国連防災世界会議が14日から5日間の日程で仙台市で開かれる。
各国の代表が国際的な防災戦略を議論する世界会議は3回目となる。過去2回も1994年に横浜市、2005年神戸市と日本で開催された。
東日本大震災から5年目を迎えた被災地での世界会議で、日本が防災における国際連携の要として貢献していく姿勢を示したい。
期間中は東北各県の被災地で、民間団体や研究者、市民らが参加するシンポジウムなど多くの関連行事が行われる。被災地の現状を世界に発信するとともに、震災の教訓を伝え、共有する機会としなければならない。
大震災の死者、行方不明者は1万8400人を超える。東北地方の太平洋岸は津波に対する備えも住民の意識も高い地域だが、地震発生の数十分から1時間後に陸域を襲った大津波に多くの命がのみこまれた。
11日に開催された政府主催の四周年追悼式で、天皇陛下は「この度の大震災においては、私どもは災害に関し、日頃の避難訓練と津波防災教育がいかに大切かを学びました」と述べられた。
小中学生が自らの判断で避難行動を起こし、周辺住民を巻き込んで大津波から逃れた岩手県釜石市の事例は、防災教育の成功例として世界中に伝えたい。
一方、津波による人的被害が拡大した原因の一つとして、地震発生直後の予想津波高が実際よりも低い数値だったために「堤防があるから大丈夫」と判断し、避難が遅れたケースが挙げられる。
マグニチュード9の巨大地震による激しい揺れには、だれもが津波を警戒したはずだが、住民を守るために発信された情報が、結果的に避難行動を鈍らせた。
20年前に阪神・淡路大震災が起きるまで「関西では大地震は起きない」と多くの人が思い込んでいた。1983年の日本海中部地震では「日本海側では津波は起きない」という誤信が悲劇につながった事例もあった。
災害から命を守るためには、正しい知識を身につけるだけでなく、非常時の判断力と行動力を養っておくことが重要である。
災害の記憶の風化を食い止め、教訓を継承するためにも、教育の意義は大きい。国連防災世界会議を契機として「命を守る教育」を世界に広めたい。
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