チュニジア襲撃 「民主化モデル」を脅かすテロ

朝日新聞 2015年03月22日

チュニジア 民主化への歩み継続を

博物館は、異なる文明を結ぶ十字路である。世界中から人々が集い、交流や相互理解が生まれる。世界一といわれるモザイク画コレクションを誇るチュニスのバルドー博物館は、そのような施設の一つだ。

18日に起きたテロの舞台が、この博物館だった。日本人3人を含む20人あまりが犠牲になった。容疑者はイスラム過激派と見られている。

国外から旅行者を引き付ける博物館は、チュニジアの開放性を象徴してもいた。その存在を、自らの価値観以外認めない偏狭なテロリストらは許せなかったのではないか。観光収入に頼るチュニジア政府に打撃を与える意図もあったに違いない。

「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が起きたアラブ諸国の多くは、その後混乱や内戦に陥った。その中で唯一、チュニジアでは民主化定着の兆しが見える。このような歩み自体を、容疑者らは標的とした。

自由で開かれた社会をつくろうと奮闘するチュニジアに突きつけられた脅しは、欧米や日本を含む民主社会への挑戦に他ならない。チュニジアの政府や市民は、これに屈することなく、取り組みを継続してほしい。

武装グループの挑発に乗らず、自由な市民社会を守りつつ、かつ治安を回復させる。経験の浅いこの国にとって極めて困難な道のりだ。その試みが成功するには、欧米など国際社会の支えが欠かせない。

民主社会の結束が問われているといえる。

チュニジアでは、2010年末に民主化運動「ジャスミン革命」が起き、ベンアリ独裁政権を翌年崩壊させた。その後の「アラブの春」の先駆けとなる動きだった。

以後、野党指導者の暗殺などを乗り越えて、世俗派とイスラム勢力が協力し、新憲法を制定した。昨年末には自由選挙で大統領を選出した。報道の自由もある程度確保され、他のアラブ諸国にとって民主化のモデルとなってきた。

一方で、シリアやイラクなどで勢力を広げる過激派組織への参加者が3千人に及ぶなど、国内社会に問題も抱えている。その安定のためには、欧米諸国との連携が必要だろう。

この事件を機に、欧米がチュニジアと距離を置くようなことがあれば、テロリストの狙い通りだ。これまで以上に協力するための体制を築く必要がある。

それは、日本にとっても同様だ。不幸な事件だが、これを機に両国が結びつきを深めるよう望みたい。

毎日新聞 2015年03月20日

チュニジア乱射 「春」への凶弾を許すな

「アラブの春」の唯一の成功例といわれ、民主化が進んでいた北アフリカ・チュニジアで大規模なテロが起きた。武装集団が首都チュニスの博物館で銃を乱射しながら人質を取って立てこもり、日本人3人を含む20人余りが死亡した。無防備な観光客への無差別発砲は許されるものではなく、強い怒りを覚える。

読売新聞 2015年03月20日

チュニジア襲撃 「民主化モデル」を脅かすテロ

イスラム過激派によるテロが続く北アフリカでまた惨事が発生した。

チュニジアの首都チュニスの博物館で武装集団が銃を乱射し、日本人3人を含む外国人観光客ら約20人が死亡した。日本人3人など多数が負傷している。

罪のない人々を無差別に襲う凶行は、断じて許されない。安倍首相は、犯行を強く非難し、「国際社会と連携を深めながらテロとの戦いに全力を尽くす」と強調した。当然である。

政府は、被害者の保護や在留邦人の安全確保に努めるべきだ。

日本人が海外でテロに巻き込まれる例は、もはや珍しくない。政府は、情勢が不安定な地域に関する情報収集と、危険情報の発信を強化しなければならない。

現地の治安当局が、武装集団のチュニジア人2人を射殺し、複数の容疑者を拘束したという。事件へのイスラム過激派組織の関与が疑われている。全容解明を急いでもらいたい。

チュニジアは、中東や北アフリカの長期独裁政権を民衆が倒す民主化運動「アラブの春」の先陣を切った。23年続いたベンアリ政権が2011年の「ジャスミン革命」で崩壊すると、その波はエジプト、リビアなどに広がった。

独裁統治の緩んだ各国で政情が混乱する中、チュニジアは、世俗派とイスラム穏健派が共存する政治体制を構築し、民主化の成功モデルとして注目された。

ただ、その陰で治安が悪化し、外国の投資や観光客が落ち込み、経済は停滞していた。社会に不満を持つ貧しい若者らに過激主義が浸透し、テロの潜在的な脅威があったことは否めない。

イラクとシリアに根を張る過激派組織「イスラム国」に参加したチュニジア人戦闘員は、約3000人に達するという。出身国別で最も多く、「過激分子の輸出国」との不名誉な異名も取った。

隣国のリビアとアルジェリアでイスラム過激派組織がばっするのに対し、チュニジアでの活動は限定的と見られていた。だが、今回の事件は、その見方を覆した。

チュニジア政府は、せっかく築いた民主主義体制の基盤を揺るがせないため、治安回復と経済再建に真剣に取り組む必要がある。

事件後、セブシ大統領は、テロ掃討の強化を宣言した。過激派集団の摘発や、戦闘員の往来を阻止するための空港や国境での検問や監視の強化が急務である。

日本も、欧米諸国と連携し、チュニジア支援に力を入れたい。

産経新聞 2015年03月20日

チュニスの襲撃 決して遠い事件ではない

チュニジアの首都チュニスで18日、武装集団がバルドー博物館で銃を乱射し、多数の外国人観光客が死傷した。

軍服姿の男らは観光客に向けて自動小銃を連射した。犠牲者には複数の日本人も含まれており、安倍晋三首相は「国際社会との連携を深めながらテロとの戦いに全力を尽くす」と述べた。

20年前に起きた地下鉄サリン事件の通勤客らと同様、観光客らは、そこに居合わせただけで不幸にも無差別テロの犠牲となった。どんな主義主張があれ、恐怖と暴力によって屈服を強いるテロリズムを許すことはできない。

チュニジアのカイドセブシ大統領は、事件をイスラム過激派によるテロだと断定した。

過激組織「イスラム国」が、フリージャーナリストら日本人人質2人を殺害する映像を公開した事件も記憶に新しい。残忍な映像は音声で、「日本にとって悪夢の始まりだ」と脅していた。

チュニスの銃撃もイスラム国の事件も、遠い外国のテロと高をくくってはいけない。テロの脅威は世界中にある。2020年東京五輪を控え、日本国内がテロの標的とされる可能性も常にあると警戒を強めるべきだろう。

チュニジアは中東民主化運動の発端となった国で、「アラブの春の優等生」として、独裁体制の崩壊後は政変が起きた国の中では比較的治安も安定していた。

惨事の舞台となったバルドー博物館はローマ時代のモザイク画を多数収蔵し、「チュニジアのルーブル」と呼ばれていた。武装集団は、国の主要収入源である観光業に打撃を与えるために外国人観光客を狙ったとみられる。チュニジアの当局には、事件の背景を徹底的に洗い出してほしい。

日本が選択する道は、安倍首相が述べたように、テロと戦う国際社会とともに歩むことにある。国内外の邦人を守り、テロ事件を防ぐ要諦は情報である。このためにも、一元化された対外情報機関の創設が欠かせない。

政府は、独自の情報収集、分析能力を高めるため、対外情報機関の創設に向けた関連法案を早ければ今秋の臨時国会にも提出する見通しだとされる。

20年東京五輪を万全の態勢で迎えるために、残された時間は少ない。国や国民を守るため、テロへの備えは最優先課題だ。

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