北陸新幹線開業 活性化の触媒にしたい

朝日新聞 2015年03月15日

北陸新幹線 これからが肝心だ

北陸新幹線の長野―金沢間がきのう開業した。1960年代の構想浮上から半世紀を経て北陸と首都圏が一本で結ばれた。

沿線では、観光振興への期待が強い。古都・金沢を抱える石川県は首都圏からの観光客を今年、500万人に倍増させるとの目標を掲げている。

開業を見越し、太平洋側の工場を北陸に移転する企業もある。YKKグループは東京の本社機能の一部を富山県黒部市に移した。

地元の自治体や企業は、活気ある町づくりにつながるよう、この機会を生かしてほしい。

ただ、新幹線の効果には限界もある。長野まで開業した97年、長野県では観光客が使った観光消費額が年間4271億円あったのに、13年は3149億円と4分の3に減っている。

業界からは「日帰り客が増えた」と嘆く声があがる。

新幹線は、あくまで高速移動のツールだ。地域の新たな魅力の創造や持続的な産業振興へと生かすには、息の長いとりくみが肝心だ。

今回の開業で、並行するJR信越・北陸線は沿線4県の第三セクターに引き継がれた。3社が運賃を値上げし、富山―金沢間は1・25倍の1220円になった。東京が近くなっても日常の移動手段が細っては何にもならない。地域全体で三セクを支える努力が欠かせない。

金沢開業で全国の新幹線網は2600キロを超えた。64年の東海道新幹線開業時の5倍強だ。

来年3月には青森と北海道を結ぶ北海道新幹線が一部開業する。北陸新幹線も1月の政府・与党合意で、金沢―敦賀(福井県)間の開業が計画より3年早い22年度末になった。金沢―福井間は20年度に先行開業することも検討されている。ただ、列車の折り返し施設が必要で、新たに250億円かかるという。

今後は、ルートが決まっていない敦賀―大阪間をどうするかも焦点になってきそうだ。

新幹線の整備には巨額の建設費がかかる。今回の長野―金沢間は228キロで1兆7800億円を要した。その多くは国と沿線自治体の負担だ。

政治家や地元経済界は「とにかく新幹線を」と叫びがちだ。だが人口減時代に入り、投資に見合う効果が本当に得られるのか。厳しく見極めるべきだ。

国も地方も財政難は深刻で、少子高齢化に伴う社会保障費の増大ものしかかる。限られた財源をどう使うかは、国全体を見渡して考えていく必要がある。

今回の開業を、そんな将来のことを考える機会にもしたい。

毎日新聞 2015年03月13日

北陸新幹線開業 活性化の触媒にしたい

北陸新幹線があす開業し、北陸と首都圏がぐっと近づく。東京から金沢まで7都県の移動が、乗り換えありの3時間50分から、乗り換えなしの最短2時間半弱へと、大幅に短縮される。

読売新聞 2015年03月14日

北陸新幹線開業 効果持続へ地域の魅力高めよ

新幹線のメリットを生かし、地域の魅力を高めることが重要である。

JR東日本と西日本が14日、長野新幹線(東京―長野間)を金沢まで延伸し、北陸新幹線として開業する。新区間には豪雪地帯や急勾配の連続する山間部もある。何よりも安全運行を求めたい。

東京―金沢間は、最速2時間半で結ばれる。今より1時間以上も短縮され、観光やビジネスでの往来が活発になると期待される。

金沢や富山などでは、各所でライトアップを予定するなど、歓迎ムードが高まっている。

新幹線を経済活性化の起爆剤にしたいとする声も強い。金沢駅の周辺などでは、オフィスビルなどの建設が相次いでいる。

地震・津波といった災害リスクの分散などのため、オフィスや工場を北陸に移す動きもある。ファスナー大手のYKKグループは、本社機能の一部を東京から富山県黒部市へ移転する計画だ。

