新幹線のメリットを生かし、地域の魅力を高めることが重要である。
JR東日本と西日本が14日、長野新幹線(東京―長野間)を金沢まで延伸し、北陸新幹線として開業する。新区間には豪雪地帯や急勾配の連続する山間部もある。何よりも安全運行を求めたい。
東京―金沢間は、最速2時間半で結ばれる。今より1時間以上も短縮され、観光やビジネスでの往来が活発になると期待される。
金沢や富山などでは、各所でライトアップを予定するなど、歓迎ムードが高まっている。
新幹線を経済活性化の起爆剤にしたいとする声も強い。金沢駅の周辺などでは、オフィスビルなどの建設が相次いでいる。
地震・津波といった災害リスクの分散などのため、オフィスや工場を北陸に移す動きもある。ファスナー大手のYKKグループは、本社機能の一部を東京から富山県黒部市へ移転する計画だ。
肝心なのは、「新幹線効果」を一過性に終わらせないことだ。
他の新幹線沿線では、人や企業が首都圏や沿線の主要都市に吸い込まれるように移る「ストロー現象」が起きている。北陸の都市間格差が拡大する懸念もある。しっかり対策を取らねばならない。
沿線の自治体や企業が連携し、新幹線を継続的に有効活用していく戦略を練る必要がある。
名所旧跡や伝統工芸、雄大な自然など、北陸の豊富な観光資源を生かし、何度も訪れてくれるリピーターを増やすことが大事だ。
地元自治体が協力し、県境を越えた広域観光ルートなどを開発してはどうか。海外への情報発信を充実させ、外国人客の取り込みにも力を注ぎたい。
新幹線の開業で一部の特急が廃止され、不便になる地域もある。北陸線など長野―金沢間の並行在来線は、JRから第3セクター4社に分割・移管される。運賃値上げで地域住民の負担は増す。
追加の財政支出を抑えながら、大切な「地域の足」をどう存続していくか。過疎化を食い止めるためにも、知恵の絞り所である。
北陸新幹線は、2022年度に福井県の敦賀へ延伸する計画だ。与党内には、途中の福井までの開業を2年程度前倒しするよう求める声がある。その場合、福井に車両基地を設けることになる。
敦賀延伸後は使わなくなる恐れのある施設を作ってまで、開業を前倒しするのか。
厳しい財政事情を踏まえ、費用対効果を慎重に検討すべきだ。
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