ、地域経済の活性化に力を傾けている。ただ、若い人口が増えていた時代とは異なり、中央政府による「お仕着せ」の政策で何とかなるわけではない。地域ごとに主産業も地理的環境も異なる。

地域の産業をどう活性化させ、暮らしやすい町づくりを進めるか。新たな特産品や伝統工芸品の開発を起爆剤とする自治体や、観光客や移住者受け入れに活路を見いだす自治体もあろう。

候補者には、目の前の政策課題ばかりにとらわれず、中長期的な地域の生き残り策を具体的に提言することを求めたい。

懸念されるのは、「地方創生」をだしに使って、聞こえのよいバラ色政策を並べ立てる候補者がいなくならないことだ。

高齢化や人口減少は、当面は避けられない。地方財政も厳しさを増す。今、論ずべきはこうした事実を踏まえ、人口増に転じるまでの間、どうやって地域を維持していくかの知恵である。

地方の生き残りには、行政サービスの思い切った合理化やコンパクトな町づくりなどが必要だ。住民にも負担や痛みを求めねばならない課題は少なくない。不人気政策から逃げたり、抽象論でお茶を濁したりせず、地に足の着いた議論を重ねることが欠かせない。

地方選が呼び水となり、有権者のみならず子供たちも「わが町」の未来を考えるようになる。そんな熱気のある舌戦を聞きたい。

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