免震ゴム不正 安全は二の次なのか

朝日新聞 2015年03月25日

免震ゴム偽装 安全軽視の姿勢改めよ

地震国に暮らす国民への背信行為である。

東洋ゴム工業(大阪市)が製造した免震装置のゴムに、国土交通大臣の認定基準に満たない性能不足の製品があった。

免震ゴムは建物の基礎などで使われ、伸縮で地震の揺れを吸収する機能をもつ。その能力が不足していたのに、製品データを偽って販売していた。

性能不足の製品が使われた建物はマンションや役所の庁舎、病院など18都府県の55棟。災害時に防災拠点となる建物も含まれており、影響は大きい。

同社はすべての建物の安全をすみやかに再確認し、改修や製品交換を急ぐべきだ。財産価値が下がるなどの理由から公表されていない共同住宅などについても、利用者に誠実に伝え、不安にこたえる責任がある。同時になぜこんなことが起きたのかを調査し、公表してほしい。

子会社で製品評価を10年以上担当していた課長代理が、国の認定基準に収まるよう試験データを改ざんしていたのが発端という。国交省は「納期に間に合わせるため、営業からのプレッシャーもあったようだ」と説明する。だとすれば製造工程はもちろん、チェック態勢のあり方まで見直す必要がある。

理解できないのは、子会社で不良品の可能性が浮上した昨年2月以後も1年間、不良製品が出荷され続けたことだ。確証を得るのに手間取ったとしても、危機感が薄すぎないか。

東洋ゴムでは07年にも建築用断熱パネルの試験データ偽装が発覚し、社長が辞任した。その際、「二度とこのようなことを起こさない」ため、品質管理を経営の中核にすると発表した。

にもかかわらず偽装を繰り返すようでは、安全を軽視する姿勢が改まっていない、といわれても仕方ない。

免震ゴムは80年代から使われるようになり、95年の阪神・淡路大震災後、急速に普及した。今は大規模なビルを中心に約3300棟で使われている。

品質保証の裏付けとなる大臣認定を得るには、メーカーが設計者や施工者と実験を重ね、国から認証を受けた評価機関にデータを提供して審査してもらう。だが審査対象は書類だけで、データが改ざんされれば不正を見抜くのは難しい。

南海トラフ地震などに備え、被害を小さくする技術は災害に強い社会を築くために欠かせない。国交省は今後、大臣認定のあり方を含めて検討するという。品質管理は国の役割も重要だが、一義的にはメーカーの責任だと肝に銘じてほしい。

毎日新聞 2015年03月18日

免震ゴム不正 安全は二の次なのか

大手タイヤメーカー、東洋ゴム工業の子会社が国の認定基準に満たない免震装置のゴム製品を製造・販売していたことが明らかになった。開発担当社員が試験データを改ざんして認定を受けた疑いがある。免震ゴムは防災拠点となる公的施設などに使われており、安全への信頼を揺るがす重大な不正と認識すべきだ。

読売新聞 2015年03月24日

免震ゴム不正 建物の信頼回復へ対応を急げ

建物の安全に対する信頼を揺るがした。その責任は重い。

大手タイヤメーカーの東洋ゴム工業が、10年余りにわたって、国の性能基準を満たしていない免震ゴムを製造・販売していた。

免震ゴムは、建物の基礎部分で地震の揺れを吸収し、緩和する。この性能を偽って出荷された製品は2052基に上り、18都府県の建物55棟に使われている。

マンションのほか、自治体庁舎や警察署、病院なども含まれる。地震発生時に対応の拠点となる重要施設だ。万一、大きく損壊した場合の影響は計り知れない。

対象の建物が安全かどうか、確認を急がねばならない。国土交通省は先週、55棟について1週間以内に調査結果を報告するよう東洋ゴムに指示している。

東洋ゴムは、性能試験の数値を改ざんして国交相の認定を受けていた。10年以上、性能試験を1人の社員が担当してきたため、誰も不正に気づかなかったという。

東洋ゴムでは2007年にも、防火用断熱材で性能偽装が発覚した。これを受け、全ての生産拠点の品質検査を一元的に実施する部署が設けられた。それが機能していなかったことになる。

社内では、担当者の交代をきっかけに、昨年2月に偽装の疑いが浮上していた。しかし、国交省への報告は1年後で、この間にも不良製品の出荷は続いた。安全を優先すべきメーカーとしての責任感は、どこにあるのか。

不正の実態と、会社の対応を徹底的に検証する。有効な再発防止策を講じる。それなくして消費者の信頼は取り戻せまい。

免震ゴムは、1基100万円程度で、建物1棟につき数十基が使われている。55棟の調査で仮に安全と判断された建物でも、性能の不足する製品が使用されている事実は変わらない。

自治体などから、調査結果にかかわらず全面交換を求める声が上がっているのは、もっともだ。

東洋ゴムは、交換に応じる方針だ。責任を持って正規品の製造を進め、追いつかない場合には他社製品で対応するなどの措置を取らねばならない。

免震ゴムの認定制度は、メーカーが性能試験を行い、民間の性能評価機関が国に代わって書面審査する仕組みだ。偽装が見過ごされたことから、太田国交相は、改善策を検討する考えを示した。

性能評価機関によるサンプル検査の実施など、偽装を防ぐ効果的な対策が求められる。

産経新聞 2015年03月22日

免震ゴム不正 命守る使命感はないのか

安全をないがしろにした、許し難い背信行為である。

東洋ゴム工業(大阪市)の子会社が製造し国の認定を受けていた免震装置のゴム製品が、性能基準を満たしていないことが明らかになった。子会社の担当者が性能試験のデータを改竄(かいざん)していた可能性が高いという。

不正に認定を受けた免震ゴムは18都府県の55棟の建物に使われている。このうち自治体や警察、消防の庁舎、病院など15棟については「公共性が高い」として国土交通省が公表した。

これらは大規模な地震が発生したときは災害対応の拠点となる施設である。同社の不正は、住民や負傷者が身を寄せる施設の安全性を揺るがしたばかりでなく、日本の耐震・免震技術全体に対する国民の信頼にも傷を付けた。

最優先すべきは、全物件の構造計算をやりなおし、建物の安全性を確認することだ。情報開示と不正の原因究明に関しては、会社側に任せてはならない。国交省が責任をもって行うべきだ。

東洋ゴム工業は平成19年にも断熱パネルの性能偽装が発覚している。自動車のタイヤを主力製品とし「足もとの安全」を支える企業でありながら、信頼を裏切る不正を繰り返した。

同社によると、免震ゴムの性能試験は平成15年から約10年間、1人の社員が担当していた。断熱パネルの偽装発覚後にチェック機能を強化していれば、不正の連鎖を止められたはずだ。

最も悪質なのは、不正を認識した後の同社の対応だ。昨年2月に担当者が交代したことから、同社は偽装の疑いがあることを把握していた。しかし、国への報告は1年後の今年2月で、その間に12棟もの建物に不正な免震ゴムを納入していた。

製品を通して社会の安全を支えユーザーの命を守る覚悟は、どこにあるのか。

10年前、元1級建築士による耐震偽装が各地で発覚する事件があった。専門性の高い試験で故意の不正が行われると、審査を厳格化しても見抜くのは難しい。企業や担当者の良心に頼るだけでは、不正の根を断つことはできない。

会社ごとのチェック機能強化とは別に、国と業界が協力し2重、3重にチェック機能が働く透明性の高い審査機関を設けることも検討すべきだろう。

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