日中韓外相会談 「歴史」乗り越え対話進めたい

朝日新聞 2015年03月23日

日中韓 首脳会談へ歩を進めよ

日中韓外相会談が3年ぶりに開かれた。一時は途絶状態にあった日本と中韓の対話が、外相レベルを第一歩として前進したことを歓迎したい。

もともとは07年から毎年開かれていた。それが、尖閣諸島の国有化問題で中国が反発して中断していた。流れを変えたのは昨秋の日中首脳会談である。

以来、少しずつ各分野での対話も動き始めた。アジアの主要3国の交流が、政治指導者の対立で滞る異常事態は、ここらで打ち止めとしてもらいたい。

今回の成果を踏まえ、3カ国首脳会談と日韓首脳会談の早期実現へとつなげ、対話ルートの完全正常化を図るべきだ。

戦後70年を迎えた今年は歴史認識問題への対処が避けられない。会談後の共同報道発表文では「歴史を直視し、未来に向かう」との文言が盛り込まれた。

歴史問題は本来、日本人自身が自国の歩みをどう考え、今後の鑑(かがみ)とするかが問われる問題である。とりわけ20世紀の侵略戦争、植民地支配という過去への反省は、決して踏み外してはならない戦後日本の礎である。

この70年間積み上げた平和主義の蓄積こそ、日本が世界に誇るべき実績であり、今後のアジアと世界の安定・繁栄への貢献の道もその延長線上にある。安倍政権は、その歴史の重みを忘れるべきではない。

一方、中韓も、3カ国で協力を進める場で過剰に歴史を持ち出すのは非生産的であり、そろそろ終止符を打つべきだ。中国の王毅(ワンイー)外相は歴史問題の発言に長時間を費やしたと伝えられるが、その執着ぶりは、関係進展のためというより、歴史を国際政治の具にしようとする不毛な意図が疑われる。

東アジアを見れば、中国自身の行動に由来する現在進行中の問題が多くある。この四半世紀、軍事費をほぼ毎年2桁台の伸び率で拡大するのはなぜか。近海での強引な振る舞いと併せ、きちんと説明することが当然の責務であり、この3カ国でも率直に論じるべきテーマだ。

日中韓の対話が滞った間に、これまで大きな存在感があった米国と、成長を続ける中国との間の溝は一層深まってきた感がある。日韓は、そのはざまで新たな秩序を探る立場にある。

安全保障だけでなく、アジア域内の貿易、インフラ開発、災害・貧困対策など、日中韓が力を合わせるべき問題は幅広い。アジアを含む地球規模の安定と発展がなければ、3カ国の未来も危うい。その共通認識のもと、首脳レベルの政治対話を速やかに再開してもらいたい。

毎日新聞 2015年03月22日

日中韓 3外相合意を歓迎する

日中韓3カ国の外相が約3年ぶりにソウルで会談し、3カ国首脳の会談を早期に実現するよう努力することで合意した。

読売新聞 2015年03月22日

日中韓外相会談 「歴史」乗り越え対話進めたい

日中韓3か国の対話と協力を重ねる中で、歴史認識の問題などで対立する日中、日韓の関係の改善に、いかにつなげていくかが問われよう。

岸田外相、中国の王毅外相、韓国の尹炳世外相がソウルで会談した。「歴史を直視し、未来に向かうとの精神」で、2国間関係の改善と3か国協力の強化を進めることで一致した。

日中韓首脳会談については「最も早期で都合のよい時期」の開催に努力することを確認した。

中国は、首脳会談の前提として、今夏に発表される戦後70年の安倍首相談話の内容を見極めたい意向とされる。だが、まずは前提条件をつけずに、大局的な観点から首脳会談を行う準備をすべきだ。

解決が困難な問題があっても、様々な会談を通じて、各国が歩み寄れる妥協点を模索するのが、本来あるべき外交の姿だろう。

王外相は会談後の記者会見で、「戦後70年が過ぎたが、歴史問題はまだ過去形ではない。現在進行形だ」と強調した。

中国は、9月3日に北京で行う「抗日戦争勝利70年」記念式典に韓国の朴槿恵大統領を招待するなど、歴史問題で韓国と「対日共闘」を目指す動きを見せている。

しかし、戦後日本は、先の大戦への反省を踏まえ、一貫して平和国家の道を歩んできた。安倍政権は、そのことを国際社会に積極的に発信し、関係国の理解を広げる努力が欠かせない。

岸田外相は日中韓外相会談で、「近接し、文化的な深いつながりを持つ3か国の交流、協力を促進することが重要だ」と指摘した。王、尹両外相も同調し、環境や防災分野などで3か国の連携を強化する方針を確認した。

中国では、微小粒子状物質(PM2・5)などの大気汚染が深刻で、その影響は国境を超えて日韓に及んでいる。日本が技術協力などを通じて、中国の大気汚染を改善すれば、各国の利益となる。

日本が長年培ってきた防災・減災に関する知見や技術は、中韓両国にも参考になろう。

様々な分野で実務的な協力を着実に進展させ、3か国の信頼醸成を図ることが重要である。

会談では、北朝鮮の核兵器開発を容認しない方針を再確認した。3か国が足並みをそろえることが、北朝鮮に一定の圧力をかける効果を持つのは間違いない。

活発化するイスラム過激派組織の国際テロについても、3か国は、具体的な封じ込め策の議論を深めることが大切だ。

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