肝心なのは、「新幹線効果」を一過性に終わらせないことだ。

他の新幹線沿線では、人や企業が首都圏や沿線の主要都市に吸い込まれるように移る「ストロー現象」が起きている。北陸の都市間格差が拡大する懸念もある。しっかり対策を取らねばならない。

沿線の自治体や企業が連携し、新幹線を継続的に有効活用していく戦略を練る必要がある。

名所旧跡や伝統工芸、雄大な自然など、北陸の豊富な観光資源を生かし、何度も訪れてくれるリピーターを増やすことが大事だ。

地元自治体が協力し、県境を越えた広域観光ルートなどを開発してはどうか。海外への情報発信を充実させ、外国人客の取り込みにも力を注ぎたい。

新幹線の開業で一部の特急が廃止され、不便になる地域もある。北陸線など長野―金沢間の並行在来線は、JRから第3セクター4社に分割・移管される。運賃値上げで地域住民の負担は増す。

追加の財政支出を抑えながら、大切な「地域の足」をどう存続していくか。過疎化を食い止めるためにも、知恵の絞り所である。

北陸新幹線は、2022年度に福井県の敦賀へ延伸する計画だ。与党内には、途中の福井までの開業を2年程度前倒しするよう求める声がある。その場合、福井に車両基地を設けることになる。

敦賀延伸後は使わなくなる恐れのある施設を作ってまで、開業を前倒しするのか。

厳しい財政事情を踏まえ、費用対効果を慎重に検討すべきだ。

産経新聞 2015年03月14日

北陸新幹線開業 地域を元気にする契機に

東京と金沢を最速2時間半で結ぶ北陸新幹線が開業する。現在は鉄道で約4時間かかっているのが大幅に短縮され、観光やビジネスでの人の流れが大きく変わる。

これを地域経済の活性化につなげる契機としてほしい。そのためには地元自治体や民間の創意工夫が一段と問われる。

一方で、与党が進める金沢から先への建設計画前倒しには懸念もある。北陸新幹線に対する地元の期待は大きいが、費用対効果を精査しなければ国民の理解は得られないことを忘れてはなるまい。

片道3時間を切ると日帰り圏になるとされる。東京から金沢までの日帰りが可能となり、観光やビジネスを通じ人の往来が活発化する。富山、石川両県を訪れる人が増え、経済波及効果は大きい。

東京-金沢の輸送シェアは、航空機6割、鉄道4割だ。JR東日本では「8割まで新幹線のシェアを高めたい」と意欲的だ。これに対抗し、航空会社も羽田-小松(石川県)間の予約割引などを拡充している。両者の競い合いで旅客サービスを高めてほしい。

新幹線の開業に合わせ、新聞やテレビでは北陸の特産物や観光地などを紹介する記事や番組が増えている。JR東と西日本が運行を担当するが、関心の高まりを受けて予約状況も好調だという。

今回の新幹線開業を一過性のブームに終わらせない工夫も不可欠だ。金沢までの途中駅となる富山などには人の流出に懸念もある。北陸は有数の観光地を抱えるが、新たな観光客や企業を呼び込む取り組みが求められる。

北陸新幹線の金沢-敦賀延伸をめぐっては、与党が東京五輪の開催に合わせて福井までの先行開業を検討している。だが、与党は金沢-敦賀の開業時期を今年1月に3年前倒しすることを決めたばかりだ。さらなる前倒しには建設費用の増加などで課題も多い。

とくに福井まで先行開業すれば、福井駅周辺に臨時車両基地を整備する必要がある。五輪まで時間がなく、用地取得を懸念する声もある。厳しい財政を考慮して慎重に判断しなければならない。

北陸は「関西の奥座敷」と呼ばれ、関西圏と深く結びついてきた。だが、東京と新幹線で直結することで、今後は関西から関東に拠点を移す北陸企業も出てきそうだ。関西は北陸との関係を維持する知恵を凝らしてほしい。

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