プーチン発言 核の脅しは許されない

朝日新聞 2015年03月17日

ロシア核発言 併合1年の無謀な言動

責任ある大国の指導者の発言とは到底思えない。ロシアのプーチン大統領が、クリミア半島の併合の際、核兵器の使用準備を検討した、と明らかにした。

ロシアが半島を併合してから1年がたつ。ロシア国営テレビの質問に答え、併合への米欧による妨害を念頭に、核戦力を臨戦態勢に置く用意があったことに言及した。

そもそも現代の国際社会は、武力による紛争の解決を禁じている。とりわけ核兵器は人類の存亡にもかかわる重大な意味をもつだけに、第2次大戦後の国際社会は核の軍縮・軍備管理と不拡散に努力を注いできた。

ところがプーチン氏は自国の領土拡張のために、核の準備の可能性まで考えていたのだ。

ロシアの軍事ドクトリンも、核の使用を「核攻撃を受けた場合」や「国家存立の危機」などに限っている。冒険的な突出発言であることは明らかだ。

半島の併合についてロシアは「ロシア系住民の保護」を主な理由にした。だが、ロシア系はバルトや中央アジアなど他の旧ソ連国にも多く住む。

こんな姿勢では、そうした場所で分離・独立の問題が起きるたび、世界は核戦争を心配しなくてはならなくなる。

ウクライナは旧ソ連からの独立後、核を放棄することで米英ロから領土保全を保証された。その意味でロシアの一方的な併合がまかり通れば、核をあきらめることが不利益を生む、あしき先例となりかねない。

そのうえロシア高官は、クリミアへの核配備の可能性も示唆している。核大国が本来取り組むべき軍縮の責務をかなぐり捨て、逆に核による脅しに突き進むかのような暴言である。

核問題だけではない。プーチン氏は「住民投票の結果を待たずに併合を決めた」とも明かした。ロシアの特殊部隊を使い、親ロシア派武装勢力を後押ししたことも認めた。

その後、ロシアは同じ手法でウクライナ東部の分離・独立問題に介入し、死者6千人を超える紛争を引き起こした。

その点で鳩山由紀夫元首相が示した認識は的外れだ。住民の意思だけでロシア編入が進んだのではない。軍事力を伴った工作で併合され、既成事実化されたのだ。米欧や日本が制裁を科したのは当然である。

力による国境の変更に加え、核による挑発。プーチン氏の行動は、前時代的な大国意識の表れではないか。これ以上、国際秩序に挑むような言動は慎むべきだ。国際社会のロシアへの警戒心は極度に深まっている。

毎日新聞 2015年03月17日

プーチン発言 核の脅しは許されない

驚くべき発言である。ロシアのプーチン大統領が、1年前にウクライナ南部のクリミア半島を一方的に編入した際、米国を中心とする北大西洋条約機構(NATO)との対決に備えて核兵器の使用を準備していたことを明らかにした。

読売新聞 2015年03月18日

プーチン発言 「核準備」の恫喝は認められぬ

核兵器に言及した威嚇である。核大国の指導者として極めて不穏当、無責任と言うほかない。

昨年3月のロシアによるウクライナのクリミア半島編入の経緯を巡り、プーチン露大統領が、核戦力を臨戦態勢に置くことについて「そうする用意があった」と発言した。

一方で、クリミアの事態が核の臨戦態勢には発展しないと考えていた、とも弁明している。

それでも、発言は重大な問題を含んでおり、看過できない。

ロシアの核兵器運用の基本指針は、核の使用を、大量破壊兵器などの攻撃を受けた場合と、国家の存続が脅かされた場合に限る。クリミア編入時にロシアが存続の危機に陥ることは想定されず、発言は基本指針を軽視している。

露外務省高官は、「ロシアはクリミアに核を配備する権利を原則として持つ」とまで語った。

一連の発言には、米欧を恫喝どうかつし、その干渉を排することにより、クリミア支配の既成事実化を図る狙いがうかがえる。

世界の平和に責任を持つべき国連安全保障理事会の常任理事国としての見識が疑われよう。

米国務省報道官は、プーチン発言について「ロシア軍によるクリミア介入にとどまらず、もっと攻撃的な行動を取る用意すらあったと世界中に公言したことになる」と批判した。当然だろう。

核拡散防止条約(NPT)は、ロシアを含む加盟国に、他国の領土保全を武力で脅かさないよう求めている。今回の発言がNPTの精神にも反するのは明らかだ。

懸念されるのは、ロシアがここ数年、核戦力を増強していることだ。米露の中距離核戦力(INF)全廃条約など、冷戦後の核軍縮の流れに逆行する。

プーチン氏は今回、「ウクライナ政変まではクリミアを奪取しようと考えていなかった」と述べた。昨年2月の親露派ウクライナ政権の崩壊直後、クリミア編入に向けて動いたことを認めたものだ。

クリミア編入は「(昨年3月の)住民投票結果を尊重した」との従来の主張を覆したことになる。実際、クリミアの住民投票を実現するため、ロシア軍の特殊部隊が介入し、様々な工作活動を実施したとの指摘が出ている。

一方的な「力による現状変更」を進めるプーチン氏は、重大な不安定要因となりつつある。

国際社会は、ウクライナを財政支援しつつ、対露圧力を維持し、プーチン氏に冒険主義的な言動の自制を促さねばならない。

産経新聞 2015年03月18日

クリミア併合1年 プーチン核発言に呆れる

ロシアのプーチン大統領が国営テレビの番組で、ウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合した際、核戦力を臨戦態勢に置く用意があったことを明らかにした。

クリミア併合宣言から1年という時期に、核兵器の使用に言及すること自体、対露批判を続ける国際社会へのあからさまな威嚇、牽制(けんせい)だ。

大国の指導者からはかけ離れた到底、認められない発言であり、岸田文雄外相が「核兵器の使用はあってはならない」と強い懸念を示したのも当然である。

国際社会はプーチン発言を厳しく批判し、クリミア併合を既成事実化させないよう団結して取り組む必要がある。

プーチン氏は番組で、昨年2月にウクライナで親露派政権が崩壊した時点で、クリミア併合を決断していたことも明かした。

これまでは、翌月行われた住民投票を根拠に併合を正当化してきたが、自らそれを覆した。核使用も考慮し、領土拡張を果たそうとした本音を、隠そうともしない開き直りには呆(あき)れる。

国際社会はイランや北朝鮮の核開発抑止なども目指している。核大国として核軍縮に自ら取り組むべきロシアが、核を背景に他国への侵略・干渉を進める姿勢を示すのでは、核拡散防止条約(NPT)体制空洞化への懸念が広がることも避けられまい。

死者が推計6千人を超えたウクライナ東部でも、深刻な状況が続いている。ロシアが支援する親露派武装勢力は今年2月に成立した2度目の停戦合意発効後も戦略的要衝を制圧した。ロシアと親露派勢力は、今後も同じやり方で勢力圏拡大を図るおそれがある。

ロシアの行為は「力による現状変更」を認めないという国際秩序の根幹への挑戦にほかならないが、プーチン発言から考えても、早期の事態収拾に期待は持てない。国際社会はさらなる制裁強化なども検討すべきだ。

日本としては、ロシアが不法占拠する北方領土はクリミア併合と同根であることを認識し、その返還を訴え続ける必要がある。

ロシアは5月9日に開く対独戦勝記念70年式典について、安倍晋三首相にも出席を呼びかけているようだ。だが、ウクライナ情勢でのロシアの強権的手法や核発言は受け入れられないと、厳しく伝えることが先決である。

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